2月1日(火)
今日はまず、自省をしよう。己の音楽生活を振り返ってみるのだ。去年の晩秋からボブ・ディランに始まって、デヴィッド・ボウイ、ジョージ・ハリスン、ジョニ・ミッチェル、ボブ・ウェルチ、ボブ・マーリーなんかを聴いてきた。かなり長い間こういう傾向のアーティストを聴いてきたのだが、何だか高尚すぎやしないか?ロック・レジェンドばかりじゃないか。僕はこんな人間だったっけ?というわけで自省だ。そう思って筋肉少女帯の「踊るダメ人間」を聴いてみた。いやーここだよここ。僕が本来いたはずの場所は。安心するなあ。歌詞は昔書いたことがあるので今日は書かないでおこう。続けて「暴いておやりよドルバッキー」だ。タイトルが最高だ。ドルバッキーってなんだ?どこからそんな言葉が生まれてきたんだろう。
こうなると、遠藤ミチロウというかザ・スターリンを聴きたくなってくる。「冷蔵庫」「解剖室」「水銀」「天プラ」なんかを聴きたい。「天プラ」の歌詞はこうだ。
♪天プラ 天プラ 天プラ お前だ
♪天プラ 天プラ 天プラ お前だ
♪天プラ 天プラ 天プラ お前だ
♪天プラ 天プラ 天プラ お前だ
♪からっぽ からっぽ からっぽ からっぽ
♪天プラ おまえだ
最高ですね。となるとミチロウのソロも聴かねば。明日聴こう。
2月2日(水)
何から聴こう。ここはやはりソロ第1弾の1曲目「Just Like a Boy」からだな。
♪ボクは元気で暮らしているよと キミの便りが届いた朝に
♪窓を開けて 海の向こうを駆けずりまわる キミの姿を思い浮かべ
♪ちょっぴり羨ましいけど 今日はいい天気!
♪Oh! Just Like a Boy Just Like a Boy
♪まるで少年のように街に出よう
スターリンを解散させて初めて発表した(正確には3曲入り自主カセットテープをその前に出している)ソロアルバムを見つけた時の興奮は今でもよく覚えている。そしてすぐに帰り道の車で聴いた時の衝撃も忘れられない。だってあのパンクバリバリのミチロウがアコギ1本(一部ハーモニカ&ベース入り)で歌っているんだもん。声も弱々しく聴こえた。しかも歌詞がこんなんだ。これは本心から歌っているのか?と疑ったくらいだ。まあそれくらいスターリンの歌詞はぶっ飛んでいたわけだけど。「天プラ お前だ からっぽ」「解剖室は空いたか?バラバラになって早く出ろ」「何でもいいのさ壊してしまえば」とか歌っていたんだからそのギャップに驚いた。
♪はるか彼方はアリゾナの砂漠 ギター片手にたたずむキミの
♪ホホは赤く 砂に錆びて たたずむ姿想い浮かべ
♪ちょっぴり羨ましいけど 今日はいい天気!
♪Oh! Just Like a Boy Just Like a Boy
♪まるで少年のように街に出よう
この曲をミチロウは最後の最後のライヴまで必ずセットリストに入れていた(ライヴの序盤に歌っていた)。上の2番の歌詞をご当地の地名を盛り込んで歌っていた時期もあった。その頃僕はミチロウと少しだけ喋れるようになっていたので質問したことがある。「2番でご当地の地名を盛り込んで歌っていますけど、考えるの大変じゃないですか?」ミチロウは「いや、あれは即興だから」と答えた。「えっ!その場で考えて歌っているんですか?」「そう。まあ適当にその場で歌ってるよ」その後いろいろな場面(歌詞が飛んだ時、弦が切れた時の対応)で瞬発力を見せつけるミチロウに僕は興奮したのだった。
ライヴに行って直に聴いてからは、「これは本気で歌っているんだろうか?」という疑問も氷解し、素直にミチロウの歌詞に没入することができるようになった。そしてこの曲を聴くたびに思い出させてくれるのだった。「そうだ、僕も『まるで少年のように』街に出なければ。家の中で落ち着いている場合じゃない」と。路上でライヴをしようと思うきっかけを作ってくれた曲なのかもしれない。
それから「ア・イ・ウ・エ・オ」という身も蓋もないタイトルの歌があるが、こんな歌詞だ。
♪ふと気付くと陽が暮れてたのは あたり前の出来事
♪ふと気付くとキミが居てくれたのは うれしい出来事
♪何もなくても楽しいね こんな夜がいつもくれば
♪ア・イ・ウ・エ・オ サ・シ・ス・セ・ソ
思いっ切りラブソングじゃないか。あのミチロウがラブソング?しかもしみじみとしていい曲じゃないか。この曲も一瞬本気か?と疑ってしまった。しかしこれもライヴで聴いてやっとストンと腑に落ちた。
もう3年も彼のライヴを観ていないのか。かれこれ20年間、スターリンも含めると40年あまりライヴに行っていたのに。これからもう観ることができないのは淋しい話だ。
ミチロウの歌はスピーカーに繋いで聴くより、iPhoneから直接響いてくる声を聞く方が生々しく聴こえる。特にこんな時間は尚更だ。今は午前3時。ミチロウの声とギター以外何の音も聞こえない。
最後に不朽の名曲「天国への扉」(ボブ・ディランのカヴァー)の歌詞の一部を書いてミチロウを偲ぼう。この曲は10分以上ある曲でライヴの本編の最後に歌っていた。ソロになったばかりの時に作った歌で、ほとんどを即興で書いたというのだから驚きだ。そして彼の代表曲にまで成長していった。ライヴで聴くたびにヴァージョンアップされているのがよく分かった。そうなんだよな。ライヴに行くごとに新しい姿を必ず見せてくれるミチロウであった。
♪お前はひとりで死ぬのか 象のように隠れて死ぬのか
♪親に見守られて死ぬのか 恋人に忘れられて死ぬのか
♪クスリをやり過ぎて死ぬのか 身体じゅうアルコール漬けになって死ぬのか
♪つまんない人生だと思って死ぬのか サボテンのように砂漠に突っ立ったまま死ぬのか
♪ノックノックノッキングオンヘヴンスドア
・・・・・・・
♪おれは天国の扉を叩き壊す 叩き割っても叩き割っても壊れねえ天国の扉を
♪原爆のような痛みが何度も何度も襲ってくるのか
♪人間なんてただただ生きてるだけだと 思いながら明日のことばっかり考えて
♪ズボンのポケットの下で百円玉をガチガチガチガチ鳴らしてる
♪いっそこのままごみ箱の中でセックスをしよう
♪死んだ奴らが手を取って踊るよ
♪ノックノックノッキングオンヘヴンスドア