三回目〜再会と別れ〜

 あれから2週間が過ぎた。私はまた酒を飲むようになっていた。心のどこかでもう一度チアイに会いたい、と思いながら。
 17時30分。さあ、宴会の時間だ。
 コン、コン、コン、とノックの音が三回聞こえた。チアイ?いや、この音はチアイじゃない。もっと現実的な音だ。生身の人間がノックしている音だ。
誰だろう。訝しげに思いながらドアを開けた。
 チアイが立っていた。そう、立っていたのだ。生身の人間として。この世界の人間と同じ存在として。
「チアイ。」私が呼ぶと、チアイはするっとドアを通り、玄関に立った。私達は向き合う形になった。と、突然チアイが私に抱きついてきた。「パトロールしに来たの。」と囁くとさらに力を込めて私を抱いた。私もチアイを抱き締めていた。左手で頭のてっぺんを撫でながら「俺が犬だったら今すごく尻尾を振っていると思う。」と正直に言ったらチアイは「私が犬だったら、うれションね。」と私の胸に顔をうずめて笑った。どれくらい抱き合っていただろうか。「部屋に入ろう。」私は言った。チアイは素直についてくる。愛おしくてたまらない。その気持ちを隠し、ソファに2人で座った。再び向き合った。今度もチアイの方からキスをしてきた。最初はついばむようなキスだったが、少しずつ唇と唇が重なり合う時間が長くなってくる。チアイは舌を絡めてきた。それに応え、私も舌を出した。絡み合う舌の感触だけに集中していた。永遠、を感じた。私は、チアイが着ているブラウスのボタンを一つずつゆっくりとはずしていった。前を広げ、彼女の素肌をさぐる。少しずつ服を剥いでいくのは私の好みではないので、「チアイ、ブラウスを脱いでくれるかな?ブラジャーも。」と耳元で囁くとチアイはこくんと頷いてブラウスを脱いだ。そして後ろに手を回しブラジャーもはずした。上半身裸のチアイがいた。私は少し離れてじっくりと眺めた。どこにも触らずに「寝室へ行こう」と言って一緒に部屋を移動した。ベッドをはさんで向き合った。「『俺』も脱いで。」と言われたので、素直にシャツとズボンとパンツを脱いだ。私の性器は硬く勃起していた。チアイはすでに全裸になっていた。布団をどかし、二人で横たわった。「俺のやり方が気に入るといいんだけど。」と言い、再びキスをした。キスをしながら鎖骨辺りや腕、首筋や髪の生え際をさわさわと愛撫した。「さわさわ、好き?」と耳元で聞くと「うん。」と頷いたのでそのまま進めることにした。乳房や脇腹、お臍の周辺をさわさわ愛撫をした。乳首にはまだ触らなかった。チアイは「うーん」と言いながらリラックスしているように見えた。右手で脇腹をさわさわしながら私は左手でいきなり乳首そっと摘んだ。「うっ」チアイが身体を仰け反らせた。乳首はもう硬くなっていた。そして乳首の根元から先端に向けて少しずつ動かしていった。先端までたどり着くとまた根元から同じ事を繰り返した。さっきと同じようにそうっと、を心がけた。「あっ」「あっ」とチアイは声を出していた。摘む力に強弱もつけた。根元を摘みながら先端を舌で舐めた。またチアイは声を出した。指をはずし乳首全体を口に含んだ。乳首を吸いながら舌も動かした。それから乳首の側面に指を添え、その反対側を軽く甘噛みした。右手は左の乳首を摘んでいる。チアイは声を出し続けている。私は慈しみの気持ちがこみ上がってくる。同じ事を左の乳首にもした。丁寧に丁寧に乳首を愛撫した。それから再び脇腹や腕をさわさわ愛撫した。私はチアイの足の間にいた。そしてチアイに「もう少し足を広げて。」と言った。チアイは私の顔を見ていたがやがて顔を手で覆いゆっくり足を広げていった。足の付け根を愛撫しながら時々性器の周りも触った。私は右手の人差し指に自分の唾をたっぷりつけ、チアイの包皮で覆われたクリトリスを触った。ぶるぶる震えながらチアイは私を見ている。左手で頬を触ったらとても熱かった。なおも包皮の上からの愛撫を続けた。左手で髪を撫でながら。「舐めるね。」とチアイに言って私は彼女の股にもぐり込んだ。性器はぬるぬるになっていた。