hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

400 授業Ⅰ-⑤

私は、黒板に「創る」と書いた。
「これは、『つくる』と読みます。先生は、授業は『創る』ものだと思っています。「つくる」って他にも漢字があるよね。この『創る』は、どういう意味を持っていると思う?分からない人はすぐ漢字辞典を出す!」
みんなは急いで漢字辞典を開いて調べ始めた。
しばらくしてタケルが
「あった!」
と言った。
続けて他の子ども達も見つけていった。シンヤには『創』を見つけられるように少し支援をした。


「①に書いてあることを読んでごらん。せーの。」
「傷をつける。」
みんな何となく自信がなさそうな読み方だ。
「ちょっと待って。みんなは学校に何しに来てるの?」
「勉強です。」
と口々に答えたので、一人一人に改めて確認した。
「そうだよね。」
私は黒板に「勉強」と書いた。
「この漢字の中には『強い』という言葉が入っています。でも今の君達の声は何?あれは勉強しに来ている人の声ですか。あれじゃあ『強い』じゃなくて『弱い』だ。つまり『勉弱』だよ。もう1回。勉強しに来ていることを忘れないで。さんはい。」
「傷をつける。」


「そう。みんな立派な声だったぞ。」
「さあ、ここから考えるところだ。『創る』って『傷をつける』っていう意味なんだって。変な感じしないか。」
「木か何かを使って・・・」
とタケルが座ったまま喋ったので私は、
「タケルさん、座ったままだったらただの独り言になっちゃうぞ。」
と言うと慌ててタケルが手を挙げた。
他の子も手を挙げた。
「じゃあ、タケルさんから。続けて言ってみて。先生が『続けて』と言った時は、今頭の中にある言葉をそのまま言えばいいからね。タケルさん、どうぞ。」
「僕は、『創る』って例えば木と木を組み合わせて椅子にする、とかそんな風に思っていました。」
「『例えば』っていう言い方分かりやすかったぞ。はい続けて。」
スズカが立った。
「私は、いろいろな材料を使って料理を『つくる』ことだと思います。」
次にハジメが、
「船を『つくる』に使う漢字だと思います。」
最後にレンが、
「本を『つくる』だと思います。」
「なるほど。今のはみんなが考える『つくる』を言ってくれたんだね。でも『傷をつける。』っていうのとはちょっと違う感じがしないか。」
子ども達は考え込んでいる。
「マナさん、なるほど、って思った意見はありますか。」
と私が聞くと、マナは、えっ、という顔をしてから考えて
「レンさんの意見がなるほどと思いました。」
と答えた。こうやって発言しない子が「お客さん」にならないようにするのが私のやり方だ。それにしてもレンの意見か。いいとこついてるぞ、マナ。
「マナさん、なぜ、レンさんの意見になるほどと思ったの。」
「うーん。何となく。」
「みんなはどう思う?レンさんの意見ってなるほどなー、って思うかな。」
すぐにタケルが、
「みんなの意見と同じだと思います。椅子とか料理とか船と同じで、何か材料になるものを使って作るからです。本は紙を材料にしています。」

と言った。
「タケルさんはさっきから発言の仕方が上手いね。~からです。って言うと分かりやすいよな。」
「シンヤさん、タケルさんは本を何を材料にしているって言った?」
自信ありげにシンヤは、
「紙です、」
と答えた。
「よく聞いていたね。いい耳だ。」
私は何とかシンヤを授業に巻き込もうとしていた。スズカが手を挙げた。


「先生、でも本って最初どんな本にするかアイディアがいるんじゃないかなあ。」
「なるほど。面白いな。」
「先生にも言わせてね。先生が『傷をつける』という言葉で連想したのは、版画です。何も書いてない1枚の板に彫刻刀で彫っていく。つまり傷をつけることで一つの作品にするというのを思い浮かべました。」
「②もあるね。読んでみようか。さんはい。」
「はじめ。はじめてつくる。」
「そうだね。実はみんなの発言の中に『創』の漢字を使うのがあるんだ。それは、・・・」
「本!」
とスズカが言った。
「そう。本は、何もないところから新しくこしらえるでしょ。椅子なら木と釘があれば何とか作れるでしょ。本は紙があっても中身がないと創れない。さっきスズカさんが言ったように、本を創る時は、アイディアを出すところから始めるよね。だからこの漢字を使います。スズカさんが言っていたことは正解だったんだ。」
「椅子と料理は『作る』、船は『造る』を使います。なぜかな?って思った人は、今日自分で調べるといいよ。」
「そこで、授業だ。先生は授業は『創る』ものだと思っているってさっき言ったよね。どういうことだと思う?1つ目と2つ目の図を見ながら考えてごらん。」


みんな難しい顔をしている。そうだよな。難しいよな。
「さっき、1つ目も2つ目も大事だとレンさんは言っていたし、それにはみんなも賛成していた。先生も賛成だ。でも『創る』ってなった場合どちらがより『創る』ことになるかというと、2つ目の方だと先生は思うんだ。だって、みんなはまだこのクラスになってまだ30分だ。何の人間関係もない。人間関係って言うのは授業に関係したことで言うと例えば、友だちに声をかけるとか意見を言い合うっていうことだよ。何もないところから『はじめて』つくるもの、それが授業だと先生は思っています。だけど、さっきのボールを使った勉強で、ちょびっとだけ人間関係が生まれた。つまり、『自己決定』と『合う』が生まれたんだ。それをさらに鍛えていくことが授業を『創る』ことだと先生は思っています。だから1つ目も2つ目も大事だけど、2つ目の方を意識して授業をしたいなって先生は思っています。」