hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

400-授業Ⅰ-①

「それじゃあ、先生と同じ『タ』のつくタケルさんに号令を頼もうかな。」
「えー、面倒くさいなぁ。」
とタケルが言ったので、
「これは、ここで1回しかしない授業です。君達とは1回しか授業はしない。先生は面倒くさい、って思ってはしない。もう2度と君達とは会えないからね。だからタケルさんにも面倒くさいって言ってもらいたくないな。」
と言うと、タケルはしゃあないか、といった表情で、しかししっかりとした口調で、
「起立、礼、着席。」と言った。
なんだか、授業をするスイッチが入ったぞ。やるか。やるとしたら、「授業開き」だな。最近の私の得意技だ。


「それではみんなが4年生になった時の最初の授業をします。まず一つ実験をしましょう。先生の真似をしてごらん。」
私は、両方の手の指を組んだ。そして子ども達と同じ方に向き、
「先生は左手の親指が上になります。先生と同じになった人。」
と聞くとスズカ、シンヤ、レン、マナが手を挙げた。
「先生、僕は先生と逆だよ。」
とタケルとハジメが言った。
「別にどちらが正しいっていうのはないんだよ。じゃあ、今度は今のと逆の組み方をしてごらん。」
と言って実際に見せた。
最初にスズカが、
「なんか変な感じ。」
と言うと、タケルが、
「気持ち悪い。」
と言った。
「変な感じ、気持ち悪い。確かにそうだよね。でもこっちの方が普通に感じる人もいるんだ。タケルさんにとって気持ち悪くてもスズカさんやシンヤさん、レンさん、マナさんにとっては普通なんだ。人間ってこんな小さな動作でも人によって違うんだよ。もう一つやってみようか。もう1回、先生の真似をしてごらん。」


私は、腕を組んだ。子ども達と同じ方に向いて言った。
「先生は右手が上になります。」
もうそれぞれの子がいろいろなことを喋っている。
「さっきは、左が上だったのに、今度は右が上だ。」
「私はどっちも同じだった。」
「はいっ、先生の方を見て。うん、早いぞ。みんなの目の力を感じるな。みんなが先生の話を聞こうとしている証拠だね。」

「この実験で分かることは、人にはいろいろな感じ方があるっていうことなんだ。実は勉強も同じです。人によっていろいろな分かり方があるんだ。今みたいに先生が喋っている方が勉強の中身が分かりやすい人や黒板に書いてある字を見る方が分かりやすい人、とかね。漢字の勉強もそうだ。漢字を筆順で覚える方が覚えやすい人もいるし、漢字の形を見て覚える方が覚えやすい人もいる。そんな風にいろいろな分かり方をする人達が一緒に勉強するのが授業なんだ。まずこれをよく覚えておいてほしいな。」

 

「次は、ボールを使って勉強するよ。」