僕の中には、デヴィッド・ボウイ、ルー・リード、ジム・モリソンの成分がたっぷりと入っている。それに加えて、ジョン・レノンやミック・ジャガー、イギー・ポップ、忌野清志郎、浅井健一・・・などと付け加えていくとキリがない。
これがどんな成分かというと、いつも僕が書いているギザギザロック成分だ。決して明るくはない、暗くてドロドロとしたものでできている。社会人に相応しくない、不健康なものだ。日常というより非日常、常識より非常識、善意というより悪意・・・ちょっと書き過ぎか。でもこれも書いていくとキリがないというかこのテーマだけで1つの記事になりそうだ。
繰り返すが、僕が影響を受けてきた音楽にはそういう成分が多量に含まれている。それを過剰摂取したのが僕という人間である。
ところが、である。最近は何だか様相が変わってきている。今まで聴くこともなかった音楽を聴くようになった。このことは何回も書いているが今日も書かせてもらいたい。ホントに遠くまで来たものである。
今日の1枚はボズ・スキャッグスの「シルク・ディグリーズ」(1976)である。たまたま600円で売られているのを見つけた僕は、迷わずレコードを手にしていた。この迷わずっていうところが「遠くまで来た」と思った所以である。昔(と言っても数年前か)はこういうのを敬遠していたどころか毛嫌いしていたというのに。不思議なものである。でもそれで僕の音楽体験が豊かになったのだから嬉しいことである。
「自身の出世作となり、ビルボードではスキャッグスにとって初のトップ10入りを果たし(最高2位)、R&Bチャートでは6位に達した」
「・・・特に「ウイ・アー・オール・アローン」は、多くのミュージシャンが採り上げるスタンダード・ナンバーとなった」
とあるように「ウイ・アー・オール・アローン」という珠玉の名バラードこそが今までの僕にとって「ボズか・・・うーん・・・ダサい」と思える作品だったのだ。
それがどうしたことだろう。フリートウッド・マックの「噂」やジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」と同様大ヒットを記録したこのアルバムが「最高!」になっちゃった。「噂」の時にも書いたけど大ヒットするには大ヒットする理由があるのだ。
このアルバムは頭から終わりまで全曲素晴らしい楽曲が揃っている。A面とB面の最後がバラード曲なので、どちらかだけ聴いてもOKな構成だ。「ウイ・アー・オール・アローン」をB面の最後、つまりアルバムの最後の曲に置いてあるのもニクい。こんなの絶対最初から最後まで聴いてしまうに決まっている。
また、本作には後にTOTOを結成するデヴィット・ペイチ(キーボード)、デヴィッド・ハンゲイト(ベース)、ジェフ・ポーカロ(ドラムス、パーカッション)が参加している。この人たちの演奏がまた素晴らしい。もしかしたらいつかTOTOを聴くことになるのだろうか、と思えるほどだ。
こういうのをAORっていうんだよな。ちょっと調べてみるか。
「アダルト・オリエンテッド・ロック」・・・「大人向けのロック」「アダルト志向のロック」を意味する和製英語。ソフト・ロックとも称される。
そうか。和製英語だったのか。代表的なミュージシャンも書いてあるぞ。
「AORのジャンルの音楽家としては、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、ルパート・ホルムズ、スティーリー・ダン、クリストファー・クロスなどがあげられる」
ふーん、どれも聞いたことのある名前ではある。スティーリー・ダンは好きだぞ。でもAORかなあ。まあそんなことはいいか。とにかくボズの「シルク・ディグリーズ」は今の僕の心をワクワクさせる1枚であることに間違いはない。
しかし、こうやって少しずつレコードは増えていく。もう終活しなきゃいけないお年頃なのになってこったいである。
それでは。