hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「恋人たち」と「はましぎ」

「恋人たち」というテレビドラマを観ていたのは、いつ頃だろうか。高校生あたりだろうか。根津甚八、桑名正博、大竹しのぶいしだあゆみ、田中裕子等が出演していたドラマだった。向田邦子ドラマよりもっと露骨な内容だったように思う。それを家族みんなで観ていた。その後小説(立原正秋著)の存在を知り、早速買って読んだ。

 

ちょっと調べてみるか。

 

「恋人たち」は、1980年(昭和55年)10月から放送されていた。全12話。俺、高校生。

 

笹本道太郎(根津甚八)は定職を持たず、剣道を教えたり家庭教師をしたりして暮らしている。まあダラダラ暮らしていたわけだ。女に対してあくどいこともやっていた。そんな道太郎がある日鎌倉で桑名正博演じる六太郎(ロク)と出会う。ロクは、鎌倉で「ローズハウス」という曖昧宿を経営している。

 

そのうちに道太郎はロクのことをかつて子どもの頃、人さらいに遭って行方不明になった弟ではないかと疑うようになる。急速に親密になる2人。

 

一方で道太郎は以前の恋人、土方典子(田中裕子)との関係を続けていたが、典子の妹である信子(大竹しのぶ)はその関係を知っていてなおかつそのことに疑問を持っていた。そして自分から道太郎に迫り、関係を持つようになる(後に結婚する。道太郎ははめられたわけだ)。

 

さっきも書いたが道太郎は、女に対してロクなことをしていない。兄の倫太郎の恋人であった津村悠子いしだあゆみ)に対して倫太郎が別れたいと言った時に、ロクに悠子をあてがう。すごいことするな。兄もそう思ったが、別れるためには、と思い我慢する。ロクと出会い、犯されることで何だか知らないが悠子は次第にロクに惹かれてゆく。

 

こんなロクデナシ(ややこしいな、ロクとロクデナシ)な道太郎だが、文章を日常的に書いていた。できたら押し入れに放り込み、「いつでも金になるから」と妻の信子に言って。そして朝、漁が終わった後に鰯のおこぼれをもらいにいくのだった。

 

道太郎とロクとの付き合いは更に深くなってゆく。会うたびに「お前、あの三角帽子のアイスを覚えているか?思い出したか?」と問う。ロクは道太郎を慕っていた。しかし、道太郎の言うことを受け入れてしまうと、今の自分が崩壊する。それを恐れたロクは道太郎の前から姿を消すのだった。

 

ドラマは面白かった。演じているのは名優ばかりだ。脇役も素晴らしい。

 

 

その後に読んだ原作は、ドラマで端折っていた部分が克明に描かれ(そりゃそうだ)ていた。道太郎が女の下腹についての考察をし、それを和歌にしたり文章にしたりしていたこと、ロクが竹べらで毎日自分の一物を叩き鍛えていたこと、など色々なエピソードが思い出された。

 

今、つらつらと読んでいても面白い(昔の本は字が小さくて行間も狭くて読みにくい・・・)。しかしアマゾンのレビューではえらく評価が低い。面白いと思ったのは僕の思い入れが強かったせいなのだろうか。まあ、若者はこんな小説には手を出さないだろうな。言ってみれば思いっ切り70年代している話だからな。つまりこの本は現代に生き残っていない本ということになる。

 

 村上春樹作「ノルウェィの森」で主人公ワタナベの先輩永沢は死後30年を経ていない作家の本は原則として読まない、信用できないから、と言う場面があった。今現在30年間劣化しない小説ってあるのだろうか?それこそ村上春樹?うーん、微妙だ(1985年刊行の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」は好きだ。でもまだ村上春樹は生きている)。現代ものではなく時代物の方が長持ちするようにも思う。宮部みゆき花村萬月の時代物などは残るかもしれない。

 

音楽はどうだろう?30年持つ現代の音楽ってあるのかな?60年代70年代のロック・ミュージックの中には間違いなくシンガーあるいはプレイヤーの死後50年経った今も色褪せない音楽はある、確実に。

 

文学と音楽。またモダンアートなど、表現の領域で作家の死後30年後も残るような作品を今の人類は創っているのだろうか?

 

何だか最後は大げさになってしまいましたな。