hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

折り目だらけの本「フライ・ダディ・フライ」金城一紀著

本は大切に取り扱いながら読むものである。どうしても必要ならアンダーラインを引いてもよし、ただし叮嚀に引く。折り目をつけるなんて以ての外だ。というのが僕の本についてのルールだった。

 

しかし、40代を過ぎて本を売るようになってから、そのルールは崩れていった。その最たるものが「気になったページに折り目をつける」ことだった。

 

折り目だらけの本、のうちの1冊が「フライ・ダディ・フライ」である。

 

あらすじは・・・鈴木一はいたって平凡なサラリーマンだったが、ある日大切な一人娘を不良高校生(ボクシングの全国チャンピオンでもあった)石原に傷つけられた。包丁を持って復讐に向かった鈴木が出会ったのは・・・ザ・ゾンビーズの面々だった。そして・・・。はたして鈴木は大切なものを取り戻すことができるのか、というひと夏の冒険譚。

 

金城一紀は、「SP」で有名な作家として知られているのかな。その著作の中に「ザ・ゾンビーズ・シリーズ」があって本作はその2作目であり、映画化もされている(堤真一岡田准一等が出演)。ザ・ゾンビーズとは世の中(というか高校という社会)を半分ドロップアウトしたようなふざけた連中だが、だからこそ世の中を真摯に見つめ、欺瞞を暴き出し、そして面白おかしく生きていくぜ、という姿勢を貫くグループのことである。常に自分たちの周りに(自分たちにとって)面白そうなことがないかを探している。

 

復讐するためにザ・ゾンビーズにのせられて朴舜臣とともに不良高校生を素手で倒す訓練をする鈴木だが、朴はその訓練の中で有名人の言葉を引用しながらいいことをいっぱい言っているんだよね。そのページに折り目をつけることになるんだ。

 

もういっぱい引用しちゃおう。

 

「どうしてまだ何も起こってないことにビビってんだよ!恐怖は喜びとか悲しみとかと同じで、ただの感覚だぞ!弱っちい感覚に支配されるな!」

 

「力は頭の中で生まれて、育つんだ。頭でダメだと思った瞬間に、力は死ぬんだぜ」

 

「自分の想像力を信じられないぐらいなら、闘うのはやめろよ。でもって、おっさんは死ぬまで誰かの創造に踊らされながら生きていけばいい」

 

「どんな人間だって、闘う時は孤独なんだ。だから孤独であることさえ想像するんだ。それに、不安や悩みを抱えてない人間は、努力してない人間だよ。本当に強くなりたかったら、孤独や不安や悩みをねじ伏せる方法を想像して、学んでいくんだ。自分でな。『高いところへは他人によって運ばれてはならない。ひとの背中や頭に乗ってはならない』だ。」

 

先ほども書いたがところどころニーチェブルース・リー等の名言をカバーして朴が発した言葉だ。

 

「フライ・ダディ・フライ」はレコードでいうと、ジャケ買いだった。何となく面白そうだなと思って買ってみたら、その後も続く付き合いになった。

 

シリーズ3作目の「SPEED」も名作だ。女の子が主人公である。ストーリーはほぼ同じで、ひどい目に遭った主人公の成長物語である。そこにザ・ゾンビーズがまたふざけた、そして真摯な関わりを見せるのだ。どちらも読んでおいて損はない。大人も少年少女も。