hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

やればできた

今週が終わろうとしている。月曜日から再び本来の場所(職場)に戻った僕は、恐怖に打ち震えていた。「こんなんで、果たして授業ができるのだろうか?」「どうやって授業してたっけ?」と。自分が働いていたのが何だか遠い昔のようだった。火水と教材研究をしていた僕は、木曜日に久しぶりに授業をした。6の2の社会と4の1,4の2の社会だ。

 

結果からいうと、ちゃんと授業はできた。反射神経みたいなものが僕にはまだ残っていたのだ。最初に6の2の授業が終わった時は、心底ホッとしたよ。「やればできるじゃん」と思った。その勢いで4年生の授業をやり終えた僕は、次の日のことを考えていた。金曜日は何かと気を遣うクラスだ。どうなるか分からない。まだ油断はできない。

 

金曜日は、早速授業の順番を間違えるという失敗をやらかしてしまった。いかんいかんと思いながら5年生の授業をしたのだけれど、思ったより反応がよくて昨日に続き安心することができた。その後の6の1の授業もそこそこできた。こうして僕の1週間は終わった。

 

というわけで今は久しぶりにリラックスしている。お盆が過ぎてからは結構ピリピリしていたからな。こんなにのんびりした気持ちになるのって3週間ぶりになるかな。

 

 

この1週間、僕の支えになっていたのは、先週に引き続き、いとうせいこうである。いとうせいこうは熱い心を持ったすごい人だ、と改めて思った。何でそう思ったのかというと、まずは、彼のポエトリー・リーディングだ。たまたまアップルミュージックで検索していたら見つけた作品である。

 

タイトルは「ミャンマー軍事政権に抗議するポエトリー・リーディング QUIET」。沢友恵とDUB MASATER Xがバックをつとめている。16分におよぶ大作である。

 

タイトルから推察されるようにのっけから凄い言葉から始まる。

 

「無抵抗の僧侶を威嚇してはならない 無抵抗の僧侶を殴打してはならない 無抵抗の僧侶を投獄してはならない 無抵抗の僧侶を殺害してはならない 彼らは権力の外にいて 権力とは全く別の法に則って生きているからである 彼らを威嚇し 殴打し 投獄し 殺害することは 別の法を持つものへの圧倒的な無理解 圧倒的な暴力である つまりは他者の破壊である そして我々もまた他者なのだ」

 

そして「ミャンマー軍事政権よ フリーアウンサンスーチーフリー」と軟禁状態になっているアウンサンスーチーを解放しろと執拗に呼びかける。

 

「我々もまた彼らである。彼らはまた我々である」

 

この言葉については、後で触れるかもしれない。いとうの言葉を続けよう。

 

「私は問いたいのだ 悪の衝動があるならば、善の衝動もまたあるのではないかと 人々は今 悪の衝動にばかり目を向け 怖れ 自分の中にそれを見いだしている だが諸君 私は問いたい 悪の衝動があるならば 善の衝動もあるのではないか 悪がこの世を覆うなら 善もこの世に満ち満ちるべきではないか 悪に狂わされる人間がいるならば 同じように善に身を任せる人間がいてよいのではないか 私はここに善のネイションの設立を宣言する」

 

「善の衝動」についても後で触れると思う。その後いとうは「対話せよ」とアジテートする。

 

「話し合いを拒んではならない なぜなら話し合うことが唯一 他者と他者を繋ぐ道だからだ 他者と他者が繋がれなければ 威嚇が始まり 殴打が始まり 投獄が始まり 殺害が始まる だから 対話せよ 対話せよ そして、対話のためにこそ伝え合え 言論の自由と 報道の自由はこうして 威嚇と殴打と投獄と殺害を防ぐためにある 対話せよと言い 伝え合えと訴えることは 威嚇と殴打と投獄と殺害の目の前に立ちふさがることだ」

 

淡々と詩の朗読が始まり10分以上それが続く。12分が過ぎてからまた最初の言葉を今度は激しく繰り返す。DUB の具合も激しくなってくる。沢友恵のピアノとコーラスは通奏低音のようにずっと響き続けている。いとうのアジテートはどんどん熱を帯びてくる。終わった後は、激しい拍手がいつまでも続いた。

 

 

このポエトリー・リーディングのライブ映像を観た(2008年4月19日)。最初はやはり淡々と語り出すいとうせいこう。椅子に座って朗読している。観客席もどこかのんびりしている。その空気がどんどん変わり、やがていとうは立ち上がり、観客を煽り出す。そして観客にも「立て!」と促す。続々と客が立って、「フリーアウンサンスーチーフリー」と叫び出す。それでもいとうの熱は収まらない。最後は叫んでいた。そしてピースサインをみんなに送る。

 

僕はいとうせいこうの音楽に関する映像を観るのは初めてだが、凄いものを観てしまった。

 

今日僕はもうひとつ、いとうせいこうの「『国境なき医師団』を見に行く」についても書く予定だったが、それは明日書くことにしよう。とにかく、「善で何が悪い!」といとうせいこうは、堂々と真正面から僕らに語っている。「それは幼稚な考えだよ」とはとても言えない凄味を持っている。これが今週の僕の支えになった。