「離婚するか?」「その時は近づいてきてる」 

それは「チャイルド・オブ・ネイチャー」から始まった。ジョンのソロアルバムに収められた「ジェラス・ガイ」の原曲である。ピーター・ジャクソン監督、いきなりかましてくれるよな。

 

というわけで、冬眠している場合じゃない。ビートルズ「ゲット・バック」のレポートを書くぞ。今から書くことはネタバレというか、全部映画の中味についての描写になるだろうから、読みたくない人はここでサヨウナラだ。

 

「チャイルド・オブ・ネイチャー」の後は「ドント・レット・ミー・ダウン」「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」と立て続けにリハの様子が映し出される。「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」では、ポールがコードを指示している。ジョンは長髪に口ひげ。ひげを生やしていたのか。ポールはお馴染みのひげぼうぼうだ。ポールだけ、スタジオについての要望をスタッフと話し合っている。

 

その後「アイ・シャル・ビー・リリースト」も演奏している。「ドント・レット・ミー・ダウン」にも意見するポール。それに対して冷静に答えるジョン。

 

ここは映画スタジオなのでだだっ広い。その一画にこぢんまりとセットが組まれている。ドラムセットが置かれている台にジョージが座る。その向かいにはポール、ジョン、そしてヨーコが座っている。ヨーコはみんなから空気のようにいないものとして扱われている。時折ジョンと戯れるだけだ。ポールに笑いかけるジョンの笑顔がいい。きっと今までもこうやって輪になってリハーサルをしていたんだよなあ、と思う。仲が良さそうだ。

 

ポールとスタッフの間では、もう外でライブをする話が出ている。問題は「イングリッシュ・レイン」だねと話すポール。外国でやろうと言うスタッフだが、即座に却下している。「トゥ・オブ・アス」を練習するが、最後にはふざけて終わる。これが1日目の12月2日木曜日の様子。

 

明けて1月3日金曜日。リンゴがピアノを弾いてる!「今も本当に撮ってるの?」とジョージ。「自然にしないと」と(多分)ポール。古い曲をポールがおもむろにやり出すとみんなが合わせる。ここら辺はバンドっぽい。「ワン・アフター・909」はいい感じだ。誰かが「よかったな」と言っている。ジョンがビョ~ンと飛び出ているギターの弦に煙草を刺しているのが面白い。

 

とにかくいろんな曲を演奏する4人は楽しげだ。ハモリを合わせようとするポールとジョンだが、高すぎて無茶苦茶だ。「毎回『ドント~』をやるのはつらい」と言いながらカウントを出すジョンがやがて「ギミ・サム・トゥルース」をやらないか、と言い出す。ジョンの抑えたヴォーカルがかっこいい。ハモるポール。とにかく何でもハモるので少しうざったい。

 

次の曲は「オール・シングス・マスト・パス」。ジョージの曲だ。ここからはジョージがリードしていくが全然臆したところがない。ジョージはジョンにコードを教える。なんかいろいろ語るジョージだが、いきなり「僕が真剣に関わったのは『ホワイト・アルバム』だけだ」と言い出す。うん?そうなのか?その後も語る語る。ライブの最初はみんなの知っている曲(例えば「エブリ・リトル・シング」)がいいんじゃないかとか(それを聞いた瞬間みんなで少し演奏したがかっこいい。こういう反応の仕方がバンドっぽくていい)、「僕もエリック(クラプトン)みたいに弾けるようになった」とかいろいろ喋っている。それを聞いているポールの顔が不穏だ。ちょっとジョージを舐めている顔つきである。

 

そのうちにジョージがビリー・プレストンを推薦し始める。「次どうするんだ?」とポールが言い。「アイム・ソー・タイアード」を歌い出す。ジョンはオルガンの上に突っ伏している。本気で眠っているみたいだ。もう既にこのセッションにみんな疲れている。これが金曜日。

 

土日は休んで1月6日月曜日になった。これまでジョージ・マーティンは映し出されてもビートルズの面々をただ見守っているだけだ(この後もそうだ)。「ドント~」をモノにすべく真面目に話し合って練習を始める。ハモるところでポールはジョージとリンゴに指示を始める。同じところを何回も試すメンバー。ポールは歌詞について提案をする。そしてついにブチ切れる。

 

ポール「何とかしようと皆で頑張ってるんだろ」

ジョン「落ち着け。ジョージはどう?」

ポール「言ってみろよ」

ジョージ「ひどいと思うね。今のを録って聴き直したら絶対ボツにしてるぜ」

ジョン「何か考えてくれ」

煮詰まるメンバー。多分埒が開かないので「トゥ・オブ・アス」にいったのだろう。ポールはジョンに歌詞を覚えてくれと言う。ここでもポールはブチ切れだ。

 

