「もっと大きな成功が欲しいんだ」

1975年のイーグルス

グレン・フライ・・・ヴォーカル、ギター等

ドン・ヘンリー・・・ヴォーカル、ドラム等

・バーニー・レドン・・・ヴォーカル、ギター、バンジョーマンドリン、スティール・ギター等

ランディ・マイズナー・・・ヴォーカル、ベース

ドン・フェルダー・・・ヴォーカル、ギター

 

 

「なあ、ドン」

グレンがジンロックを片手にドン(ヘンリー)に言った。

「・・・」

ドンもジンを飲んでいたが、返事はない。もう酔っぱらっているのか?

「おい、しっかりしろよ、ドン」

もう一度グレンがドンに語りかけるとようやく彼の目がグレンの方に向いた。

「何だい?この俺様に何か言いたいことでもあるのか?」

 

 

最近のドンはどんどん調子に乗っている。しかしグレンはなんやかんや言ってドンとは強い絆で結ばれていると思っていた。だからこそこんな口調なのだと思うようにした。

「俺たち、もっともっとビッグになれると思うんだ。もっとロックなサウンドを作ってさ」

我慢強くグレンは言った。

 

 

「そりゃそうだ。俺たちのサウンドはこれからもっと力強くなるはずだよ。でもな、グレン。分かってるだろ?」

ドンの言うことは分かる。あいつのことだ。バーニー。あいつがいる限り俺たちはいつまで経ってもカントリー・ロックバンドと呼ばれるんだ。

「バーニーのことだろ?」

 

 

「そうだ。バーニーのことだ。あいつがいる限りこれ以上は変わらんよ。それに癪に障るがあいつのバンジョーは絶品だ」

「それは分かってるって。でもドン(フェルダー)が入っただろ?あいつはしっかりロックサウンドを鳴らせるぜ」

 

 

「じゃあ、どうすればいいんだ?バーニーを追い出すのか?今まで一緒にやってきたんだぞ」

しばらくドンをじっと見ていたグレンは、

「俺はそうすればいいと思っている」

とはっきりと言った。今までずっと考えていたことだ。

 

 

「おいおい本気かよ」

さすがのドンも酔いが覚めたようだ。グレンは一気に喋った。

「本気だよ。今度のアルバムから少しずつあいつを外すんだ。そうすればあいつだって分かるだろ。今まで散々俺たちに文句を言ってきたやつなんだから」

「外すって、どうやって?」

 

 

「簡単なことさ。ヤツの作品をできるだけ収録しない、もし収録するにしても俺たちが歌う、あるいはインストにしちまう。あとはあいつの楽器はミキシングで目立たなくしちまう。これでどうだ?あいつにハッキリ分からせてやろうぜ」

「そんなこと、ホントにできるのか?他のメンバーに何て言うんだ?」

 

 

「ランディはあの性格だから俺たちが何をやっても黙って見ているだけだろう。それにコーラスも作曲もできるし、これからも必要なタマだ。ドンにしたって入ったばかりだからバンドに意見するなんてことないよ。このバンドは俺たちのバンドだってことをバーニーに分からせてやろうぜ」

 

 

 

こうしてレコーディングは進んでいった。予定通りバーニーの曲はドンに歌わせた。バーニーは勿論散々悪態をついたが、意見が通らないと分かると「サーフィンに行ってくる」と言ってその日は戻らなかった。よほど腹に据えかねたのだろう。このまま脱退かなと思っていたら3日後に戻ってきた。

 

 

グレンは、頃合いを見てバーニーに彼のギタープレイについて罵り始めた。それに対し、バーニーは飲んでいたバドワイザーをグレンの頭にぶちまけた。ヤツが出て行ってくれればこれくらいどうってことはない。実際、その場を出て行ってしばらく戻ってこなかった。

 

 

このレコーディングが終わったらツアーだ。ヤツはどうするだろう?

 

 

 

 

 

 

という感じでイーグルスの「呪われた夜」が完成するまでのことを簡単に妄想してみた。いやー、嫌なヤツを描くって難しいねぇ。



バーニー・レドンはその後ツアーに参加し、この年の12月20日に脱退を表明した。その後イーグルスは後任ギタリストにジョー・ウォルシュを迎え入れ、翌年「グレイテスト・ヒッツ」と「ホテル・カリフォルニア」を発表する。

 

 

 

 

バーニー・レドンのバンジョーとかスティール・ギターの響きって僕は好きなんだけどね。でも彼がいたら「ホテル・カリフォルニア」はまた違った風味になったであろうことは想像に難くない。

 

 

 

それでは。