hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「命をかけて悪と対話する」 悪について―2

白石「師匠である若松孝二監督に『モノを作る人間は権力側から世の中を見ちゃいけない』と言われた」

 

白石は、ある映画祭で自作の映画を発表する予定をキャンセルした。従軍慰安婦についてのドキュメンタリー映画が訴訟により係争中になっていることを理由に一旦その映画祭での上映が見送られたことに対する抗議だった。

 

白石「ここ最近の表現の萎縮の連鎖をどこかで表現者の末端にいる者として止めなければいけないという思いでこういう決断にいたりました」と記者会見で話す白石。

 

丸山「表現に自由に対して規制が入ってくること、そこはこの先も戦うんですか?」

 

白石「それはもう声を上げ続けるしかないんじゃないですか。それは歴史を見てもそうだし、香港を見てても言いたいことが言えない世の中にあっという間になる。」

 

丸山「早かったですもんね」

 

白石「早い。あれだけ市民とか学生、若い人達がみんなで戦ったのに、やっぱりああいう社会になってしまうっていうのは他人事ではないと思ってます。今の日本もほんとに危ういところにいると僕は思っているので。言えるうちに言っておかないと多分後悔する。」

 

丸山「もしかしたら今の子ども世代が大人になる前に何か大きな規制がかかってもおかしくない」

 

白石「と思います。社会全体の方向として息苦しくなっているなっていうのはすごく感じてますね。でもね、僕結構若い人達の力っていうのを信じていて、どっかで日本の社会が危ういところにいったら、ちょっと前の香港のようになるんじゃないかという期待もすごくあって。暴動が起きるとかじゃなくてちゃんと声を上げて自由の戦いができる人たちが若い人たちの中にはまだまだいるんじゃないかっていうことにはすごく期待しているし、見たいなって思っているんですよね」 

 

後半は舞台をスイッチ。

 

白石「ギャングとかそういう人とすぐ馴染むじゃないですか?そのコツは?」

 

丸山「心がけていることは、取材に行くときの服装が普段の服装と変わらないっていうことです。特別な感じで構えて来てないよ、っていう。防弾チョッキを着てスラムに行って皆さんの生活を聞かせて下さいって言ったら、バカにしてんのかってなるじゃないですか。」

 

丸山「あとは、興味があるっていうのをすごく伝える。撮ってない時も『これ何?食べていい?』とかそういうことやってると、この人ほんとに興味を持って来てるんだっていう風になるんで。自分達に興味を持って遠くから来た人を割と無碍にしないんですよ。だから人として同じと思って接するようにしています」

 

白石「カメラを持ち込むと明らかに警戒感が増すじゃないですか?」

 

丸山「隠しカメラじゃなくて堂々と交渉するようにしています。後ろめたさがないことが割と勝ちを生むことがあります。だって見たいもん、見せてよ、お願いとか、強気で出られるんですよ。ちょっとずるい言い方になるかもしれないけど、ほんとのことは言わないけどウソも言わないんです。それはすごく気をつけていますね。ウソって言葉を超えるんですよね。ウソつくとバレるんです、不思議なもんで。だからこれは気をつけています」

 

白石「よく体験体験って言うじゃないですか。外から覗くだけじゃなくて『中に入りたい』って欲がある?」

 

丸山「そうなんですよ。そこが一番だと思います。角度を変えると見えてくるとか、大手メディアが取材しないであろう部分とかを探すっていうのが僕のやり方でもあります。特に食べたり飲んだりとか五感に関わることは匂いとかそういうのって、あとからデータをいくらもらっても再現して書けないです。だったら飛び込んじゃったほうがいい。味覚とか嗅覚とかはどんなに説明されても分からない。食べちゃった方が早い」

 

丸山「(メキシコに行った時)単純な善悪であの世界観を切り取ると混乱しかない」

 

白石「いろんな取材をしていっても悪に対する気持ちは変わらない?」

 

丸山「本当の悪人って難しいなって思ってて、自警団の子に『誰と戦うの?』って聞いたら『警察』って答えて『見つけたら躊躇なく殺す』って。すごくいびつじゃないですか」

 

白石「そういうことも含めて映画作りながら人間って一体何なの?ってことを見つけていきたいって風には思ったりしてるんですけどね」

 

丸山「悪って何だろうって思わされる事例があって突きつけられることが多くて。例えばきつい仕事から逃れるために麻薬をやってる人がいる。でも麻薬をやることって世界的には『悪』じゃないですか。でも彼らにとっては『救い』なんです。僕の想像にない人たちがいるから、僕は日本で思っている『悪』とか『善』という価値観をあまり持ち込まないようにしている」

 

丸山「どうしたらジャーナリストとして生きていけるのか考えた時に『命かければいいんじゃないの』って思ったんですよね。周りが危ない、殺されるかもしれないってところに飛び込むって命をかけることじゃないですか。そうすると不思議とオファーが来るんですよね。だから『命をかける』っていうことはあの当時の僕としては普通のことだったんですよ。それしかやることなかったんで。もしあの時命をかけなかったら今の自分はないと思う。白石さんもでしょ?」

 

白石「腹括る瞬間ってありますよね」

 

 

うーん、いいものを観させてもらった。NHK、いいな。