木曜日(12月10日)の漫勉neoは惣領冬実が登場。「そうだった!「チェーザレ」(2005~)を忘れていた」と思った僕はドキドキしながらこの番組を観た。僕は昔から惣領冬実の漫画が好きで(姉の影響で少女マンガもよく読んでいた)、「ボーイフレンド」はまだ持っているはずだ。
浦沢は、彼女とは同年代で漫画家としてのキャリアもほぼ同じだと言っていた。これは、諸星大二郎の回みたいにカチコチに緊張しなくてすむかな、と思っていたらまあ喋る喋る。惣領冬実もお喋りだから結果として盛り上がった回になった。しかもかなりマニアックな話で。
「チェーザレ」は今、不定期連載だけど単行本は日本で売れているのかな?イタリアでも出版されていて高く評価されているらしい。漫画の内容は置いておいて何を語り合ったか書いていくことにするか。
惣領はネームは作らない。原稿にいきなり下描きをする。シャープペンシルは0.3ミリを使用。下描きは丁寧に納得いくまで描く。
17歳のチェーザレに政治家のスイッチが入った瞬間のシーンを描いている映像を見ながら、
浦沢「まあ下描きが克明で」
惣領「単線で決めちゃった方がペン入れが楽だとおもって。割と細めにいれちゃうんですよ」
続いてペン入れ。0.05ミリのミリペンで顔の輪郭から描く。惣領はGペンや丸ペンを一切使っていない。このコマには3種類のミリペンの太さを使う(0.1ミリ、0.05ミリ、0.03ミリ)
浦沢「0.05でも使い分けているように見えたんですけど」
惣領「だんだん摩耗していくので順番にカラーリングして分けているんですよ」(カスレ度の強弱で使い分ける)
0.1ミリの少し太いペンで耳と髪の毛を描く。
浦沢「このスッスッスッスッとこういう風に(線を引いて)ツーっと持っていかないのは」
惣領「線を引いているより、線を作っている感じです。構成して構築してる感じの『らしい線』にしてるんですね」
唇についてや(浦沢が手塚作品の蘊蓄を披露)髪の毛の会話が続く。そして今回の最大の名シーンがこれだ。
顔にかかる微妙な影はカスレ度の強い0.05ミリで。しばらく描いているが消しゴムで消す。「えっ!?消えた?」というナレーションが入る。
浦沢「ここでね、見ましたよ。」
惣領「見ましたか?」
浦沢「とんでもないことが…。これ!」
惣領「そうなんです。消えるんです。」
浦沢「これが今回最大の衝撃でしょう。これ漫画界揺らいでますよ、今」
惣領「あ、そうですか?影の具合を今見てて、もう鉛筆と同じように(ペンを)入れてみて消すんですよ」
浦沢「これ絶対やったらアカンやつですよ」
惣領「アカンやつです」
浦沢「描いてすぐ消しゴムなんて。これいつ思いついたんですか?事故?」
惣領「事故ですね。ただしこれはね、使い込んだペンじゃないと消えないんです。おニューは消えません。インクの量が多くて」
浦沢「分かる。うん。それだ。それで、よーくよーく見るとテテテテンってなってるんですよ」
惣領「あのドットの小さな・・・」
浦沢が割って入る。惣領が喋っている最中に割って入ることが多い浦沢。
惣領「ちょっとした陰影のね。影がねグラデがこれで可能になるんですよ。どうしても単線なので線の強弱でっていうよりも、もうこれで」
もうこのくらいでいいだろう。とにかくよく喋る二人。しかも浦沢は惣領が喋っている最中に割って入る。聞き上手の彼としては珍しいことだ。よほど楽しかったのだろう。
あとはユーチューブで観ることをお勧めします。