「ギザギザロック」とは、僕が勝手に作った言葉である。その言葉を初めて思い浮かべたのは、テレヴィジョンの「マーキームーン」についての記事を書いた時だった。このアルバムのことについて上手い言葉はないかな、と思って考えた末の言葉だった。
つまり「ギザギザロック」とは、何とも言い難い切実さを持って歌うヴォーカリスト（テレヴィジョンの場合はトム・ヴァ―ライン）を擁するバンドが奏でる音楽のことを指す。勿論演奏も切実であれば言うことない。僕は長きにわたってヴォーカルを中心に音楽を聴いていたから、どうしても唯一無二の声、という点に注目してしまう傾向にあったようだ。
だからギターが歪んでいたり、ヴォーカルが叫んでいたりすればいいというわけではない。ハードロック（あるいはヘヴィメタル）はギザギザロックの範疇には入らない。ブラック・サバスは気になるけど。
具体的に言うと、先ほど挙げたテレヴィジョンはアルバム「マーキームーン」に限りギザギザロックである。ドアーズはジム・モリソンが歌っているから全アルバム、ルー・リードもあの声がある限り全アルバムに当てはまる。T.レックスのマーク・ボランや（「スケアリー・モンスターズ」までの）デヴィッド・ボウイもそうだ。
さっきハードロックは範疇外と書いたが、レッド・ツェッペリンは特例でギザギザロックに当てはまりそうだ。「悪魔を憐れむ歌」から「メインストリートのならず者」までのストーンズもそうだ。あ、ジョン・ライドンを忘れていた。大体の傾向は伝わったかな？
日本で言うと、まずブランキ―・ジェット・シティが挙げられる。これは完璧にギザギザロックの条件を満たしている。ヴォーカル＆ギター、ベース、ドラムス、どれをとっても最高である。
反対にディープ・パープルは僕にとってはギザギザが感じられない、と言うと何となくイメージできるかもしれない。よく書かれているかもしれないがなんか暑苦しいんだよね。汗を感じる。ニューヨーク・ドールズもそうだ。こっちは何だかポップすぎるんだよね。ダムドやラモーンズ等のパンクロック勢もポップな感じがしてあんまりピンと来なかった。日本ではミッシェルガンエレファントにそういうのを感じなかった。これは今でも謎である。今聴くと「おおっ」と思うかもしれない。
まあ、そんなのばかりを高校時代に聴いていた。僕の細胞に最初に取り込まれたロックの血だったのだ。暗い青春時代だったが、音楽生活は充実していた。
あれから40年ほど経った。僕は40代を過ぎた頃から先に挙げた音楽をあまり聴かなくなった。そしてアップルミュージックを利用するようになってからは、ソウルやプログレ、サザンロックなど幅広いジャンルの音楽を聴くようになった。ディープ・パープルやラモーンズ、ダムドも「いいじゃん」と思えるようになった。反対にギザギザロックの方はあまり必要としなくなった。
しかし、実家でレコードを発掘してもらって以来、何だかギザギザロックの血が騒ぎだしてきた。今まで名前を出さなかったが、きっかけはイギー・ポップである。彼の最初のキャリアであるザ・ストゥージズがやけにカッコよく聴こえるし、今の僕にしっくりくるのだ。心が荒んでいるのだろうか。つい最近まで「もう俺にイギー・ポップは必要ないな」と思っていたのに。
ザ・ストゥージズは2枚のアルバムを残しているが、2枚目「ファンハウス」（1970）は捨て曲なしの名盤だということが分かった。レコードで聴くとよりその良さが伝わる。ギターの歪み具合もベースのブンブン具合もイギーの生々しい声も最高だよ。ドラムが少し奥に引っ込み気味な曲があるのが玉に瑕だが、そんなの関係ない。
心が荒んでいる時に効きますよ。
それにしても甘々のポップソングを歌う、例えばカーペンターズなんかは妹のカレンが摂政障害、兄のリチャードが睡眠薬依存で苦しんでいたことから考えると、こっちの方もなかなか闇が深そうだなと思う今日この頃である。これにハマるとややこしいことになるかもしれないので注意した方がいいかもしれない。
今日は、何だか今イチの日になりそうである。昨日１錠多く眠剤を多く飲んでしまったからかもしれない。朝、雨が降っていてウォーキングできなかったからかもしれない。15時50分に姉を駅まで送るというミッションが待っているからかもしれない。
まあ、レコードを聞けて、達兄ぃとSycoさんのコメントに返信をして、記事を書けたんだからよしとせねば。ザ・ストゥージズについてはもっと書きたかったなあ。
もうすぐ姉が家に来る。支度をしなければ。道中何を言われるんだろう。
姉とは道中普通に話すことができた。よかったよかった。
それでは。
