タイその3

一人旅なんてそんなものですよー、からか。

 

チェンマイを後にした僕は、その後うろうろしてから北部のメ―サイという国境にある町に着いた。

 

とても小さな町だったのであまりリーズナブルなホテルがないような気がしたこと、長旅で疲れてもいたこともあって大きくそびえたつホテルに泊まることにした。

 

今回の旅で荷物(といっても大きめのリュックだが)を持ってもらったのは初めてだった。その物腰の柔らかさに「辺境にホテルマン!」と思った僕はリラックスして一緒にエレバーターに乗りこんだ。

 

「タイは初めてですか?」「イエス」など軽く喋っていると、その穏やかな口調のまま「ドゥユーライクアガール?」と尋ねられた。「?」と思ったが、女の子は好きだ。僕は問われるまま正直に「イエス」と答えた。(←今思い出すとかなりおぼこい)

 

部屋に案内されて、この部屋でOKだと答えた後、ベッドに倒れ込んでウトウトしていた。すると電話が鳴った。「うん?」と思いながら受話器を取るとさっきのホテルマンの声がした。

 

「今時間がありますか?」「あるよ」「じゃあ部屋に行きます」というので、何かホテルのルームサービスのようなものが来るのかな、と思っていたら来たよ。女の子が。しかもゾロゾロと7,8人くらい。

 

驚いて呆然としている僕にホテルマンは言った。「どの子を選びますか?」。ちょ~っと待った!!部屋に入ってきた女の子はみんな「少女」という方が相応しい子ばかりだぞ。まあ20歳くらいの女の子が入って来ても困るが。あんなに紳士然としていたホテルマンの顔をもう一度見た。本気で言っているみたいだ。「少女」達に目をやると、科をつくって笑いかけてくるではないか。そうか、これがタイのもう一つの側面なのか。

 

勿論僕は丁重にお断りした。「そんなつもりはない」と。ホテルマンは「好みの子がいないのなら他の子を連れてきますよ」と言う。仕様がないので「アイムタイアード」「一人にしてくれないか」と言った。ホテルマンは「何時なら都合がいいですか?」としつこい。ホテルを変えようかとも思ったが、きっとどこでもこういうことが行われているのだろうと思い、「とにかく今日は都合が悪い」と言い引き下がってもらった。

 

いやあ、びっくりした。こんなの「地球の歩き方」にも書いてなかったぞ。僕はとにかく部屋にいたくなかったので、外に出た。すぐ近くが国境だった。地元民たちはこっちとあっちを平気で行ったり来たりしている。僕があっちに行こうとするとパスポートの提示を求められた(当然だ)。あっちへ行っても市場(物を売る方の)があるばかりで特段珍しいものはない。しばらく人間ウォッチングをしてこっち側に戻った。

 

まだホテルに戻りたくはなかったので、こっち側も散策することにした。そういえばタイに来て屋台のようなところで食べたことってないな、と思い「屋台屋台」と思いながら歩き回った(まだ動揺が収まっていない)。屋台が並んでいるところを見つけた僕はどんなシステムなのかを聞いた。「そんなの、あんた、好きなものを指さしてくれればそれでいいよ」みたいなことを言われたので「これとこれとこれ、あ、それにライスもね」と言って食べた遅い昼食は美味かった。メ―サイには1泊してすぐに行き先も考えずに(「とりあえず南!」)乗り合いバスに乗り込んだ僕であった。

 

あー、でももう一つの国境地帯で食べた中華粥の美味しさや、バンコクで観たムエタイ、それにトムヤムクンの美味さなどいろいろ思い出してきた。

 

帰国前日にはバンコクで出会った女子(保育士さんだった)2人と僕ともう一人の男子で飲み会をやったし、その女子2人とは帰る日が一緒だったので関空まで一緒だったなあ。

 

と何かと女性に縁のあるタイ一人旅でした。

 

                                                                                                                おしまい