「俺ならもっと上手くやれる」byジミー・ペイジ

「なんてこった、俺と同じようなアイディアじゃないか!」

 

ジェフ・ベックのレコーディングに参加した後、他の曲を聴かせてもらった時にジミーはそう思った。何となく俺が思い描いていたサウンドが実際に音になっている。

 

 

ミック・ウォーラーの荒れ狂うドラムス、ロン・ウッドのあちこち踊りまわるベース、そして何といってもロッド・スチュワートのヴォーカル。ジェフのギターと拮抗したその歌声には正直言って痺れた。これ以上この音にピッタリな歌い手はいないな。それにプラス名手ニッキー・ホプキンスのピアノ。これがジェフのサウンドか。

 

 

正直言って最高だ。でももっと最高にすることが俺ならばできるとも思った。しかしそのためには作戦を立てなければいけない。それに間もなくニュー・ヤードバーズとしてのツアーも控えている。メンバーをどうするか考えなければいけない時期のリミットが来ていた。

 

 

しかしまずはどんな曲をどういう風に料理するか、俺なりにプランをはっきりさせないといけない。そのためのアイディアは無数にある。今日のジェフの音を聴いてその輪郭は更にはっきりした。

 

 

そしてメンバーだ。問題はヴォーカリストとドラマーかな。ロッドやミックより腕達者な奴がいるのだろうか。いろいろな顔が浮かんできたがどの顔も今一つ決め手に欠ける。ピアノは今のところ考えていない。

 

 

今日の興奮を体に残したまま。すぐに家に帰り、ギターにアンプを繋いだ。

 

 

ジェフ・ベック・グループのサウンドを思い出しながら、自分なりにいろいろ弾いてみた。まずはイントロだ。ハードでキャッチーなイントロを作るべし、だな。

 

 

少し弾いては、ブルースのレコードをかけてみる。そして今日のサウンドを思い出す。そう、次のアイディアは、ブルースの曲を思いっきりデフォルメしてハードなサウンドに変身させることだ。剽窃ではない、礼儀正しく盗むんだからいいだろう?みんなやってることじゃないかとジミーは思っている。ブルースナンバーをよりご機嫌に、つまりハードに聴かせるためのリフを繰り返し弾いてみる。

 

 

いい感じになってきた。それにつけてもヴォーカルとドラムスだ。どうすればいいかな?テリー・リードに依頼はしてみたが断られている。俺もここまできてあいつに頼もうという気持ちは失せていた。

 

 

 

そんなテリーから連絡があった。しかも朗報である。バンド・オブ・ジョイのヴォーカリストであるロバートはどうかという連絡だった。ロバートか。バンド・オブ・ジョイなら前に見たことがある。パワフルなヴォーカルだった。早速会いに行ってみよう。

 

 

 

 

「ロバート、話があるんだけど」

「やあ、ジミー。話はテリーから聴いてるよ。バンドを作るんだって?」

「ああ、ロバート。俺と一緒にやろうぜ。そして大金持ちになろうぜ」

「何言ってんだよ、ジミー。大金持ちだって?そりゃいいや。俺からも提案があるんだけど」

「何だい?何でも言ってくれよ」

「ドラムスなんだけどね。同じバンドでやってたジョンって奴がいるんだけど、彼でどうだろう?」

「『バンド・オブ・ジョイ』で叩いてた奴だろ。知ってるよ。OK、じゃあ今度セッションしようぜ」

「分かったよ。ところでベースとピアノはどうするんだい?」

「ベーシストはもう決まりそうだよ。ジョン・ポール・ジョーンズって奴なんだけど、俺と同じスタジオ・ミュージシャンでさ。腕は確かだよ。ピアノは今のところ考えてない」

「ふうん。じゃあ4人ってことかい?」

「そう。4人でハードにドライヴィングする最高にかっこいいバンドをやるんだ。それで世界中をツアーして大金持ちになるのさ。まずはスカンジナビアツアーが今月あるんだ。間に合いそうかな」

「OKOK、じゃあすぐにジョンに連絡入れとくよ」

 

 

 

話はとんとん拍子に進み、ロバートと会って2日後にジャムセッションをすることになった。俺はすぐにスタジオを押さえた。

 

 

スタジオに行くと、ベースのジョーンジーはもう中に入ってセッティングを始めていた。ロバートとジョンは入口に立っている。ロバートとはこの前会った時に波長が合うなと思ったけれど、ジョンもいい奴そうだ。

 

 

「何遠慮してんだよ。早く入って音出そうぜ。ヘイ、ジョーンジー、ロバートとジョンだ。これからこの4人で世界制覇するんだぜ。ワクワクするだろ?」

ジョーンジーは冷静に答える。

「世界制覇って何言ってんだよ、ジミー。まずはこの4人で音を出してみてどうなるかだよ。最初は何からやる?」

俺はしばし黙考して答えた。

「『トレイン・ケプト・ア・ローリン』はどう?」

「いいね」

3人が同意する。まずは俺からガツンといくか。ジミーは考えてあったイントロを大音量で弾き始めた。そのあとにジョンのドラムが荒れ狂いジョーンジーのベースが唸りを上げた。あとはロバート・プラント、お前の声だ。思いっきりシャウトしてくれ。

 

 

 

 

こうしてイギリスが誇るロック・バンド、レッド・ツェッペリンが誕生したのであった。

 

 

 

 

 

おしまい。(無茶苦茶妄想してみた)

 

 

 

それでは。