hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

400ーチアイとの会話Ⅰ―①

「お疲れ様。」
チアイが私に向かって話しかけた。私はテーブルに肘をついて椅子に座り、チアイはテーブルの上に立った。ちょうど目が合う高さだ。横にちょこんと靴がおいてある。靴の下にはちゃんと小さなタオルが敷かれている。


「うん、疲れたよ。けど楽しかった。ありがとう。」
「あの6人みんな、この45分で随分成長したと思うわ。」
「そう?だったらいいけど。」
「例えばタケルさん。最初は号令もやりたくなさそうだったじゃない?でも最後はあなたが指示しなくても自分で号令をやったわ。あなたの授業に満足したからだと思うわ。」
「マナとレンとシンヤも最初より大分心がほぐれてきた感じがしたな。特にレンは鋭い考えを持っているのになかなか言えないんじゃないかと思っていたがその通りだったな。でも発言できた。あれは大きかったな。あの発言がなかったら、この授業は深まらなかったから。」
ハジメさんのみんなへの声かけも良かった。私も一緒に授業受けたくなったわ。いつもあんなことしてるの?」


「4月の最初に子ども達に会う日は、『学級開き』、最初の授業は『授業開き』って位置づけているんだ。この二日で教師の価値観を伝え、子ども達と確認し合うんだ。『授業開き』の方は最近ああいう形でしているかな。こういう授業を目指していこう、っていうことを子ども達と共有するために。」


「今日は『授業開き』の日だったわけね。ちなみに『学級開き』ってどんなことをするの?」
「長くなるけどいい?」
「もちろん。」
「これは最近俺が思いついて取り組んでみたんだけど4年生なら『4つの関門』という名前の学習をすることから『学級開き』が始まるんだ。」
「4つの関門。」


「うん。まず、4年生の下足箱に『進級おめでとうございます。今から4つの関門を突破してもらいます。第1の関門は、ズックをきれいにそろえて下足箱に入れる、です。』って書いた紙を貼っておくんだ。」
「なるほど。それであと3つ関門があるわけだ。」
「そう。教室に入ると、黒板に第2の関門が書いてあるわけ。『自分の机と椅子を探しましょう。』、第3の関門は『明日から勉強できるように教室を整えましょう。』、第4の関門は『先生の好きな食べ物が書いてある紙を探して2つ覚えましょう。』とかね。これを始業式の前にやって、式が終わって初めて俺が教室へ行く。そしてこの活動を通して何を学んで欲しかったのかを俺が言うんだ。」


「何て言うの?」
「一つ目は、『自分(達)で考えて行動できる人になってほしい』、二つ目は『協力するってどういうことなのかを考えてほしい。』三つ目は『前の経験を生かすことが大事だ。』って言うんだ。そして子ども達に4つの関門でどんなことができたかを聞いて、少しでも出来たところがあったら褒める。」


「そういうやり方だと子ども達も楽しく学べるわね。」
「うん。まだ続くよ。始業式の日は早く帰らなきゃいけないから、俺の話が済んだら『帰る用意をしましょう。』と指示を出す。そしたら必ず『先生、連絡帳は書かないんですか。』と聞いてくる子がいる。」
「そうね。私、そのタイプかも。」
「そしたら、『明日はどんな勉強をすればいいと思いますか。』って聞くんだ。そうするとこれも必ず『体育!』って言う子がいる。」
「分かる。」
「そしたら『みんなはどうなの?明日授業の一日目に体育をするの?』って聞くんだ。『さっきも言ったよね。自分達で考えられる人になって欲しいって。考えてみて』っていうと大抵は、学活と国語ぐらいに収まるかな。とにかくこの先生はこういう考え方をする先生だってことを伝えるんだ。それで最後に簡単なエンカウンター的活動をして終えると尚更いいと思う。でも、そのクラスの実態を事前にある程度知っておかないと『四つの関門』事体ができないこともある。子ども達では解決できないトラブルのもとなったら元も子もないからね。」


「でももう、こんなやり方はできなくなるだろうな。俺が復職する頃には、疾病対策がとられた学校になっているだろうし。今、俺が持っている技術をいかにしてアップデートするか。悩ましいところだよ。それに確実にオンラインで学習する技術も身につけないといけないだろうし。」


「確かに。今学校現場はとても混乱しているわ。」
「そうなんだ。何で知ってるの?」
「私、先生専門の妖精だもん。」
「そうなんだ。」
また頭がクラクラしてきた。