hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「愛と哀しみのボレロ」の18分間

音楽に合わせて右手をゆっくり上げて頭の近くまで来たらクルッと手首を返す。そして手の平を胸から這わせて腰辺りまでゆっくり下げる。今度は左手を同じように動かす。次は横隔膜辺りを前後に動かす。そして横隔膜を動かしながらさっきの動きを両手同時にする。続けて少し前にかがんで両手首を合わせて足は前後に置き、体も前後に揺らす。後ろ足(左足)はつま先立ちだ。この体を前後に動かすのが通奏低音のように踊りの基調となっている。

 

これがジョルジュ・ドン「ボレロ」の最初の動きだ。いやあ描写力ないなぁ、俺は。しかしこの動きを見るだけでもう世界が変わる。心に衝撃が走る。心臓に穴が空く。

 

「愛と哀しみのボレロ」(1981)。185分の大作だ。その大作のほんの18分だけ(間にオペラ座で踊るシーンあり)を僕は何十年もの間何十回も観続けている。ビデオでもDVDでも。

 

年末にまたその18分を観てから、僕は決心してジョルジュ・ドン、というか20世紀バレエ団のDVDを大枚はたいて購入した。「愛と哀しみのボレロ」以外の「ボレロ」を観られるだけで単純に嬉しかった。

 

今は2つを見比べて楽しんでいる。

 

DVDの方は瞬きしてないんじゃないかというくらい集中して踊っているいる様子がうかがえる。そして演奏は勢いがある。それにつられてかジョルジュ・ドンの動きも溌溂としている。丁度出荷し始めの果実のような踊りだ。

 

この後に映画ヴァージョンの方を観ると、ジョルジュの踊りは猫のようにしなやかである。果実としては熟れていて食べ頃だ。30代前半の頃だろう。演奏はDVDヴァージョンより落ち着いて聴こえる。どちらも曲の最終場面のクライマックスには思いっ切り爆発している。ほんと、カッコいいな。でもその最終場面に向けて抑えて踊るところもカッコいい。要するに一度観始めたら10数分間動けないのだ。

 

 

それにしてもあのメイクである。あれを見て一発でKOされちゃった。誰が発明したんだろうか。昔からあったのだろうか。僕はメイクといえば遠藤ミチロウ忌野清志郎の人だから、「間違いなく彼らはジョルジュ・ドンのメイクを参考にしている」と思ったものだ。

 

実際にバレエを観た経験もないし(山岸凉子の「アラベスク」「テレプシコーラ」は好きだ)、詳しくもないのだが、ジョルジュ・ドンの「ボレロ」だけはすごく好きだ。僕のような人は多いのではないだろうか。シルヴィ・ギエムの「ボレロ」も観たし、良かったのだがやはりぼくにとってはジョルジュ・ドンの「ボレロ」なんだよなあ。

 

僕は、「ロックだなあ」と思っていつも観ている。