400ー授業Ⅱ-最後

「じゃあ先生が考えた式を今から書くね。」
「7×7―6×4」
「うん?何これ?」
とスズカが言った。
「スズカさんの気持ちが分かる人。」
と聞くと、全員が手を挙げた。シンヤさんからどうぞと言うと、
「ひき算があります。」
「7のまとまりなんてありません。」
「6のまとまりもありません。」
「7×7=49だから、25より大きくなってしまうからおかしい。」
と4人が続けて発言した。私は、
「発言が続いたね。これも授業を『創る』だよ。でも、答えは25で合ってるよ。」
「それはそうだけど・・・」
とスズカ。


「先生、もう1回話し合いたいです。」
「どうぞ。ただし、今度の時間は先生に決めさせてね。3分。よーい始め。」
みんな急いで輪になって図を見ながらああだこうだ話しているが、なかなか解読できないようだ。
「はい、やめ。」
席に戻ったタケルに、
「どうだった。」
と聞くと、
「縦と横に7こがあることは分かったんだけど。どうして7×7をするのかが分かりませんでした。」
と悔しそうに言った。
「そうか。じゃあ、分かるまで自分達で考えてみて。」
と言うと、
「えー、先生、教えてくれないの。」
と言うので、
「知りたい?じゃあ・・・やっぱり教えない。」
「ずるい!」


「勉強ってね、自分でつかむものなんだ。勿論教えなければいけない事は教えるけどね。これは、自分で考えて欲しいな。」
「じゃあ、今日のまとめをするよ。まとめに絶対入れなければいけない言葉は何だい?」
「まとまり。」
タケルが言った。
「なるほど。」
「式を読む。」
スズカが言った。
「言ったね。その言葉。」
「じゃあ、その言葉を使って先生が書こう。ゆっくり書くから先生が書いているスピードより速く書いてもいいし、違う言葉遣いになってもいいよ。」
『同じ数のまとまりで考えるとかけ算+かけ算で●の数を求めることができる。』
『式を見てどんな考え方をしたか解読することを『式を読む』という。』
と書いた。


「じゃあ、今日の授業を振り返ってごらん。」
みんな集中してノートに書き込んでいる。
「できた人から読んでもらうね。」
最初に書いたのはスズカだ。

 

「私は、説明することが好きですが、友だちの話を聞くことが苦手でした。でも、今日みんなの話を聞いて『なるほどなぁ~』と思うことがたくさんありました。これからは話すことも聞くことも上手になりたいです。」
私は、
「先生はスズカさんが、『なんで先生は私のことを当ててくれないの。』っていう顔をしていたのを見ていたよ。でも文句を言わないで友だちの方に体を向けて聞いていたから、これからもっともっと聞く力がつくと思うよ。それと説明の仕方が素晴らしかった。」
と言った。次はタケルだ。


「僕は算数は苦手でした。なぜかというと面倒くさいからです。でも今日はまとまりを使えば楽に計算できると分かってこれなら分かりやすい、と思いました。」
「タケルさんは、昨日からじゃまくさそうだったもんな。でも今日はどんどん発言していたね。先生は、タケルさんはこれから算数が得意になるんじゃないかと思うぞ。」

 

マナが立った。
「私は、発言するのが苦手でした。間違えているといやだったからです。今日の授業でも、先生に聞かれて困った時がありました。そんな時、みんなに助けてもらえて嬉しかったです。でも、考えをプリントに書くときはすらすらと書けて嬉しかったです。」
「さっきマナさんのプリントとノートを見たけど、分かりやすく書いてあったね。マナさんみたいに話すのが苦手っていう子ってたくさんいるんだ。だからそんな人にも『話したい』って思えるような授業ができるように先生も頑張るよ。」


次はハジメだ。
「僕は、最初こんなの楽にできると思っていて、かけ算+かけ算のところはできたけど、先生のかいたかけ算―かけ算がどうしても分かりませんでした。先生が言ったようにこれから考えていきたいと思っています。」
ハジメさんは、最初の日にボール投げをした時、みんなにやさしく声かけをしてたね。あの時先生は、『ハジメさんはクラスの空気を創っている』って思ったんだ。『創る』の方だよ。だから今日の授業でも勉強する空気ができていたんだと思うよ。」

 

意外にもシンヤが立った。
「僕は、勉強が苦手です。先生や友だちの話すことがよく分かりません。でも今日はなぜか分からないけど、手を挙げることができました。」
「シンヤさんは、昨日からドキドキしてただろ?どんな先生なんだろうって。だから、昨日はわざと最初にボールを投げたんだ。あれをキャッチしてくれた時は嬉しかったな。昨日と今日のシンヤさんは、『勉弱』じゃなくて『勉強』だったぞ。」


最後にみんなレンの方を見た。レンは立って、
「先生と勉強した2日はとても楽しかったです。私は、発言するのが苦手だったけれど、今日は前に出て説明することができて嬉しかったです。これからもこんな風に勉強していきたいです。」
「レンさんを見ていて一番すごいと思ったところは、お隣のシンヤさんにやさしく教えているところだったよ。シンヤさんが分からない様子だと、何回でも優しい言い方で教えてたでしょ。素晴らしいと思ったよ。」

 

「じゃあ、これで算数の勉強を終わりましょう。」
「えー、先生、もっと問題出して。」
「そうなんだよ。もっと問題を出す予定だったけれど、だいぶ時間が過ぎているんだ。」
すかさずタケルが号令をした。
「起立、これで算数の勉強を終わります。礼。」