hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

マチダ先生

サカグチ先生と一緒に異動してきた2学期のある日、突然家に先生から電話がかかってきた。「あなたマチダ先生って知ってる?」と聞かれたので「名前だけは知っています。何だかすごい先生だということも」と答えると、サカグチ先生は「今度うちの学校に来てもらおうと思うの」と言う。「はあ。そうなんですか」と答えると「あなた、授業を見てもらわない?」と言われた。

 

「ええー!!何言っているんですか。今のあのクラスを見てもらうんですか?」と言うと「そうね。それもあるけど、hanamiさんのことを見てもらいたい気持ちの方が大きいかな」と言う。そして「他の先生の刺激になってもらいたいのよ」と続けた。「ぼくなんかの授業で他の人の刺激にはなりませんよ」と言うと「学校研究、今一つだと思ってない?」「はい。何かよく分からないなあ、とは思っています」「そういう風に思っている人はあなたしかいないよ」「はあ」「あなただけじゃなくて、6年の先生も見てもらおうと思っているの」「そうなんですか」。

 

今とてもじゃないけどクラスが大変過ぎて授業を公開するどころじゃないと、もう少しで言いそうになったが「考えさせてください」と言うだけにとどめた。しかしサカグチ先生は許してくれない。「今決めて」と言う。参ったな、と思いながらサカグチ先生のことだから許してくれるはずがないだろうと思った。「きっとあなたの力にもなると思うの」と続ける。僕は「分かりました」と返事をするしかなかった。

 

家に帰って来た妻に事の顛末を話すと、「あなた、マチダ先生っていったら日本一授業が上手い先生って言われているのよ。それで、授業を見ていて、だめだなこりゃ、って思ったら自分が前に出て授業を始めるのよ。大丈夫?」と言われ、さらにビビった。

 

次の朝、サカグチ先生にそのまま伝えると「見込みのある人ほど早く授業に入ってくるみたいよ」と言われた・・・。

 

公開授業当日を迎えた。昼になるとマチダ先生とお付きの先生が2人でやって来た。まずは挨拶を、と思い校長室を覗くとサカグチ先生においでおいでをされた。中に入り、マチダ先生に「今日はよろしくお願いします」と言った。「大変なクラスを持っているようだね」と言われ僕は、「はあ、毎日修行させてもらっています」と答えた。

 

授業は3分で乗っ取られた。その後の僕は子ども達と一緒にマチダ先生の話を聞いていた。何故勉強するのか、等を熱く語っておられた。僕はマチダ先生は腹の底から自分が思っていることを言葉にしていると感じた。それを聞いていて僕は震えが止まらなかった。メモする気にもならなかった。子ども達はたった1時間でその姿が変わった(どんどん発言するようになった)。

 

授業を終え、早速校長室に行った。「震えが止まらなかったです」と正直に言うと、もう一人の先生が「みんなマチダ先生の授業を見るとそう言うのよ」と仰った。6限目は6年の授業だった。マチダ先生は僕を呼び、隣に座らせた。そして「次、こうなるよ」等色々な言葉かけをしてくれた。何だか嬉しかった。

 

整理会で僕は、「職員が変わらないと子どもも変わらないと思う」というようなことを勇気を振り絞って言った。そして整理会が終わってもまだマチダ先生の話が聞きたくてその場に残っていた。そんな僕にマチダ先生は色々な話をしてくれた。整理会が終わってもまだ話が聞きたくてその場にいるなんてことは初めてだったのだが、最後に「もっと勉強して変わっていきたいです」と言ったらマチダ先生に「あなたは変わらなくてもいい」と言われた。今でも謎の言葉である。別に褒められていると思ったわけでもない。

 

それ以来マチダ先生の講義があると聞けば、行かせてもらい勉強させてもらった。そのたびに目から鱗の連続だった。

 

嬉しかったのは、僕が病休で休んでいた時にマチダ先生の勉強会に参加させてもらった時のことだ。僕が来ているのを見つけるとまたしてもマチダ先生は僕を呼び、隣に座らせ色々喋りかけてくれた。すごい先生ばかりが集まるこの勉強会に参加させてもらっただけでも緊張したのに、隣に座らせてもらった僕は恐縮することしきりだった。マチダ先生がみんなの前で話すときも、緊張している僕の方を向いて喋りかけてくれた。何でだろう。でもとても光栄なことだと思った。

 

それ以来マチダ先生とは会っていない。でも僕は授業を見てもらった日に強く思った。「こんなすごい先生に関わった以上、このままじゃいけない。変わらなければいけない」と。その気持ちは今でも変わらない。たとえ病気になってヘロヘロでも授業に関しては僕なりに一生懸命考えている。出会いって本当にかけがえのないものなんだな。

 

思えばサカグチ先生→ヒガシ先生→マチダ先生と出会った。そして次の年にオオカワ先生と出会った。そのことが今の僕を支えている。

 

 

今日は4月1日だ。