hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

冬眠日記その6 ~給食の歌の巻~

給食の歌を作ろうとなった時に僕は、激しい曲よりのんびりした曲調がいいなと思っていた。そこでヒントになった(というかパクった)のはローザ・ルクセンブルグの「FLOWER」という曲だった。ボ・ディドリーのジャングル・リズムである。僕は「こんな感じ」と言ってお兄ちゃん(あ、前回のお兄ちゃん先生です)に「FLOWER」の前段を聴かせた。「なるほど」と答えたお兄ちゃんは僕からギターをもぎ取り、続きを弾き出した。「こんな感じでどうですか?」僕に異存はなかった。

 

曲はすんなりできたが、歌詞は最初難産した。どうしても最初の一言が出てこない。僕は「授業が終わって、さあ給食だ。準備をしよう」という感じにしたいとお兄ちゃんに言った。そして出てきた言葉が「国語算数理科社会」だった。これに合いの手を入れてはどうかと言う。じゃあ次は「体育音楽図工に家庭」だな、と言い合い「国語算数理科社会」→「できた~?」、「体育音楽図工に家庭」→「た~のしい~」と合の手を入れることにした。

 

そこからはスムーズに1番の歌詞ができた。その勢いでサビの歌詞まで作りその日は終わった。しかし、僕は念のためにマルチトラッカーを家に持ち帰っていた。何となく2番の歌詞を考えていたところで妻が帰ってきた。そこでピカーンと閃いた僕は、歌詞を書き始めた。そして妻に見せて、「これをやりたいんだけど、手伝ってくれる?」と頼み込んだ。それは、チーズが嫌いな子、それを何とかして食べさせようとする先生とが掛け合う歌詞だった。メロディはなく、寸劇のような形にしたいと言って無理矢理妻を先生役にしてその場で録音した。

 

妻は何だか乗り気になってきて、「ねえ、3番はどうするの?」と聞いてきた。「うーん・・・」と僕は考え込んでいたところまたしてもピカーンとアイディアが降りてきた。「1番は準備を始めようだし、2番は嫌いなものも少しずつ食べようだし、3番は食べ物にはこんな栄養があるよって言う風にしたらどうだろう?」妻は「なるほど、じゃあ炭水化物やたんぱく質の食べ物を考えればいいのね?」と言い、自分から「これはどう?」といろいろな食べ物を提案してきた。僕はそれを書き留め、形にした。それも2人で録音しておいた。

 

次の日の朝(授業に行く前だよ、全くもう、である)、すぐにお兄ちゃんに聴かせたところ、「夫婦で一体何やってるんですか?でもいい流れですね」と賛同してくれた。

 

そろそろ本格的に録音を始めたいと思っていた僕達は、他の先生にも登場してもらえたらいいね、と話し合っていた。そして一番声がかけやすく、一番歌が上手い先生に頼み込んで歌ってもらうことにした。チャチャっとドラムを打ち込み、ギターを入れると今度は保健室に移動して録音をすることにした。養護教諭は快く保健室を貸してくれた。

 

1番と2番を首尾よく録音した僕達は思案していた。「このままだと単調になるな。どうする?」と。会議室でグダグダ考えていると、突然お兄ちゃんがキーボードのボタンを触り出し、いろいろなパターンのリズムを鳴らし出した。キーボードに内蔵しているやつだ。それを聴いているうちに、どちらからともなく「これは使えるな」と言い出した。今までののんびりした曲調からいきなり、リズムの変わった激しいのをぶち込む。そしてまた最初ののんびりに戻る。いいんじゃない?「どれにする?」お兄ちゃんはだんだん悪乗りしていって「これなんかどう?」とふざけたパターンを鳴らし始めた。「うーん・・・」と考えていたが、そうかDJ風にやると面白いかな、と思い、やってみることにした。今までは2人ともヴォーカルとして登場していなかったので、僕がちょっと試しにやってみると言った。

 

「OK、じゃあ〇〇小っ子のみんな、今から言う4つのことができているかチェックしてみよう!」と言って、僕としては精一杯ノリノリで喋ってみたところ、またしてもお兄ちゃんが笑ってくれたのでOKとすることにした。これでひとつアクセントができた。ここまでで結構な数の先生にヴォーカルをとってもらったが、今度は子ども達にも登場してもらおうという邪魔くさいアイディアが浮かんでしまった。お兄ちゃんに伝え、僕は自分のクラスの子ども達に呼び掛けたところ何人もの子が名乗りを上げてくれた。

 

これは大変だった。3人の子が同時に歌うわけだが、ヘッドフォンをつけて歌うわけではない。こちらの指示に従って決められたセリフをリズムに乗せて歌うので、リズムが合うまでに何回も何回も挑戦した。途中で「これは無理かな」と諦めかけたが、お兄ちゃんは根気強くリズムのとり方を子ども達に伝えていた。ここが一番時間がかかったところだ。

 

最後は「作ってくれた人への感謝」「食べ物を運んでくれる人への感謝」をお兄ちゃんと交代で歌った。締めは「いっただっきま~す!」で終わりだ。完成した僕達はひとまず安心した。なかなかいい出来だ。

 

最後にお兄ちゃんが「ハンドクラップを入れましょうよ」と言ったので、休日に会い、2人でひたすらハンドクラップして、遂に完成した。ギター教室の先生にも聴いてもらった。「前より進化していますね。特にドラムとハンドクラップがいい味出してます」とコメントしてくれた。

 

曲を流した時の反響は大きかったな。子どもからも先生からも。ひとまず安心である。それにしてもよくこんなことができたものだ。音楽に詳しい同僚がいたこと、今よりのんびりした時代だったからこそできたのかもしれない。今だったら考えられない。とか言いつつ、前任校でも似たようなことはやったんだけどね。

 

お兄ちゃんとは学校を異動しても、もう一人の同僚を加え、「朝の歌」を作った。「そうじの歌」「給食の歌」「朝の歌」の3部作で僕の「学校で自分たちが作った音楽を流したい」欲は消え去った。