hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

夏眠日記その44

何時頃から「この映画は実話に基づいて構成されています」みたいな但し書きがついた作品が目につくようになったのだろう。2000年過ぎてすぐの頃かな。まあ、実話だろうが何だろうがどっちでもいいから2時間俺をどこか今いる場所から他の場所に連れて行ってくれというのが正直な思いではある。

 

今日観た「浅田家!」(2020)もそんな但し書きから映画は始まったから少し心配だった。でも最初の10分で気持ちを持っていかれちゃったよ。結局最後まで楽しく(?)観ることができた。でもこんなハートウォーミングな話に心を持っていかれちゃうって俺らしくもないかな。

 

内容を書くのは控えてとくとして、主演の二宮和也はいい俳優だ。TVドラマ「流星の絆」からそれとなく好きだったので、映画「硫黄島からの手紙」や「検察側の罪人」もそれとなくチェックはしていた。意識して二宮作品を観よう!と思ったのは、これが初めてだった。

 

映画の冒頭から二宮はダメ男が似合うなぁ、と思って観ていたらどんどんいい奴になっていくじゃないか。そうか。そういえば兵隊をやらせても、先輩を威嚇する検察官をやらせてもはまっていたもんな。つまりは上手い役者なんだな。僕は好きだ。

 

というわけで、今日の前半はこの映画に助けられた。

 

次に助けられたのは連日で申し訳ないが、いとうせいこうだ。読みかけだった「ガザ、西岸地区、アンマン 『国境なき医師団』を見に行く」を最後まで読んだ。

 

ガザを出て西岸地区、アンマンに行ってもいとうの取材のスタンスは変わらない。患者や医療者、スタッフについて語る時はいちいち名前を挙げてから書き始める。

 

もちろん空爆、銃撃、義手、全身やけど、焼けただれた跡、作業療法等ヘヴィな言葉が淡々と途切れることなく綴られる。

 

心に残った言葉は「違う国から文化を持ってきて、同じ希望のもとで生きる」だ。いとう曰く「それは患者だけの話ではなく、医療に関わるスタッフ全員のことであるのは言わずもがなだった」。ヨルダンのアンマンにある「再建外科病院」には、いろいろな国から負傷した人々が治療にやって来る。そこではどういう経緯で負傷したのかは患者同士あまり話さないそうだ(敵対する者同士ということも考えられるから)。しかしこの病院では、境遇や文化に違いはあれど、治療という未来に繋がる行為においては誰もが同じ希望を持って生きていこう、と謳っているわけだ。

 

それから「日本はいつの間にか内向きになってしまっている」というようなことも書いていた。これは自分にも激しく当てはまる、痛い言葉だった。「内向きになっている」からこそ、空爆、銃撃、義手、全身やけど等の言葉にショックを受ける。(中東でハードな生活をしている)彼らは僕と同じように呼吸し、生き、そして未来を語っている。こればっかりは現地に行って自分の目で確かめないと迂闊なことは書けない。が、しかし、少しでも「外の様子を知りたい」と思うようになったのはこの本のおかげである。

 

もうひとつドキッとしたのが、いとうとコンビを組んでいるMSF広報の人がいつも「〇〇さんは、帰ったらどうしようと思いますか」と質問するところだ。いとうせいこうもドキッとしている。よくこんなキツイことが聞けるなと。しかしある少女のインタビューで、いとうは気づく。「どんなに過酷な状況下にある者にでも、将来を聞かなければならない。少なくとも聞かれた者は、答えはどうあれインタビュアーは自分に未来があると考えていると思うからだ。つまり、それは決して酷なだけの質問なんかではなかったのである」「いや酷だと思っていた俺の方が残酷なのであった。まるで相手に明日がないかのように扱っていたと同じなのだから」。これは僕もいとうと感覚がおんなじだ。こういうのは気づいたら改めなくては。

 

今日も何とか一日生きることができた。