太股から少しずつ性器に近づくように舐め、大陰唇に到達すると、再びチアイは身体を仰け反らせた。性器と尻の穴の間からゆっくり舐め上げ、尿道付近で止めた。その動作を何回かしながら時折クリトリスも舐めると、チアイは腰を規則的に動かし始めた。私はその動きに合わせて、また時にずらして舌を動かした。どれくらい続けていただろう。その間チアイは、「天才」とか「むかつく」などといいながら喘いでいた。そして、私はクリトリスの皮を剝き、クリトリスだけ舐めることに集中した。小さなクリトリスだった。クリトリスの下の方から小さな動きで舌を動かした。私は機械になった。同じ場所を同じスピードで舐めているとやがて「イク」と切羽詰まったチアイの声が聞こえた。そして身体を激しく仰け反らせ絶頂に達した。よかった。私はまだ女性をイカせることができる。次はクリトリスの側面や上の方を同じように刺激した。同じ場所を同じスピードで。そのたびごとにチアイは身体を仰け反らせた。激しい喘ぎ声を出し続けている。そして今度は口と舌と鼻で性器全体を何度も何度も舐め回した。口と鼻の周りがぬるぬるになった。チアイは「何それ?」「ダメ」と再び喘いでいる。そして私はクリトリスを舐めながら右手の中指を性器の中に入れた。中はもうぬるぬるだった。指を第一関節まで入れ、ゆっくり出し入れした。時々少し奥まで入れた。「それずるい。」とチアイは弱々しく言ったが私は無視した。そして少しずつ指を深く入れていった。浅く、中くらい、深くの3段階で指を動かした。その間もクリトリスは舐め続けている。縦や横に舐めることでチアイは何回絶頂に達したのだろう。私は指を深く入れ軽く第二関節を曲げた。チアイの身体が再び仰け反る。次に中くらいのところまで指を戻し、上の膣壁を擦った。チアイの反応を見ながら。チアイの反応を見るのは嬉しかった。感じてくれているんだ、と思うと更に指の動かし方の創意工夫に勤しんだ。すると突然「交代」と言いながらチアイは身体を入れ替えた。私は仰向けになった。チアイが私の足の間に身体を入れ、乳首を触ってきた。そして、俺を指さし、「『俺』はクンニマスターだね。」と笑った。私は誇らしい顔を作り、「男子たるものクンニマスターでないと。」と言った。喋りながらも私の乳首は嬲られている。乳首はあまり感じないのだが、チアイが舐め始めると腕に鳥肌が立った。ぞわぞわする。気持ちいい。両方の乳首を舐め、摘み、それからチアイは私の股間に顔を埋めた。そうっと私の性器を持ち上げ私の睾丸を舐め始めた。時々口に含んだりもした。睾丸も私はあまり感じないのだが、チアイの口の中の熱さが心地よかった。睾丸を舐められるのを見ながら私は早く性器を舐めて欲しいと思っていた。やっとチアイの唇が私の性器に触れた。そして性器の裏側をそろりそろりと舐め始めた。私は「うっ」と声を洩らした。そしてチアイの唇が亀頭を咥えたとき今度は私の方が身体を仰け反らせ枕に頭を打ち付けていた。私は「すごい。」と「気持ちいい。」という言葉しか出てこなかった。チアイはゆっくりと口を上下させている。射精させようという意志のない舐め方だ。そして私に見えないように手に唾をたっぷりつけてゆるりゆるりと亀頭をしごいてくる。口と手の両方で性器を刺激されている間私は、身体を反らせて呻きっぱなしだった。ずっとそれをしていてほしいと思った。そしてチアイはそれをずっとしてくれた。今度は身体を私の方に向け乳首を舐めながらゆっくりと性器をしごき始めた。そのしごき方も射精に導こうとするものではなかった。名残惜しかったが私の方から身体を起こし、「寝て。」とチアイに言った。素直に身体を横にしたチアイの足を開きゆっくりと性器を挿入した。チアイは喘いでいる。私は浅めに挿入して腰を動かした。そして膣の上側に自分の性器が擦れるように動いた。乳首を愛撫することも忘れなかった。その間チアイはずっと『すごい。』『ビリビリする。』と言っていた。それから、チアイの身体に覆い被さり後頭部に手を入れ抱き締めた。ゆっくりと性器を深く挿入していった。チアイも私の身体を抱き締める。