hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

400ーチアイとの会話Ⅱ―最後

「ミチロウとトモフスキーも聴きたいわ。」
チアイならきっとそう言ってくれるだろうなと思っていたから、私はさっきから喋りながら何をかけようか考えていた。そしてそれは考えるまでもないことでもあった。遠藤ミチロウの「天国の扉」「音泉ファック」、トモフスキーの「後ろ向きでOK」「無計画とゆう名の壮大な計画」を選び、聴いてもらった。


「ミチロウの声ってすごい。確かにハスキーっていう表現じゃ足りないほどの声ね。『天国の扉』のイントロの叫び声みたいなのも今まで聞いたことない声だわ。これこそあなたの言う肉体性なのね。」
「うん、俺は、勝手に怪鳥音って読んでいるけどね。息を吸ってあの声を出しているんだ。」
トモフスキーの歌詞には考えさせられるわ。『無計画という名の壮大な計画の』の最初の方、聴いている人に未来が『不安か?不安か?』と煽っておいてから『心配するなー俺も不安だー』ってところ、最高ね。」


チアイも気に入ってくれたみたいだ。よかった。
「もう一つ言っていいかな。声で言うと世界で一番凄い声の持ち主は、ドアーズのジム・モリソンだと思っている。」
と言って、Break on through (to the other side) をかけた。
「悪魔的な声ね。」
「そう。妖しく民衆を扇動する声だよ。高校2年の時にこの声にやられたんだ。」
こういうことを分かち合える人なんて今までいなかった。
「こういうことを分かち合える人なんて今までいなかったよ。」
「仕事のことでも音楽のことでもあなたと考えを分かち合える人がいなかったのね。」
「そう。音楽についての話が出来る人は一人もいなかったな。」


もしかして、チアイの言う俺の悲しさってこれなのかな。孤独だったってことが。
「今日はもう帰るわ。」
突然チアイが言った。
「うん。今日はありがとう。」
私は、今の方が現実感を持ち始めていたので、何だか寂しかった。
「明日の授業、楽しみにしてるね。」
「了解。」
私はチアイの真似をして返事をし、ドアを開けてやった。
私は何だか酒も飲む気にもなれずに、さっきのことを思い返していた。そして眠剤を飲んでぼーっとしているうちにテーブルに突っ伏して寝落ちしていた。