hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「何で俺の思っていることがここに書いてあるんだ?」

本を読んでいてそう思ったことはありませんか?僕は、大学生の時によしもとばななの「キッチン」を読んでそう思いました。何故か。今ならこう答えるでしょう。「文体がそうさせているのだ。」と。登場人物のキャラ設定が面白かった、ストーリーが自分と重なった、そういう読書体験は勿論ぼくにもあります。でも「キッチン」は違いました。
 

とにかく読んでいて気持ちいい。いちいち考えなくてもスコンスコンと言葉、文章が頭に入ってくる。今までは、どちらかというとストーリーを追いかけ、その世界に入り込んでいく、というのが僕にとっての読書でした。でもキッチンはそんなこと(ストーリーは面白かったですよ。)関係なく、ただただ読み進めるにつれ、何で俺の思っていることがここに書いてあるんだ?と思わせる小説でした。それが気持ちよさにつながったんだと思います。前述したように「文体」がそうさせていたと思います。
 

では、文体とは何か?Wikipediaには、「文章、散文のスタイルのこと。文芸評論の研究対象となり、時にはある作品の背後に作家性を見出す際の根拠の一つとされる。」とあります。

 

「キッチン」の文体に作家性を見出す。うーん、よく分からない。同世代性というならまだ分かる。ちょうど同い年だったし。でもそれだけでここまで気持ちのいい文章を書けるものなのだろうか。
 

 

同じように読んでいて気持ちいいのは、村上春樹花村萬月松村雄策佐藤正午です。みんな大御所だが僕にとってとてもしっくりする文体で小説が書かれている。この5人に共通点はあるのだろうか。うーん、難しい。もしかしたらみんな定義のはっきりしない言葉は遣っていないんじゃないかな。そして彼らの文章には、「客観」という言葉が似合う。文体でその物語の世界観を作っている。
 

 

文体を巡る謎はまだ解けないが、考えることは楽しい。僕にも文体と呼べるものがきっとあるのだろうが、意識して書いていない。そこがプロの作家との違いなんだろうな。

 

いずれにせよ、こんな本と出会えるのは、とても幸せなことだと思う。