「ベトナム伝説」全曲紹介 その2

それではB面にいっちゃいます。

 

1.お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました

 

まずタイトルが素晴らしい。ミチロウは歌詞やタイトルの中で数々の名フレーズを残しているが、これは1,2を争うものだと思う。後の全歌詞集やDVDにもこのタイトルが使われた。だからこれはミチロウのオリジナル曲。ミチロウ流ラップというか、ラップにしようとして上手くいかなかったというか、そんな感じの曲。でもそのぎこちなさ(福島弁丸出し)が名曲たらしめている。

 

また歌詞が異様に長い。後年アコースティックライヴを行っていた時の定番曲になったが、よくこんな歌詞を覚えられるな、くらいの言葉を延々と歌っている。昔ライヴの後のお疲れ様会で「(歌詞の)最後の『お母さん、赤い色は大嫌いです!』の後に来る沈黙、これを表したかったので長い歌詞にしたんだ」と言っていた。歌詞の内容は、そうだなあ、1970年初頭の匂いがプンプンしてくるな。後に「ジャスト・ライク・ア・ボーイ」「父よ、あなたは偉かった」というミチロウのテーマのひとつであった家族3部作に繋がる。歌詞にある「パンツの履けない留置場は寒いです」はミチロウの実体験。

 

↓↓↓↓ こちらはアコギヴァージョン。


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2.ハロー・アイ・ラブ・ユー

 

1曲目とガラッと変わりA面と同じようなパンクナンバーに仕上げている。元の曲はザ・ドアーズ。ザ・スターリンでは「ハートに火をつけて」もカヴァーしている。「ホントウのことは聞きたくないよ名前だけなら聞いてやる」ってかっこいいな。この曲もアコースティックライブでやっているし、CDとして音源を残している。

 

ここでミチロウの音楽形態を書き記しておくと、始めはアコギを持ってライヴをする→バラシ、自閉体というバンドを経てパンクバリバリのザ・スターリン→ソロでGNP(グロテスクニュー・ポップ)なるミチロウ流ポップ?同時にパラノイア・スターとしてサイケ風なバンド→「ザ」抜きのスターリン(ゴリゴリのパンクではなくなる)→アコギでソロ活動、になる。結局一番長かったのは最後のアコギでソロ活動になる。

 

3.カノン

 

パッフェルベルのカノンに詩をつけて歌ったもの。だからこれもカヴァーになるのかな。このアルバムの中では異彩を放っている。オケは平沢進が担当している(荘厳で素晴らしいオケ)。ミチロウはオケをちょちょいのちょいでできると思っていたらしいが、平沢はミチロウから話を持ちかけられて「おいおい、大変なんだけど」と思ったと後年語っている。ミチロウは(お返しになるのかな)平沢のアルバムに詩の朗読として参加している。

 

「カノン」はミチロウのごくごく初期に作られたものである。これも実はアコースティックライブでやっていたんだよね。このアルバムの曲を後になっても結構やってるんだな。今、書いていて分かった。

 

「ザ抜きのスターリン」のライヴ盤にも収録されている。あの当時のスターリンでアコギ1本でこの曲をやったことに衝撃を受けた人も多いはずだ。僕も驚いた。ミチロウはMCで「見てはいけないものを見ることになる」と言ってこの曲をやり始めた。ソロ活動では「お母さん~」同様、重要な曲としてライヴの中盤によく歌っていた。それにしても20代の頃の歌を60代になっても歌い続けられるなんてすごい。それだけミチロウにとっては変わらぬテーマだったのだろう。内容は、金魚鉢の中にいる金魚を自分に見立てて己の閉塞感を歌っている。♪泳ぐことは頭をぶつけることだ・・・って。

 

もう少し書くとこの頃戸川純もパッフェルベルのカノンにのせて「蛹化の女」というタイトルで歌っていた。この2曲を同時に蜷川幸雄が劇中歌として採用したこともある。ミチロウは戸川純版の「蛹化の女」をカヴァーしてもいる。

 

4.渚の天婦羅ロック

 

最後はバシッとパンクロック。だが、歌っている内容は「天婦羅を食べ過ぎて下痢になっちゃった。だったら大根おろしをたくさん食べればいい。そしたら下痢にはならないさ」というもの。何とこれもアコースティックライブでやっている。その時はもっとブルージーな感じで歌っている。

 

書いてみて初めて気づいたが9曲中6曲をこの後のアコースティックライヴで取り上げている。その内必ず歌っていたのが「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」と「カノン」である。

 

 

このカセットブックは、数年後にレコード化され、そのまた数年後にCD化されている。それから大分後になって再びCD化されている。その時にオマケとして収録されていたのが、タッチ・ミーでの「仰げば尊し」である。ドラムが性急でかっこいい。ミチロウと喋っている時に「タッチ・ミーだと、相当気合を入れてアコギを弾かなきゃ(ドラムの)達也に負けちゃうんで疲れるんだよ」と言っていた。その通りの演奏である。

 

 

今考えると、「ベトナム伝説」は遠藤ミチロウ個人のテーマが色濃く反映されている作品が多いと感じた。また、何だかんだ言ってザ・スターリンはパンクという枠組の中で(「虫」という快作も含めて)やっていた分、ここでは伸び伸びと自身のやりたいことをやっているように思えた。

 

以上で「ベトナム伝説」全曲紹介を終わります。これは楽しかったぞ。しかし、やはり他のアルバムでやることは不可能だな。ミチロウの作品ならまた挑戦してみたい。

 

 

マニアックな話ばかりですみませんでした。ペコリ。

 

 

最後はやはりミチロウの代表曲である「天国の扉」(byボブ・ディラン)で締めよう。ディランの作った平凡な曲を自身の代表曲になるまで昇華したのが素晴らしい。歌詞をほぼ即興で書いたのも凄いなと思う。

 


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弦が切れても微動だにしないミチロウが素晴らしい。それにいい人っぷりも伝わると思う。

 

今度こそお終い。おやすみ!