hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

早川義夫は赤裸々に自分のことを語る

思えば早川義夫(現在73歳)は、ジャックス時代(彼が20歳くらいの時)に「からっぽの世界」で「僕、唖になっちゃった」、また「お前はひな菊」では「俺はお前と寝たいだけ」「お前の裸を汚したいのさ」と歌った人である。1968年のことであった。当時としては「ありえない」くらいの衝撃だったと思うが、残念なことに大きく取り上げられることはなかった。

 

他にも

「われた鏡の中から俺を探し出すんだ 雑音なしの俺を 裸になった俺の俺を」「ガラスの破片だ ふるえてくる焦りとふるえてくる怒りだ 見えないものが見えてきたときの」

                             (割れた鏡の中から)

 

「僕らは何かをしはじめようと 生きてるふりをしたくないために 時には死んだふりをしてみせる」「信じたいために親も恋人をもすべてのあらゆる大きなものを疑うのだ」

                          (ラブ・ジェネレーション

 

「心は変わりやすいけど ほんとは何もかわっちゃないのさ まわりだけがぐるぐるまわるのさ」                              

                               (堕天使ロック)

 

等、「自分にとってのホント」を歌っている。当時GSブームが日本を覆っていた時にである。(後に早川は「本当かどうかは美しいかどうかである」と書いている)

 

ジャックスは残念ながら約2年、2枚のアルバムを残して解散する。早川自身はソロアルバムを1枚発表している(1969年)。その後ジャックスが再評価された時に、僕はこのバンドと早川義夫を知ることになるのだが、この後もすごい。1994年に再び音楽活動を始めるのだ。ソロから約25年たってだよ。その間早川は本屋さんの主人として働いていた。その時の様子は「ぼくは本屋のおやじさん」(1982年)に記されている。25年振りに音楽活動を再開させた早川。僕はどんなCDが出来るのか楽しみにしていた。そしてそれは期待通りのものだった。20歳の時と変わらない声で早川義夫は昔の曲、新曲を歌っていた。

 

その後も早川義夫は音楽活動を続け、アルバムも発表している。それと同時に文章も書くようになった。エッセイ集「たましいの場所」(2002)は当時よく読み返していた。

 

しかしここ10年は彼の活動を追うことはなくなっていた。そんなところに、音楽誌で彼が本を出すというニュースを知ることになった。どうも奥さんを看取るエッセイらしい。僕は即決し、アマゾンで購入した。それが「女ともだち 静代に捧ぐ」という本だった。

 

この本は、第1部:日頃思っていること、第2部:しいこ(静代)との出会いから最後を看取るまでのこと、(1,2部とも書下ろし)第3部:公式サイトで発表された日記という構成になっている。

 

「たましいの場所」で知ることになるのだが(いや、ほんとはジャックスの歌を聴いていて知っていたのかもしれない)、彼は赤裸々に自分のことを語る。特に「女性を好きになること」を。「女ともだち」の第1部ではそのことについて書いている。ある時は風俗業を通して女性を好きになり、またある時はファンの女性に目をつけ好きになる。そのことを淡々と描いている。妻の静代さんはできた(?)人で、風俗業の女性に下着のプレゼントを早川に持たせたりする。そこら辺妻の静代さんの感情は正直よく分からない。しかし、早川義夫の気持ちは男性の僕としては非常によく分かる。つまり、「いつも誰かを好きになっていたい」のだ。自分も相手も結婚していようがいまいが関係なく。その気持ちは自分では抑えられなくて、また抑えるつもりもない。当然気持ちも身体も相手に捧げるし求めることになる。そしてこのことをなんと歌にまでしているのだ。そしてそして驚くべきことにできた歌を妻や娘に聴かせてもいるのだ。

 

こういう早川に「不倫してる」「浮気だ」と言うのは簡単だ。でもそうじゃないのだ。さっきも書いたように「誰かを好きになっていたい」、ただそれだけなのだ。きっと早川を攻める人と早川のような考えをする人とは深い溝があるのだろう。そして世間は「不倫」「浮気」組なのだろう。僕は断然早川義夫を支持したい派だ。

 

しかし、こういう男を旦那に持った静代さんの凄さにも驚かされるばかりだ。

 

第1部の最後はこんな文で締めくくられている。

 

「しい子との出会いから別れまでを書こうと思った。いろんなことがいっぱい思い出される。うまくまとまらない。けれど、書いている最中だけは元気になれる。書き上げなければ自分が終わらない気がした。僕が書きたいことは、しい子の面白さだ。こんなおかしな夫婦がいたということを書き留めておきたい。」

 

                                                                                                                        (続く)