私は激しく腰を振った。私達はおのおのが呻き、喘いでいた。やがて射精の兆しが見えてきた。ちょっと早すぎる。「チアイ、もうイキそうだ。」「うん、いいよ。おいで。」私は吠えながら腰を動かした。そして、射精の痙攣がきた。チアイも同じように達したようだ。よかった。一緒にイケて。しばらく身体を重ね合っていた。私の性器が小さくなってきた頃、私はチアイの身体から離れた。精液を拭いた後チアイが身体を寄せてきた。私の胸に顔をのせた。そのまま何も言わずにじっとしていた。どれくらい時が過ぎたのだろう。チアイは顔を上げて私に言った。「『俺』は400なのよ。」「400?なんだそれ。」「私はあれからあなたが好みそうな音楽を片っ端から聴いたわ。もう忘れた?Shing02を。」ああ、Shing02か。懐かしいな。私のスマホにはちゃんと入っている。彼の曲が。400。フォーハンドレッドか。「世の中の嘘800 真っ二つに切る言葉か。」「そう。あなたが疲れ、悲しんでいるのは、世の中の嘘800が見えるから。学校での欺瞞が見えるから。そしてそれを何とかしたいけれど何ともできないと感じているから。そして一人だから。」「そうかもしれない。」「答えが出たわね。」「俺はどうすればいいんだ。神様に聞いてきたんだろ?」「今は言わない。余韻を楽しみたいの。」それは私も同感だ。また二人で抱き合った。何も喋らなかった。喋る必要がなかった。そう言えば眠剤を飲まなければ。「薬、飲んでくるね。」「うん。」思い切って私は言った。「今夜はここにいてくれるの?」ニヤっと笑ったチアイはいたずらっぽく「いてほしいの?」と言った。私は素直に「いてほしい。」と答えた。私はどんどん素直になっている。「心配しないで。『俺』が寝てもいるから。」

朝の5時30分に私は目覚めた。2週間ぶりに途中覚醒のない眠りだった。横にチアイはいない。もう帰ったのだろうか。それにしてもなぜ、チアイは人間の姿になって、昨夜のようなことをしたのだろうか。私への憐れみか。それとも慰めか。どちらにしてもそこには私に対する愛情は含まれていない、と思った。思うようにした。
リビングに行くと、チアイが妖精の姿に変わってテーブルの上にいる。子ども達もいる。ハジメ、タケル、スズカ、マナ、レン、シンヤ。なんだ、君達も妖精だったのか。何かカードを持ってるぞ。でも小さくてよく見えない。近づいて目を凝らすと何とか読むことができた。
ハジメは、「Still Alive 『俺』はまだ生きている。」
スズカは、「いつでも真っ直ぐ歩けるか。」
マナは、「湖にドボンかもしれないぜ。」
レンは、「けれど『俺』の往く道は変わらない。」
そしてシンヤは、「サイの角のようにただ独り歩け。」
最後にチアイが、「『俺』はフォーハンドレッド。」
と書いてあるカードだ。
何だ、吉井和哉The Blue Heartsと The Blue HerbShing02じゃないか、と私は思いながらみんなにお礼を言った。
「みんな、ありがとう。チアイ、これが答えなんだな。」
「そうよ。これが答え。」
「分かったよ。俺もそう思う。それにしても随分研究してきたな。俺が好きなミュージシャン、大体聴いてきただろ?」
「ええ。この2週間あなたのことばかり考えてこういう結果になったの。」
チアイは手を出した。握手か。私は人差し指を出して握手した。子ども達とも同じように握手した。「先生、授業楽しかったよ。」と口々に言ってくれた。レンは、「先生のやり方、解読したよ。」と言ってくれた。「楽しかった。」か。私にとって最高の賛辞だな。
「じゃあ、行くね。」
チアイ達はふわふわと宙を舞い始めた。そして順番に消えていった。最後にチアイの声だけが私の耳に届いた。
「昨日の夜のことは忘れない。私もフォーハンドレッドになるわ。」
そうか。チアイと私は、同志なのか。チアイもきっと私と同じように闘うのだ。妖精界で。
ありがとう。
『俺』に仲間ができたんだ。
『俺』はこれからも独りで歩み続けるが、一人じゃないんだ。どんな道だろうとも。