「ベトナム伝説」全曲紹介 その1

こんにちは、hanamiです。今日は、もとい今日も「20世紀ロック」の企画をパクらせていただきます。でもこの前よりハードルを上げていくぜ。題して「ベトナム伝説」全曲紹介である。全曲紹介は僕にとって初体験だ。そんなことができるアルバムある?から始まってiPhoneの中を調べて決めた。もしかしたら全曲紹介はこれが最初で最後かもしれない。

 

この作品は、多分僕が一番一生懸命に音楽を聴いていたと思う時期(大学1年2年の頃)のアルバムである。当時のことをなるべく思い出しながら書いてみよう。発売日にワクワクしながら本屋さんに行ったことを今でも覚えている。

 

まずは背景から。「ベトナム伝説」とは、ザ・スターリンのヴォーカルである遠藤ミチロウが発表した作品である。形態としては当時ほとんどなかった(もしかしたら初めての)カセットブックという形で発表された。まず「ベトナム伝説」というタイトルにギョッとするかもしれない。ミチロウ独特の語感だ。以前のザ・スターリンなら「冷蔵庫」「豚に真珠」「解剖室」という曲のタイトルなんかにミチロウ独特の響きを感じる。次はカセットブックという形態だ。これはそのまま、カセットテープと本が一体になった商品である。本の方は、最新の写真、蛭子能収の漫画や糸井重里との対談なんかが収録されていたと思う。

 

1983年にメジャー2枚目のアルバム「虫」を発表したザ・スターリンは、ツアーを敢行する。僕も見に行った。その時のことはようく覚えているし、記事にも書いた。そのツアーが終わった後バンドは空中分解した。そこでミチロウは、1984年にカセットブックという形でソロアルバムを発表したというわけだ。当初はカヴァーアルバムだと聞いていたが、結果としてカヴァー6曲オリジナル3曲になった。ギターはその後ウイラードという人気バンドを結成するJUN BREEDが担当している。平沢進がオケを作っている曲もある。

 

 

 

1.仰げば尊し

仰げば尊し」は、その名の通り文部省唱歌である。こんな歌、もう知らない人の方が多いかな。のっけから女性コーラス隊がピアノをバックに朗々と「仰げば尊し」を歌う。その後に切り裂くようなギターでパンク版「仰げば尊し」が始まる。痛快である。初めて聴いた時はギターが鳴った瞬間「笑えるくらいかっこいい」と思った。そして「ひょっとしてシド・ヴィシャスの『マイ・ウェイ』のマネ?(説明すると長くなるので省略。よかったら検索してみてね)だろうな」と思った。後にミチロウもそのことを認めていた。アルバムとしての掴みはバッチリである。「身を立て名を上げやよ励めよ」というところが気に入っていたらしい。その後のアコースティックライブでも最後に必ず歌っていた。

 

2.ワイルドで行こう

ステッペン・ウルフの「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド(ワイルドで行こう)」のカヴァー。蛇足だが、「ワイルドで行こう」という邦題は秀逸だと思う。カヴァーと言っても原曲の様子がはっきり分かるのはサビだけ。後はパンク調の荒々しいナンバーである。当時「虫」ばかり聴いていたので言葉数の多い歌詞が妙に嬉しかったのを覚えている。

 

3.好きさ・好きさ・好きさ

グループサウンズザ・カーナビーツの曲。ミチロウは実はグループサウンズも好きだったのかな?それともこのグループだけ?あるいはこの曲だけ好きだったのかな?そこら辺は忘れた。でも「好きさ」を連呼し、「忘れられないんだ お前のすべて」と歌う歌詞に痺れていたと推察される。歌詞は漣健児。これも性急なナンバー。

 

4.おまえの犬になる

ストゥージズのナンバー「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ドッグ」をカヴァーしたもの。原曲はゆったりしたテンポだが、ミチロウヴァージョンは更にゆっくりねっとりしている。音も歌も聴く人に絡みついてくるナンバー。この歌詞は必読である。「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ドッグ」を「何も考えずにおまえの犬になる」と歌ったミチロウのセンスが光る。次のザ・スターリンのツアーでも演奏していたような気がする。ああ、解散ライヴでもやってたな。この曲もその後のアコースティックライブでもやるようになったのだ。

 

5.割れた鏡の中から

日本が世界に誇るサイケデリック・ロック・バンドであるジャックスのカヴァー。これを(1~3曲目もそうだが)初めて聴いた時はびっくりした。超性急なナンバーなのに言葉が頭に入ってくる。ミチロウも歌詞を伝えようとしてか、少し歌い方を変えている。「割れた鏡の中から俺を探し出すんだ/雑音なしの俺の俺を/裸になった俺の俺を」「今歌うんだ/今叫ぶんだ/言葉を忘れた俺の情熱だけだ」「ガラスの破片だ/震えてくる焦りと震えてくる怒りだ/見えないものが見えてきた時の」。いかん、思わず歌詞を書いてしまった(前にも書いたことがある)。原曲はもっともっとテンポはゆっくりである。そちらのヴァージョンも素晴らしい。この歌、歌ってくれないかなーと長年思っていたが、僕の見たライヴでは歌ってくれなかった。

 

 

ここでA面はお終い。カセットテープレコーダーからカセットテープを出して、裏っ返しにして(B面にして)入れ直し、聴くのだ。そこの若い人、イメージできる?レコードの方が分かるかな。まあA面B面があるということは、そこにそれぞれ世界観があるということである。

 

 

というわけで、B面については明日書くことにしよう。ここまで、全部カヴァー曲だったな。とはいえミチロウ節全開だったけど。

 

 

最後は「仰げば尊し」で締めようか。


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関係ないけど、中村達也とやっていた「タッチ・ミー」の演奏。かっこいい。こんな大観衆で歌ったのはソロでは初めてだと思われる。ウケているので嬉しい。ミチロウ40代後半の頃だと思われる。髪の毛が薄い。喉が詰まっても歌詞が出てこなくても微動だにしないのもカッコいい。


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