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初めてブログを開いたのが、昨年の12月20日だった。出来上がった自分のお話を誰かに読んでもらいたくて思いついた。 それから半年とちょっとたつ。お話をアップした後も、思いつくままに文章を書いていた。途中コロナ禍で書くのをやめていた時期もあったが、…
まずはここに来てくれた人達に感謝を。どうもありがとうございました。もちろん誰かに読んでもらいたくて書いたものなので、アクセス数という顔は見えないけれど、数字という結果に一喜一憂しながら、記事をアップしてきました。 事の発端は、前任校で同僚だ…
私は、歩いていた。ただひたすら歩くために歩いていた。歩くと何かが解決するとでも思い込んでいるかのように。私が歩き始めたのは11月始めの頃だった。それ以来晴れの日も曇りの日も雨の日も天候に関係なく、1周6.4㎞の小さな湖を約1時間かけて歩くように…
2回目の授業は昨日より熱の入ったものだった。私は少し安心した。そしてその時すでに私は覚悟を決めていた。 3回目。神様との約束を破って人間界に行った日。この日の夕方から次の日の朝までのことは決して忘れない。 私はやりたいこと、やるべきことをす…
会えなくなって3ヶ月。私は仕事の合間をぬってタナカさんの様子を窺っていた。日に日に元気がなくなっていくタナカさんを見るのは辛かった。こちらから思念を送っても、届いたという感触がない。こうなったら私としてはどうしようもできない。でも1つだけ…
再会してからずっと気にかかっていたことがあった私。でもあなたは鈍感だから気づかない。遠回しに遠回しに聞いていたら、あなたは、「ああ、セックスしていないってこと?」って一刀両断にバッサリ切るから超どもってしまった。「だって俺、こんなに太って…
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」か。昔読んだなあ。タナカさんは、私が来るまでよく本を読んでいる。年末に思った「鈍い男!」だけど、考えてみれば私は「不器用な妖精」。鈍い男と不器用な妖精が語り合う。最悪だ。でも、タナカさんなりに…
今日、部屋に入ったら、ちょうどいい暗さだった。タナカさん、本当は明るいところが好きなのに。そういう心配りにクラッとする。この前からいろいろなことを相談しているけれど、今日も相談してしまった。「俺の場合は・・・」って今日も真摯に考え考え答え…
ふぅ。やっと『俺』が私に会いに来てくれた。1年ぶりかしらね。あなたに招かれたのは。 『俺』と初めて会ったのは、夏の終わりだった。名前はタナカさん。小学校の先生をしている。あの時は痩せこけた身体をしていたな。それに妙に切迫感があった。でも不思…
朝の5時30分に私は目覚めた。2週間ぶりに途中覚醒のない眠りだった。横にチアイはいない。もう帰ったのだろうか。それにしてもなぜ、チアイは人間の姿になって、昨夜のようなことをしたのだろうか。私への憐れみか。それとも慰めか。どちらにしてもそこ…
あれから2週間が過ぎた。私はまた酒を飲むようになっていた。心のどこかでもう一度チアイに会いたい、と思いながら。 17時30分。さあ、宴会の時間だ。 コン、コン、コン、とノックの音が三回聞こえた。チアイ?いや、この音はチアイじゃない。もっと現…
「その年で教頭先生は異動した。4年目は、自分が頑張るしかないんだと思いながら仕事をしてきたよ。あんな体験をさせてくれた教頭先生がいなくなったからといって、今までの俺に戻るなんて考えられなかった。でも1学期でついにガソリン切れの車は止まって…
「3年目。6年、学校研究、児童会。昨年度と同じだがクラスが違う。ボスは以前健在だったが、自閉スペクトラム症の子は、昨年度から特別支援教室に在籍していた。俺の、俺達職員のしたことはまず『ほめシャワー』だ。子ども達のどんな小さな事でもとにかく…
「2年目は、6年生を担任をしろと言われた。そして研究主任、児童会の担当もしろと言われたよ。どういうことか分かる?一言で言うと学校全体を動かせってことだ。児童会の仕事は大体分かるよね。研究主任は・・・、学校の校務分掌の中では職員は大きく分け…
「昨日は、俺がいろいろな欺瞞を感じながらも、周りから認められたいって思っていたところまで話したんだね。」「ええ。それに気づいてあなたは自己嫌悪に陥っていた。」「そう。だけどね、4校目に赴任した学校で俺に大きな転機が訪れたんだ。その話をする…
