hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

400

400-過去①

「じゃあチアイ、質問があったら、口をはさんでもいいからね。喋ってみるよ。」チアイは黙って私の目を見て頷いた。 「まず、教員になる前の話から始めるね。俺は、ロックミュージックと本とプロレス・格闘技観戦から物の見方や考え方を学んできた。具体的に…

400-チアイとの会話Ⅰ-最後

「あなたが授業で気をつけていることって何?」 「まず声だな。声質というかトーンというか。それと話す時の間。俺は、声と間で子ども達を制圧しているんだ。」「制圧。」「うん。制圧って言うと、何だか威圧的に聞こえるけれど、この人の言うことは聞かなけ…

400-チアイとの会話Ⅰ-③

「だから子ども達の間に何の関係もない状態で、授業なんてできないな、俺には。すごい先生はよく、地方へ行って初めて会う子ども達と授業するけど、あんな事はできない。そういう先生はコミュニケーション能力が高いから、あっという間に子どもとの関係性を…

400ーチアイとの会話Ⅰ―②

「それにしても何か一日目ってとても大事な日みたいね。そして二日目は『授業開き』なのね。ねぇ、さっきの授業開きで指を組んだりボールを投げたりしたのもあなたのアイディアなの?」 「いや、違うよ。ボールのやりとりを通してどんな授業を目指すのかを子…

400ーチアイとの会話Ⅰ―①

「お疲れ様。」チアイが私に向かって話しかけた。私はテーブルに肘をついて椅子に座り、チアイはテーブルの上に立った。ちょうど目が合う高さだ。横にちょこんと靴がおいてある。靴の下にはちゃんと小さなタオルが敷かれている。 「うん、疲れたよ。けど楽し…

400-授業Ⅰ-最後

私は、少し間を置いて言った。「それは『聞く』ということです。だって、『合う』ためには、そして2つ目の図を目指すなら話を聞かなきゃだめでしょ?」 私は黒板に「聞く」とゆっくり書いた。「聞く力を鍛えれば、どんどんみんなと先生が目指す授業に近づく…

400-授業Ⅰ-⑥

今黒板には、「自己決定」「合う」「勉強」「創る」の4つの言葉が書かれている。「これで4つの言葉が出てきたね。もう2つ言葉を書くぞ。まず問題です。先生は最初みんなにある魚の名前のついた言葉を言いました。それは何でしょう。」 子ども達はぽかんと…

400 授業Ⅰ-⑤

私は、黒板に「創る」と書いた。「これは、『つくる』と読みます。先生は、授業は『創る』ものだと思っています。「つくる」って他にも漢字があるよね。この『創る』は、どういう意味を持っていると思う?分からない人はすぐ漢字辞典を出す!」みんなは急い…

400 授業Ⅰ-④

他の子がうんうんと頷いたので、私は、「今、タケルさんは何て言ったの?」と聞いた。「俺から言うね、と言いました。」とハジメが言う。「そうだね。先生が何も言わなくてもタケルさんは自分から言ったんだ。これがさっき言った自己決定だ。ハジメさんもそ…

400-授業Ⅰ-③

子ども同士でやり取りすることを何回か繰り返してから私は、「2つ目の図でボール投げをした時にシンヤさんが困っていたら、ハジメさんが『誰でもいいんだよ』って言ってたの、素晴らしかったなぁ。マナさんとレンさんにも声をかけていたね。」「スズカさん…

400-授業Ⅰ-②

私の手の中にソフトバレーボールが現れた。 私は、「はいっ」と言っていきなりスズカにボールを投げた。スズカは、びっくりした様子だったが、上手くボールを取ることができた。「はいっ」と私はスズカの方に手を出してボールを返して、というポーズをとった…

400-授業Ⅰ-①

「それじゃあ、先生と同じ『タ』のつくタケルさんに号令を頼もうかな。」「えー、面倒くさいなぁ。」とタケルが言ったので、「これは、ここで1回しかしない授業です。君達とは1回しか授業はしない。先生は面倒くさい、って思ってはしない。もう2度と君達…

400-始まり②

400

山奥にいる森の中のキツツキがドアをつついているような現実離れした音だった。しかし確かにノックの音だ。私はしばらく待ってみたが、再びノックの音はしなかった。ドアを開けるか迷ったが、結局好奇心に負けて玄関に向かった。 ドアを開けるとそこには妖精…

「400」のリライト

400

今「400」を読み返してみると、かなり恥ずかしい。しかも今のこの状況に合っていない。当時(まだ昨年の秋のことだ)は一生懸命書いていたけれど加筆修正できるところはしていこうと思い立ちました。でももう「400」に書いてあるような授業はできないかもし…

フォーハンドレッド外伝(チアイの妖精日記)

ふぅ。 やっと『俺』が私に会いに来てくれた。 1年ぶりかしらね。あなたの夢の中に招かれたのは。 『俺』と初めて会ったのは、夏の終わりだった。名前はタナカさん。小学校の先生をしている。あの時は痩せこけた身体で私を抱いた。妙に切迫感があったな。で…

三回目〜再会と別れ〜

あれから2週間が過ぎた。私はまた酒を飲むようになっていた。心のどこかでもう一度チアイに会いたい、と思いながら。 17時30分。さあ、宴会の時間だ。 コン、コン、コン、とノックの音が三回聞こえた。チアイ?いや、この音はチアイじゃない。もっと現…