夏眠日記その15(バリ島④)

スズキさんが去って、つまらなくなった僕は日中まったりとホテルで過ごすことが続いた。そんなある日、ホテルのスタッフから「観光に行きませんか」と声をかけられた。感じとしては「どっか行こうぜ!」かな。仲間から言われたような気分になった僕は「いいよ」と即答した。それが間違えだったと分かったのは次の日に「どっか」に行ってからだった。

 

火山やら寺院やらよく分からないお店やらに連れていかれた僕は「腹が減った」と仲間に言った。仲間は3人いた。「分かった。もう少しで着くよ」と言った彼らが連れて行ったところは、明らかに観光客用のレストランだった。そこで、何やら店の人と話してからテーブルについた。

 

しばらくして料理が出てきた。僕は昨日書いたように日頃市場で食事を摂っていたから、びっくりたまげた。次々とお皿が運ばれてくるんだもの。目を丸くしている僕に「早く食べろよ」と促す「仲間」。僕が食べ始めると、「仲間」はすっと横の端っこの席を陣取り、同じものを食べ始めた。もうお分かりだろう。僕がいかにおぼこかったかを。

 

「仲間」は仲間ではなかった。バリの自分たちのホテルに泊まっている「日本人をカモにする人」だった。それからは食べる気も失せ、食後に「次は〇〇に行くよ!」という彼らには「もう帰る」という言葉しか出てこなかった。料金交渉もせず、ただ言われるがままに動いていた自分が恥ずかしかったし、情けなかった。「俺って日本にいる時と全然変わってないな」とも思った。そんな僕のことはお構いなしに彼らは喋っていた。料金を聞いて、ホテルを出る時にまとめて払うとだけ言って自分の部屋に戻った。

 

しばらくして、まあこれも勉強のうちだ、と思い直し、すぐに市場に行ってアグンとくだらないやりとりをしてその日はやり過ごした。その日以来彼らとは距離を取るようになった(1回だけ彼らの一人と夜に出かけたことがある)。それから(どこの国に行っても、どんな小さなものでも)値段交渉は必ずすることになった。

 

 

あとは何を書こうか。うーんとガムランとマラソンと最後の夜かな。今日中に全部書けないな。

 

ラソンのことを書こう。

 

ウブドに着いてから、比較的早い時期に僕は、バリマラソンなるものが開催されることを知った。多分チラシか何かで見たのだろう。日東紅茶主催のマラソン大会である。ヌサドゥアという超高級ビーチで行われるという。これに出たい、と思った僕は(記憶は定かではないが)参加の申し込みをして、ホテル(超高級の中でも一番安いホテル。初めてバリでドルを使った)の予約を(多分自分で)した。勿論フルマラソンには出られないから、10㎞コースにした。普段から運動をしていたわけではないが、何とか走れるだろうと思っていた。

 

ウブドを出てヌサドゥアに着いた僕はびっくりたまげた。バカでかいホテルが並んでいるんだもん。こんなの日本でも見たことなかった。僕の泊まるホテルはどこだ?と思っていると、よかった、こじんまりしている。他のホテルと比べると、だけど。部屋に入ったがすることがないので、ビーチに出た。クタやレギャンとは大違いで、専用のビーチパラソルが並んでいる。でも海は海だしなあ、変わらないや、と思い部屋に戻ってぼうっとしていた。

 

レース前日のパーティーはパスして夕食を摂ろうとしたが、どこで食べればいいかも分からない。レストランを見つけてもドレスコードがありそうだ。僕はルームサービスで食事を済ませようとしたがこれもバカ高い。こんなの食べられないぜ、と思った僕はホテル内で見つけたコンビニみたいなところでお粥を買った。それをホテルのスタッフに頼んで温めてもらって食べた。とにかく僕は走るためだけに来たんだから、と思いながら早めに寝た。

 

当日は今では考えられないが、スッキリと目が覚めた。さあ、走るぞ、という気持ちになった。現地へは専用のバスで行った。いよいよ生まれて初めてのマラソンが始まろうとしている。