hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「ネブラスカ」は侮れないアルバムだった

ブルース・スプリングスティーンが1982年に発表した6作目のアルバム「ネブラスカ」をここ数日聴いている。このアルバムでのスプリングスティーンの声は疲れている。そしてそれが今の僕の気分に合っている。

 

アルバムは、デモテープとして録音された音源を収録しており、Eストリートバンドは参加していない。1980年に2枚組のアルバム「ザ・リバー」を発表し、大ヒットさせたスプリングスティーン。次はどんなアルバムになるか楽しみにしていたファンたちが聴いたのがこの(ほとんどが)アコギとハーモニカで奏でられる歌だった。当時は問題作とか言われていたような気がする。ファンは密かにがっかりしていたような気がする。

 

僕は「ザ・リバー」は聴いていたが、そんなにスプリングスティーンに肩入れしているわけではなかった。だから「ネブラスカ」も熱心に聴いていない。「ふうん」って感じだった。でも大ヒットアルバムの次にこんなのを出すのか、ちょっとかっこいいなとも思っていた。

 

それが50年の時を経て僕の心に届いた。さっき疲れた声、と書いたがそれは疲れたアメリカ、という意味も含まれている。つまりスプリングスティーンの声はアメリカを体現しているということだ。今のアメリカの状況を考えるとこのアルバムは更に心にひびいてくるのかもしれない。

 

「ジョニー99」は、終身刑(懲役98年+1年)を言い渡された男の物語だ。失業し、新しい仕事を探すが見つからない。そんなある日、酔って店のボーイを撃ち殺してしまう。判決が下り、裁判長から何か言い残すことはないかと問われた時、ジョニーはこう答え、処刑場へ送ってくれというのだ。

 

♪裁判長 俺には借金があった

♪正直に働いて返せる額じゃなかった

♪家は抵当に入れられ 銀行が持っていった

♪俺に罪がないと言ってるんじゃない

♪でも 俺が銃を手にしたのは 他にもいろんな理由があったんだ


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それまでの3曲はアルペジオで歌い上げていたスプリングスティーンエイトビートでアコギをかき鳴らすとき、マジックが起こる。どうしようもなく疲れたロックンロールが生まれるのだ。

 

このアルバムの最後はこんなフレーズで締めくくられる。

 

 

♪つらい1日の終わりにも 人は信じる理由を見つけようとする(リーズン・トゥ・ビリーブ)

 

 

こんな風に(ほとんどが)絶望と(ほんの少しの)希望が入り混じった歌を書くスプリングスティーン、その声は今の僕にピッタリなのかもしれない。でも聴き込むには危険なアルバムだな。とはいえ「BOSS」のファンじゃなくても一度は聴いてみる価値のあるアルバムだと思う。

 

 

これはもっと調べなければ、と思いライナーノーツを探してみるとちゃんとあった(僕は今回レコードを買うようになってからライナーノーツを見たのはジョンのアルバムだけである)。興味深いことが書いてある。訳詞もあったので読んでみた。やりきれない物語が紡がれていた。深掘りするのはもっと元気が出てからにしよう。