時間という概念をここで書くことは不可能である。確かベルグソンっていう人が「時間論」という本を書いているはずである。それを読んでくれ。と思ったが、チラッと調べたら何だかもっともっと深遠な世界が広がっていそうである。下手に足を踏み入れたら火傷をする世界っぽい。どうしよう・・・まあいいか。
僕が今「時間」と書いているのはとても現実的なこと、つまり秒や分、時間、それから日や月や年と言った数字で測ることのできる考えの方である。その時間の流れに抗おうとしたのがピンク・フロイドというバンドではないかというのが本日の主旨である。
しかしどうしたものだろう。「炎~あなたがここにいてほしい」(以下「炎」)というアルバムを聴いていてふとこんなタイトルが浮かんだだけだから、どれくらいの時間、どれくらいのことが書けるだろうか。タイトルだけ見て、「お前の言うことにも一理ある」と誰かが思ってくれて書いてもらいたいくらいだ。
最近ピンク・フロイドピンク・フロイドとしつこく書いているが、今一番聴いているのがさっきも書いた「炎」である。もう始まった瞬間から時間が止まる。って変か。こういうのをもっていかれるって言うのかな。きっとピンク・フロイドを愛聴している人は一音も聴き逃すまいと体も動かさず、もちろんトイレにも行かず、耳をダンボにしているに違いない。
僕はずっと、本当に何十年もの間、彼らの曲のテンポの遅さについていけなかった。唯一「ウィッシュ・ユー・ワー・ヒア」だけがピタッと来ていたという体たらくであった。
縁あってレコード「原子心母」を購入し、その後B&Wのスピーカーを買ってから「おせっかい」「炎」「アニマルズ」を買った。別に何か予感があったわけじゃない。ただ聴いてみようと思っただけだ。それが聴けば聴くほどにピンク・フロイドが入念に張り巡らせた蜘蛛の糸に絡めとられていったというかマジックにハマっていったというか、そんな感じの日々を送っている。
はっきりともう一度書こう。なぜ彼らの曲はこんなに遅いのだろうか。その答えの一つとして提案したいのが、時間の流れに抗うということである。
リーダーでバンドを引っ張ってきたシド・バレットが脱退を余儀なくされてからのピンク・フロイドには意志があったと思う。「これからもこのバンドを続けていきたい」という意志が。そして同時に「でもシドがいた時と同じようなことはやれない、やろうとしてもできない」と思い、「俺達にしか産み出すことのできない音楽を作るんだ」という野望に燃えていたと思う。
ここからは僕の妄想タイムだ。
これからどういう音楽を作っていけばいいのか?シドがいた時にはこの世のものではない音を奏でていた。シドがいなくなった今は?もちろんこの世のものではない音楽を俺達で作るのだ。
メンバーは音の出し方を根本から考え直した。どこをどう根本的に考え直したのか、そんなことは分からん。しかし、キーボードもギターも、そして時を刻むリズム隊のベースとドラムについても各自、あるいはバンドみんなでどういう音を出していけばいいのか考えに考えリハーサルを繰り返した。その時に行き着いたのが時間の流れに抗う、という考えだ。
今、現実に流れている時間をほんのちょっとずらす、あるいは歪ませる。この考えを各々が具現化させた音をスタジオに持ち込み、バンドとしてのマジックが生まれるまでひたすらリハを繰り返した。しかしレコードという現実的なものの中にそのマジックを封じ込めるまでには時間を要した。それが最初に結実したのが「おせっかい」のB面全部を占める「エコーズ」だった。その曲は確かに時間に抗うかのように響いた。確かにこの世のものでない音楽だった。
そして遂に「狂気」というアルバムでピンク・フロイドマジックが花開いたのだ。驚くべきことにそのサウンドは全世界に熱狂的に受け入れられた。(「狂気」はまだレコードを持っていないのでこれ以上は書けない)
「狂気」の次作が「炎」である。この作品が完成するまでには長い長い時間を要した。アクシデントやトラブルもあった。しかしこの作品でも彼らのマジックは健在だった。どの音も絶対にこの音でなくてはダメだという強度をもって奏でられているこの作品もまた世界は受け入れた。
妄想タイムはこれでお終い。あまりにも抽象的なことを更に抽象的に書いてしまった。いや、でもね、こう書くしかないんだよ。なんで僕が今になってピンク・フロイドにハマったのか分かんないんだもん。
でも世界ってすごいよね。こんな難しい(のかな?)音楽が超ヒット作になるなんて。信じられない。あまりにも僕の耳がおそまつだったのだろうか。
デビューしてから「ザ・ウォール」までのピンク・フロイドのディスコグラフィを書いてみよう。
1967年:夜明けの口笛吹き・・・サイケの名作
1968年:神秘・・・シド・バレットが途中で脱退
1969年:モア・・・サントラ
:ウマグマ・・・1枚目がライヴ盤、2枚目がスタジオ盤
1970年:原子心母・・・全英初登場1位。シド脱退後、初めて音楽的、商業的に成功する
1971年:おせっかい・・・「エコーズ」収録
1972年:雲の影・・・サントラ
1973年:狂気・・・とんでもないお化けアルバム
1975年:炎~あなたがここにいてほしい・・・目下のところ僕のイチオシ
1977年:アニマルズ・・・ピンク・フロイドがロックやってる?
1979年:ザ・ウォール・・・「狂気」以来の大ヒットアルバム、になるのかな
こうやって改めて見直すと「エコーズ」完成まで結構試行錯誤しているんだ、とかピンク・フロイドはアルバムに時間をかけるって言われていた(大作主義)けど、たかだか2年やそこらじゃないか、とか思ってしまう。
ああ、妄想タイムでは主に音の出し方、バンドアンサンブルについての骨子を書いたつもりだが、曲の作り方や歌詞にも触れなければいけなかったかな。建築学科出身の誰だっけ?ロジャー・ウォーターズとニック・メイスンだっけ?が曲をどのように組み立てていったか、ロジャー・ウォーターズがどのように歌詞を考えていったかなどこのバンドの秘密はたくさんありそうだ、いや、あるに違いない。あとこれは書いとかなきゃいけない。曲の繋ぎが絶妙である。きっと考えに考え抜いたに違いない。
コロナで犯された僕の脳みそでは今日はこれで限界である。
熱はおかげさまで昨日の朝からは平熱が続いている。しかし鼻がずぅっと詰まっている。それと家でじっとしているので分からなかったが、妻が帰って喋ると喉がおかしいことが分かった。首と肩の気怠さは消えた。しかし油断はならない。妻からは「1か月は引き摺るよ」と言われている。
昼に校長に電話して、金曜日のバス遠足は欠席させてもらうことにした。この日は夏季特別休暇を取ればいいと言われたが、月から木までの4日間は年休になると言われた。大ピンチである。これじゃあ12月まで持たない。
まあとにかく今度学校に行くのは来週の火曜日ということになった。あと5日、ゆっくりしよう。それにしても復帰してすぐにこうなるとは思いもしなかったな。
それでは、さようなら。
あー、でも書ききれなかったなあ、ピンク・フロイドのこと。「時間をずらす」「歪ませる」って書くと、ハードロックみたいな感じもするしなあ。ピンク・フロイドにはピンク・フロイドしか出せないグルーヴがあるってことを書きたかったんだけど・・・、と記事をアップしてから性懲りもなく付け足す僕であった。