ポール「僕等は『ホワイト・アルバム』の時、バラバラだった。今も一体感がない。ない時は言わなきゃ」。そしてジョージに「君はすぐイラつくが、僕は助けたいんだ。でも僕の言葉にイラつき・・・」

ジョージ「別にイラついてなんかない」

ポール(これ以上言うのは)「カメラの前じゃ無理だよ」

 

ポール「僕も仕切りたくない。ここ数年は僕が仕切り、いつも君らをこき下ろしてる気分だった。でも理解するまで演奏は一旦止めないと」

言い返すジョージ。

ポール「誰も味方してくれない。もうウンザリだよ」

 

必死にジョージに言うポール。負けずに言い返すジョージ。ここにきてポールとジョージの確執が露わになる。その間ジョンはぼぅっと見ているだけだ。ヨーコはしょうがないわねという風にジョンに微笑みかける。ますます煮詰まる4人。

 

ここまでで1時間である。そして4日目。1月7日火曜日だ。

 

ジョージとリンゴは仲良しだ。この時ばかりはジョージに笑顔が見られる。そこへポールが来る。途端に硬い空気に包まれる。ジョンが来ないと焦るポール。ポールは必死になって場を持ちあげようとする。「ゲット・バック」のひな型を演奏し始める。しかし全くのらない2人。ジョージなんかあくびしちゃってるよ。しかし!奇跡が起きる。

 

ジョージが「それ、いいね。音楽的に最高だ」と言うと、リンゴがハンドクラップを入れ始める。段々盛り上がっているぞ。ジョージがギターを持って弾き出した!リンゴはポールとハモっている。ポールは嬉しそうだ。なんか書いていて涙が出てくるよ。そこにやっとジョンが登場。来たらすぐにギターを弾き出すところはさすがだ。

 

その後、どこでショーをやるか話し合うが・・・。ジョンは完全にお客さん状態だ。またもやぼぅっとした顔をしている。ポールの演説が始まった。空気はどんどんシリアスになる。そして・・・

 

(多分リンゴが言った)「離婚するか?」

ポール「前にも言ったが、その時は近づいてきてる」

 

ああ・・・。である。

 

「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」「アクロス・ザ・ユニバース」を一通りやった後、ポールがジョンに「仕切れ」と言う。ロックンロール大会の開始だ。「ロックンロール・ミュージック」だ。でも全然楽しそうな音に聴こえない。これで12月7日が終わった。

 

1月8日水曜日。またしてもジョージとリンゴの談笑から始まり、例によってポールが来たら空気が一変する。しかし、ジョージがポールに「アイ・ミー・マイン」っていう曲ができたんだけど聴く?と声をかける。曲を聴いたポールは「素敵だ」とコメントする。観ているこちらも安心する。

 

しかし・・・ちょっと離れたところでジョンと密談するポール

ポール「どうする?この先ヤバいぞ」

ジョン「切羽詰まってからが僕は強いのさ」

と答えるジョン。何だかんだ言ってポールは精神的にジョンに頼っている風に見えたのが嬉しかった。

 

しかし、どこでショーをやるかについてでポールとジョージがまた言い争う。ポールが「ジョンから一言」と言うとジョンはギターを弾きながら「小さい会場が僕はいいと思う。大きい場所より・・・だって音に集中すべきだろ?」と歌いながら意見を言う。すごいよ、ジョン。かっこいいよ、全く。それにしてもジョンはいつも同じ服を着ているんだけど・・・。

 

ステージについてリンゴがスタッフと話している。その時!ポールのピアノが聴こえてきた。「レット・イット・ビー」だ!と僕一人で盛り上がっていると、リンゴが「それより彼を見ていたい。聴きほれる」と言うではないか。よかったよ。ピーター監督はこの映像を「見つけた!」と小躍りして喜んだはずである。

 

その日の最後に映画監督がジョンに「ポールと昔ほど上手くいってないね。どう思う?」と恐ろしいことを言う。ジョンは「別に・・・。それは改善するかもしれない」と答える。その後はいつまでもグダグダとどこでライブをやり続けるかを話し合い、その日は終わる。

 

ここまでで90分少々である。パート1はまだ1日分あるが、この時点で僕は疲れてしまった。今は月曜日の午前中(学校でこれを書いている)。午後から年休なので続きはゆっくり観るとしよう。でも、「ゲット・バック」にせよ「アイ・ミー・マイン」にせよ「レット・イット・ビー」にせよ音楽的にビビッと来た時の反応の仕方はさすがプロである。素晴らしい。

 

 

雪は降るには振ったが、思ったほどではなかった。今からジャンジャン降るらしい。