hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「YOU」-1

2月14日日曜日の「Eテレプレーバック」で僕にとっては懐かしい「YOU」という番組を取り上げていた。1984年6月9日放送の「『YOU』100回記念 気分はもう21世紀人」の再放送である。

 

冒頭で現在の糸井重里が語る。

 

「探せば面白いことあるよね、っていうのが一番大きなテーマだったんじゃないでしょうかね。だから元手もかからないし、キョロキョロと見回したら自分たちの身の周りにとっても面白いことがあるよね。で、それは主に人が持ってくるものですよね。人間が面白いっていうのは一番大きいのかなあ。」

 

そして1回目からの多彩なゲストがコメントする様子が流される。しっかしこの当時の糸井重里はとてもとても早口だ。テンパっているのか、間が怖いから喋っているのか、その両方なのかよく分からないが今観ると異様である。あるいはあの時代のトップだったから貪欲にインプットとアウトプットをしたかったのだろうか。とにかくキレッキレである。せわしないと言ってもいい。周りの人もそれにつられて早口である。そして「もっとこうすればいいことってない?」と出る人出る人に聞いてまわる。

 

100回目のこの番組はラジオ番組の「サウンドストリート」火曜日(坂本龍一)とのタイアップで行われた。

 

糸井が坂本を「YOU」の方へ呼んだり、自分が「サウンドストリート」の方へ行ったりとひっちゃかめっちゃかだったが、行ったり来たりするのは現在のヴァラエティ番組等の原型なのかなとも思った。

 

ゲストは多彩で「今各界で気になる人」を迎えていろいろ話を聞いていくわけだが、これは面白かった。現在に繋がっていく発言がたくさん聞かれた。

 

糸井重里がゲストに「21世紀に確かに地続きだっていう実感ってありますか?」と振る。

 

「流行がなくなった。物凄く新しくてびっくりするようなものがない気がする」「僕は今までにないものを作ろうとしてません」「面白いものがやりたい」「今までできなかったことをできるようになった気はする」「細分化しちゃっている気がする」「受けて送り手の引っくり返りが起こる」などのコメントが続く。原田知世(当時16歳!)もその中に入っていたが、健闘していた。鴻上尚史は「自分の書くものが一番面白かったのでやったらいつの間にか評判になった」と語る。

 

そして「送り手受けての話はまだ続くような気がするんで(続けます)。3年ほどだったらまだ受け手感覚じゃない?」と糸井。「それはずーっと受け手感覚でやっとかないと終わりますね」と答える鴻上。「いつのまにか自分が送り手に回っちゃうと駄目ですね。40、50歳の人がいつの間にか作る方になっちゃうとつまんないものになっちゃう」と続ける。

 

ここでサウンドストリートに出演していた坂本龍一中沢新一がゲストとして登場。興味深い話を繰り広げる。

 

坂本「展望と称するような明るい太い道なんてのはないんじゃないかな」

中沢「細い細い道しかないね」

糸井「それはこっちのゲストの人も思っているみたいでしたね」

坂本「太い道があったって認識がない人ももういるでしょうね。僕の感じだとね、この3年くらいかな、大まかに言って80年代に入って所謂過去から未来に続く一直線の太い道なんかはだんだん見えなくなったっていう感じが多いけど、どうですか?」

中沢「いろんな意味でメジャーってさ、なくなってきてるでしょ?だから昔だったらアヴァンギャルドみたいのって「やっちゃう」って意識があったわけじゃない?でも今はもうそういうのやるのは普通の人でしょ?それが凄くいいね」

坂本「水先案内ができにくいから、水先案内って言うのはプロの仕事でしょ?だから、さっきも話したようにプロとアマの差がなくなっちゃうんだよね。一直線の時間のレールがあるからね、AはBよりナウいとか、そういうことはありうるんだけど、もう音楽でもそういう状況ではなくてね、これをやったから新しいとかね、これをやったから古いとか全くないのね。だからそれぞれ勝手な時間を生きてて全体で時間を風呂敷で包んでいる状況だと思うのね」

糸井「学問もそういうとこある?」

中沢「ある、と思う。僕なんかことにそうなんだけど、間の過程を今までの人は順々に積み重ねていかないとこっちに飛躍しちゃいけないみたいなのっていう決まりがあったじゃない。だからしんどくって僕なんか好きじゃないんだけど、でも今わりと間の過程をすっ飛ばしていろんなものを同居させて風呂敷に包んじゃうっていうことが可能になっているんじゃないかな」

坂本「だから行き詰まりって言っても約束された未来、そういう展望はないってだけで、窒息しそうな行き詰まりとかってないんだよね。もっと空疎っていうかさ。」

糸井「空気の薄さは何となくあるけどね」

坂本「それね」

中沢「いや、でもね、薄くしなくちゃいけない時代なんだと思うよ」

 

 

                                 (続く)