「そうそう。こんな感じ。」 「そうなったらそこで考えればいいと思ったんだ。でもスズカが結局同じ形になるって言ったからバラバラに囲む子はいなかったな。なるべく規則性のある囲み方をしてほしかったのは事実だよ。だから最初に簡単なドット図を提示して…
「まず本時のねらいのこと。『俺』は、同じまとまりを使って考えること、そしてそれを1つの式に表すことの2つをねらいとしていたわね。」「うん。」「本来ならねらいは1つが妥当だと思う。本時はとにかくまとまりを意識して計算することが一番のねらいだ…
「シンヤさんへの支援は、私が見たところ2回あったわ。式を解読する時、『自分が考えた式でやって』って言ったでしょ。あれでシンヤさんは安心して取り組むことができたと思う。それにリレー方式で3こを囲んだ時の順番もあなたはシンヤさんのことを考えて…
「お疲れ様。」「うん。ありがとう。大体こんな感じでいつも授業をしてるよ。でも今日は充実感があったな。何言われてもいいや。どんどんダメ出ししてくれよ。」 「分かったわ。まず、一言で言うと子ども達が安心して学習に取り組めた授業だったと思うわ。」…
「じゃあ先生が考えた式を今から書くね。」「7×7―6×4」「うん?何これ?」とスズカが言った。「スズカさんの気持ちが分かる人。」と聞くと、全員が手を挙げた。シンヤさんからどうぞと言うと、「ひき算があります。」「7のまとまりなんてありません。」…
「じゃあ、これで2つ解読したね。続けて下さい。」と言うと、レンが立って、「3×7+4=25の説明をします。」と言った。「こういう囲み方をすると、3このまとまりが7つできて、外側に、1こずつあまるから3×7+4になります。」と言い、マジックで…
「最初の問題で、どうすると分かりやすいって言っていたっけ?マナさん。」と聞くと、マナは固まってしまった。すると、ハジメが、「マナ、さっき俺が言ったこと言えばいいよ。」と助け船を出した。その励ましを受けてマナは、「囲む、だと思います。」と言…
「さあ、みんなどうしたい?」「先生、これがかいてあるプリントが欲しいです。」「分かったよ。」と言って、ドット図が書いてある紙を1枚ずつ配った。「何分ほしい?」と聞くと、5分、10分などがでたので、「自分達で決めなさい。30秒で。」と言った…
「じゃあ、次の問題にいくよ。これは何個?」また同じようにパッと次の図形を見せ、ゆっくり隠した。 「えー、もう1回見せて!」とみんなが口々に言うので、もう1度ゆっくり見せた。「これ、1,2,3,4・・・って数える?」「ううん。」「さっきの考え…
次の日の17時30分。コン、コン、コン、とノックの音が3回聞こえた。昨日と同じ様に現実感のない音だ。 玄関へ向かい、ドアを開けた。チアイがいた。昨日のように私の顔の高さでふわふわ浮かんでいる。今日もOLスタイルだ。「こんにちは。」「こんにち…
「ミチロウとトモフスキーも聴きたいわ。」チアイならきっとそう言ってくれるだろうなと思っていたから、私はさっきから喋りながら何をかけようか考えていた。そしてそれは考えるまでもないことでもあった。遠藤ミチロウの「天国の扉」「音泉ファック」、ト…
「うん。その頃はまだ元気だったから。また今度話すよ。」「それからもう一人のトモフスキーだけど、この人にも大きな影響を受けてるよ。」 「『後ろ向きでOK』っていう曲があるんだ。みんなが俺にもっと前向きに考えようよって言うけど、あなたが言う前向…
チアイは、とてもゆっくり、私の書いた文章を読んでくれている。ふわふわ宙を舞いながら。その間に俺は、ジャスミンティーを入れた。ゆっくり飲みながらチアイが読み終えるのを待った。最後のページを読み終えると、チアイはテーブルに着地した。そしてにっ…
「仕事に対する考え方の上であなたは孤立していたのね。そして周りの先生達に欺瞞を感じながら仕事をしていた。当時のあなたはどんな授業をしていたの?」 「まだまだ力不足でろくな授業はしてこなかったよ。研究授業の後の授業整理会では、いつも他の先生に…
「学校にはそんなことがいっぱいあった。もう一つ例を挙げると、学級会でする多数決だ。ろくに話し合いもしないで、すぐ多数決を採る。結局声の大きい子の望んだものに決まるんだ。もしその子の意に沿わないものに決まったら、必ずごねてもう1回多数決をす…