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初めてブログを開いたのが、昨年の12月20日だった。出来上がった自分のお話を誰かに読んでもらいたくて思いついた。 それから半年とちょっとたつ。お話をアップした後も、思いつくままに文章を書いていた。途中コロナ禍で書くのをやめていた時期もあったが、…
まずはここに来てくれた人達に感謝を。どうもありがとうございました。もちろん誰かに読んでもらいたくて書いたものなので、アクセス数という顔は見えないけれど、数字という結果に一喜一憂しながら、記事をアップしてきました。 事の発端は、前任校で同僚だ…
私は、歩いていた。ただひたすら歩くために歩いていた。歩くと何かが解決するとでも思い込んでいるかのように。私が歩き始めたのは11月始めの頃だった。それ以来晴れの日も曇りの日も雨の日も天候に関係なく、1周6.4㎞の小さな湖を約1時間かけて歩くように…
「その年で教頭先生は異動した。4年目は、自分が頑張るしかないんだと思いながら仕事をしてきたよ。あんな体験をさせてくれた教頭先生がいなくなったからといって、今までの俺に戻るなんて考えられなかった。でも1学期でついにガソリン切れの車は止まって…
「3年目。6年、学校研究、児童会。昨年度と同じだがクラスが違う。ボスは以前健在だったが、自閉スペクトラム症の子は、昨年度から特別支援教室に在籍していた。俺の、俺達職員のしたことはまず『ほめシャワー』だ。子ども達のどんな小さな事でもとにかく…
「2年目は、6年生を担任をしろと言われた。そして研究主任、児童会の担当もしろと言われたよ。どういうことか分かる?一言で言うと学校全体を動かせってことだ。児童会の仕事は大体分かるよね。研究主任は・・・、学校の校務分掌の中では職員は大きく分け…
「昨日は、俺がいろいろな欺瞞を感じながらも、周りから認められたいって思っていたところまで話したんだね。」「ええ。それに気づいてあなたは自己嫌悪に陥っていた。」「そう。だけどね、4校目に赴任した学校で俺に大きな転機が訪れたんだ。その話をする…
「そうそう。こんな感じ。」 「そうなったらそこで考えればいいと思ったんだ。でもスズカが結局同じ形になるって言ったからバラバラに囲む子はいなかったな。なるべく規則性のある囲み方をしてほしかったのは事実だよ。だから最初に簡単なドット図を提示して…
「まず本時のねらいのこと。『俺』は、同じまとまりを使って考えること、そしてそれを1つの式に表すことの2つをねらいとしていたわね。」「うん。」「本来ならねらいは1つが妥当だと思う。本時はとにかくまとまりを意識して計算することが一番のねらいだ…
「シンヤさんへの支援は、私が見たところ2回あったわ。式を解読する時、『自分が考えた式でやって』って言ったでしょ。あれでシンヤさんは安心して取り組むことができたと思う。それにリレー方式で3こを囲んだ時の順番もあなたはシンヤさんのことを考えて…
「お疲れ様。」「うん。ありがとう。大体こんな感じでいつも授業をしてるよ。でも今日は充実感があったな。何言われてもいいや。どんどんダメ出ししてくれよ。」 「分かったわ。まず、一言で言うと子ども達が安心して学習に取り組めた授業だったと思うわ。」…
「じゃあ先生が考えた式を今から書くね。」「7×7―6×4」「うん?何これ?」とスズカが言った。「スズカさんの気持ちが分かる人。」と聞くと、全員が手を挙げた。シンヤさんからどうぞと言うと、「ひき算があります。」「7のまとまりなんてありません。」…
「じゃあ、これで2つ解読したね。続けて下さい。」と言うと、レンが立って、「3×7+4=25の説明をします。」と言った。「こういう囲み方をすると、3このまとまりが7つできて、外側に、1こずつあまるから3×7+4になります。」と言い、マジックで…
「最初の問題で、どうすると分かりやすいって言っていたっけ?マナさん。」と聞くと、マナは固まってしまった。すると、ハジメが、「マナ、さっき俺が言ったこと言えばいいよ。」と助け船を出した。その励ましを受けてマナは、「囲む、だと思います。」と言…
「さあ、みんなどうしたい?」「先生、これがかいてあるプリントが欲しいです。」「分かったよ。」と言って、ドット図が書いてある紙を1枚ずつ配った。「何分ほしい?」と聞くと、5分、10分などがでたので、「自分達で決めなさい。30秒で。」と言った…
