一生の不覚(スターリン「TRASH」)

高校2年の頃だったと思う。僕は例のように突然思い立って、40㎞離れた地方都市(県庁所在地)にあるレコード屋に自転車で行こうと決めた。

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。昼過ぎについた僕はさっそくお目当てのジョイ・ディビジョンを捜した。2枚リリースされていた。ジャケットを見てセカンドの方を選んでレジに行ったら、レジのお兄さんが「これもおすすめだよ」と言って差し出したのがスターリンの「TRASH」だった。ジャケットの気味悪さに多少心が動かされたが、僕はジョイ・ディビジョンだけを購入した。お金はぎりぎり買えるくらいはあった。しかしこの店で僕は数々の失敗をしていた。そのうちの1枚がスターリンの前作「ブタに真珠」だった。何だか薄っぺらい音で、ボーカルもヘラヘラ歌っている。僕は「うーん、失敗したかな」と思い数回聴いてそのままになっていた。そのスターリンを勧められても何だか気が乗らなかった僕は買わなかった。「TRASH」のジャケットを生で見たのはこれが最初で最後だった。

 

その後、雑誌でスターリンが取り上げられ大騒ぎとなった。そしてメジャーデビュー盤である「STOP JAP」がリリースされた時、僕はそれでも買わず友だちに勧められるまでレコードを聴かなかった。聴いてみてミチロウの声にぶったまげた。「『ブタに真珠』の時と違うじゃん!」「かっこいい!」

 

それじゃあ「TRASH」からこんなボーカルだったのかな、と思って確かめたくてもとっくに売り切れているし(再販はされなかった)、入手している友だちもいない。僕が初めて「TRASH」を聴いたのは大学2年に同級生の弟からカセットに落としてもらったからだった。

 

やはりそうだ。ミチロウの声は「TRASH」から変わっていた。曲もいい。あの時買わなかったのは一生の不覚であった。

 

あ、でもジョイ・ディビジョンの「Closer」はとてもよいアルバムでしたよ。