3日間記事を書くのをサボっていたが、やっと書いてみようかという気持ちになった。その間何をしていたかというと、ひたすらジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」(1970)を聴いていた。
このアルバムは、若い時に一聴して「ふうん」と思っただけだったので、購入する時には多少迷ったが、「世間から超名盤と言われている作品なんだし、いっちょう買ってみるか」と決心したわけである。
何だかんだ言って僕は、ジョージのアルバムを3枚持っている。そのうち2枚(「クラウドナイン」と「慈愛の輝き」)はジョージの音楽の素晴らしさがよく伝わる好盤だ。「オール・シングス・・・」はどう聴こえるだろう。
結論は、素晴らしいの一言である。A面をターンテーブルに乗せて聴き始めてからもうウットリである。そのまま、最後の6面まで一気に聴いてしまった。それを何回も繰り返してきたというわけだ。時間がかかってしようがないが、幸せ時間なんだからいいんだ、それで。
ちょっとだけ基本情報を書いておこう。
「『オール・シングス・マスト・パス』は、1970年11月27日に発売されたジョージ・ハリスンのスタジオ・アルバム。LP3枚組というボリュームの大作で、全英・全米ともに1位を記録した彼のソロ・キャリアにおける代表作である。」
「録音は、1970年5月26日から10月まで。アビイ・ロード・スタジオなどで行われた」
「時間は103分33秒」
「ビートルズ在籍中から制作していた楽曲を中心に収録したアルバムで、ハリソンの作詞の実力が発揮されている。1970年代の幕開けを飾るロックの金字塔とも評された。アルバム全体を通して、ハリスンが崇拝する神への念を素直に表現している。オリジナルLPのディスク3は«アップル・ジャム»と呼ばれ、ハリスンらを中心としたジャム・セッションの様子を収録」
「エリック・クラプトンを中心としたデレク・アンド・ドミノスのメンバーやリンゴ・スター、バッドフィンガー、ビリー・プレストン等のミュージシャンが本作に参加した」
「本アルバムは『全体が峡谷の縁で起こっている』『緊張と切迫感を持って曲が演奏されている』と評されている」
こんなものだろうか。最後の緊張と切迫感を持って云々というくだりはちょっと僕には違和感を抱くところなんだけどな。演奏はそうなのかもしれないけれど、曲は尖っていないというか、聴く人を穏やかにさせるというか、とにかく喜怒哀楽の怒の面がまるで感じられない。
若い時に聴いた時もそういう風に聴こえたもんだから、当時の僕には物足りなく聴こえてのだろうと思う。「なんだ、ふにゃふにゃした曲ばかりだな」と思ってしまったのだ。これが何で全英と全米で1位をとったのかが全然分からなかった。
それがどうしたことだろう。今回聴き始めてから抱く多幸感は大変なものである。103分33秒間ずっと穏やかで幸せな気持ちになるんだからすごい。もちろんアップテンポのナンバーや、ホーンセクションが入った曲もあるが、ジョージの声が入ると、ジョージの世界になっちゃうんだよなあ。一分の隙も無いというのはこういうアルバムのことを言うのだろう。それを3枚組で達成しちゃうんだからすごいとしか言いようがない。
このアルバムで唯一緊張感を抱くとしたら、「アップル・ジャム」かな。僕は「何でジャム・セッションなんかをLP1枚使って収録するんだ?」と思っていたが、これは収録すべき音源であったことは聴いてすぐに分かった。なんてったって錚々たるメンバーだからね。
あとは、そうだなあ。各面の1曲目が素晴らしいと思った。レコード盤をひっくり返すとあっという間に次の世界に持っていかれてしまう。
一番好きな曲は?と問われたら、いや全曲いいよと答えたいところだが、「Isn’t It a Pity(Version1)」かな。これはビートルズの「ゲット・バック」でも使われていたよな。もう1曲書かせてもらうと「Art of Dying」だな。ホーンセクションが元気な響きを聴かせてくれる。歌っている内容は分からないが、元気が出る曲である。いや、「Hear Me Lord」も捨てがたい。やはり全曲いいな。
昔JUNさんに「オール・シングス・マスト・パス」が今イチだと言ったら、あんな素晴らしいアルバムを・・・と言われたことがあったが、いやー、僕も成長しましたよ。素晴らしいアルバムですな。
フリートウッド・マックの「噂」が全米1位になったようにこのアルバムも1位になったのにはちゃんとわけがあったのだ。世間の声は無視しちゃいかんと思った3日間であった。
これは一家に1枚(いや3枚か)常備しておかなければいけないアルバムである。誰かがどこかのタイミングで必ずハマるはずだ。
それでは。