「じゃあ、次の問題にいくよ。これは何個?」また同じようにパッと次の図形を見せ、ゆっくり隠した。 「えー、もう1回見せて!」とみんなが口々に言うので、もう1度ゆっくり見せた。「これ、1,2,3,4・・・って数える?」「ううん。」「さっきの考え…
次の日の17時30分。コン、コン、コン、とノックの音が3回聞こえた。昨日と同じ様に現実感のない音だ。 玄関へ向かい、ドアを開けた。チアイがいた。昨日のように私の顔の高さでふわふわ浮かんでいる。今日もOLスタイルだ。「こんにちは。」「こんにち…
「ミチロウとトモフスキーも聴きたいわ。」チアイならきっとそう言ってくれるだろうなと思っていたから、私はさっきから喋りながら何をかけようか考えていた。そしてそれは考えるまでもないことでもあった。遠藤ミチロウの「天国の扉」「音泉ファック」、ト…
「うん。その頃はまだ元気だったから。また今度話すよ。」「それからもう一人のトモフスキーだけど、この人にも大きな影響を受けてるよ。」 「『後ろ向きでOK』っていう曲があるんだ。みんなが俺にもっと前向きに考えようよって言うけど、あなたが言う前向…
チアイは、とてもゆっくり、私の書いた文章を読んでくれている。ふわふわ宙を舞いながら。その間に俺は、ジャスミンティーを入れた。ゆっくり飲みながらチアイが読み終えるのを待った。最後のページを読み終えると、チアイはテーブルに着地した。そしてにっ…
「仕事に対する考え方の上であなたは孤立していたのね。そして周りの先生達に欺瞞を感じながら仕事をしていた。当時のあなたはどんな授業をしていたの?」 「まだまだ力不足でろくな授業はしてこなかったよ。研究授業の後の授業整理会では、いつも他の先生に…
「学校にはそんなことがいっぱいあった。もう一つ例を挙げると、学級会でする多数決だ。ろくに話し合いもしないで、すぐ多数決を採る。結局声の大きい子の望んだものに決まるんだ。もしその子の意に沿わないものに決まったら、必ずごねてもう1回多数決をす…
「じゃあチアイ、質問があったら、口をはさんでもいいからね。喋ってみるよ。」チアイは黙って私の目を見て頷いた。 「まず、教員になる前の話から始めるね。俺は、ロックミュージックと本とプロレス・格闘技観戦から物の見方や考え方を学んできた。具体的に…
「あなたが授業で気をつけていることって何?」 「まず声だな。声質というかトーンというか。それと話す時の間。俺は、声と間で子ども達を制圧しているんだ。」「制圧。」「うん。制圧って言うと、何だか威圧的に聞こえるけれど、この人の言うことは聞かなけ…
「だから子ども達の間に何の関係もない状態で、授業なんてできないな、俺には。すごい先生はよく、地方へ行って初めて会う子ども達と授業するけど、あんな事はできない。そういう先生はコミュニケーション能力が高いから、あっという間に子どもとの関係性を…
「それにしても何か一日目ってとても大事な日みたいね。そして二日目は『授業開き』なのね。ねぇ、さっきの授業開きで指を組んだりボールを投げたりしたのもあなたのアイディアなの?」 「いや、違うよ。ボールのやりとりを通してどんな授業を目指すのかを子…
「お疲れ様。」チアイが私に向かって話しかけた。私はテーブルに肘をついて椅子に座り、チアイはテーブルの上に立った。ちょうど目が合う高さだ。横にちょこんと靴がおいてある。靴の下にはちゃんと小さなタオルが敷かれている。 「うん、疲れたよ。けど楽し…
私は、少し間を置いて言った。「それは『聞く』ということです。だって、『合う』ためには、そして2つ目の図を目指すなら話を聞かなきゃだめでしょ?」 私は黒板に「聞く」とゆっくり書いた。「聞く力を鍛えれば、どんどんみんなと先生が目指す授業に近づく…
今黒板には、「自己決定」「合う」「勉強」「創る」の4つの言葉が書かれている。「これで4つの言葉が出てきたね。もう2つ言葉を書くぞ。まず問題です。先生は最初みんなにある魚の名前のついた言葉を言いました。それは何でしょう。」 子ども達はぽかんと…
私は、黒板に「創る」と書いた。「これは、『つくる』と読みます。先生は、授業は『創る』ものだと思っています。「つくる」って他にも漢字があるよね。この『創る』は、どういう意味を持っていると思う?分からない人はすぐ漢字辞典を出す!」みんなは急い…