hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「悪の中の人間を撮る」 悪についてー1

3年前は教員免許を更新する年だった。1回目の講義は「歴史」だった。歴史は好きだが、狭い大学の教室に入って大勢で講義を受けることには気乗りしなかった。しかしその講義が久しぶりに興奮する内容だった。「遊動生活から定住生活へ」がテーマで人類の生活様式の変遷を教授が紐解いていく。僕はまず「遊動生活」という言葉からして知らなかった。家に帰った僕は早速本を調べ、購入手続きをした。そして興奮気味に妻に説明したが妻はあまり興味がない様子で聞いていた。

 

次の講習は「哲学」だった。西洋・東洋哲学の歴史を概観する講義だったがさっぱり分からなかった。哲学科出身だというのに。しかし、この先生はどうも善と悪についてを大切にして話しているのかなと思った。その時DVDも紹介された僕はとっさにそのタイトルをメモしておいた。講義最後のレポートは何を書けばいいのかさっぱり分からなかった。仕方がないので僕が思う「善と悪」について延々と書いてお終いにした。

 

帰ってすぐにDVDを観たらなんとその映画は「善と悪」をテーマにした作品だった。やったぜ!と思った僕は早速妻に話したがこれにもあまり興味がない様子だった。

 

あとの講義は、本格的にさっぱり分からない内容だった。でも無事免許更新することができた。まあ更新できなきゃ大変なことになるんだけどね。出張が苦手になっていた僕にとっては最初の2回以外は苦行以外の何物でもなかった。

 

 

さあ、無理矢理こじつけ作戦だ。最近はよくNHKの番組を観て記事にしているが(記事のために観ているわけではないが)、今回は「SWITCHインタビュー 達人達」~丸山ゴンザレス(危険地帯ジャーナリスト)×白石和彌(映画監督)である。

 

 

丸山ゴンザレスは、今はなき「クレイジージャーニー」で知った。世界中のあらゆる危険地帯にずかずかと入り込み、好奇心丸出しで質問し、わけの分からないものを食べる丸山のことは好きだった。

 

対する白石和彌の映画を僕は観たことがない。「白石は悪人を描かせたら天下一品」だそうである。今回は丸山が白石を指名した。

 

「悪とか悪いとか、そこはまあ一つのキャラクターだとか考え方でしかないと思っていて、善悪二項対立とか単純化っていうのは白石映画では出てこない。出てきても崩れ去るものとして扱っていると思う。リアルな現場の中で僕が引いてきた線とかを見極めたい。彼の思っている世界を覗いてみたいです」と丸山は語った。

 

「悪を見てきた男と悪を描いてきた男」「悪の中の人間を撮る」「命をかけて悪と対話する」という煽り文句から本格的に番組が始まった。

 

丸山「悪を描く時に心がけていることってありますか?」

 

白石「(悪は)誰の中にでも存在するものだし、でも完全な悪の人って僕はまだ見たことがない。(映画で)ピエール瀧扮する悪人はコミュニティ外だったら平気で人を殺すんだけど、ふと家に帰るとなんか子ども達に優しくてきっといいおじさんだったりするじゃないですか。ほんとの悪っていうのはそういうもんじゃないか。だからよく言うのは午前中に自分の母親を殺しちゃって逃亡してた人が、午後困っている老人を助けちゃったりとか。それが人間だと思うんですよね。そういう思いもしない状況の中で人っていろいろ変わっていくんで、その辺を描いていきたい」

 

白石「単なる一面的な悪じゃなくて、多面的な人間、悪ければ悪いほど多面的な人間を見せるようにしてますね」

 

白石「さっきも言ったように悪い人にもいいところがあるのと同じようにいい人というか真面目な人でも悪いところがあったり汚いところがあったりするっていうのが基本的な作り方です」

 

丸山「現実に起きた事件を映画化するっていうのは監督は意識されているんですか?」

 

白石「めちゃめちゃ意識してますね。事件って何かしら不幸になった人がいたりとか、まあ当人もそうなんでしょうけど。でもだからこそその中で右往左往している人間が滑稽であり、僕にとっては魅力的に感じるんです」

 

白石「今日本映画って社会を描かないじゃないですか。よく映画って社会を映す鏡って言うじゃないですか。ちょっと前に気づいたのは映画界が社会を映さないんじゃなくて日本ていう国の国民とか民衆が社会に興味を失っていないかっていうことが社会派の映画が作れるか作れないかに大きく関わっていると思います」