清志郎その2

「雪どけ」・・・スタジオ盤も良いが、今回はライブ盤を選んだ。スタジオ盤もライブ盤もどちらも良い出来の曲なんてそうそうないぞ。初めてスタジオ盤を聴いた時の28歳の僕はまだ妻と出会っていない。そして誰かを心の底から好きになりたいと思っていたものだ。この曲は最初から言葉がスッと頭に入ってくる。短いイントロからすぐに歌い出す清志郎。「雪どけの道では何度も何度も足をとられ」「大切なことが言いにくい言いにくい春なのさ」「僕には言えないとても言い表せはしないこの心を」。僕のしたことをユーモアにしておくれ、とか間違っていない、というラインは「君が僕を知っている」や「IDEA」な感じもする。そしてライブヴァージョンはスタジオヴァージョンよりテンポがゆったりしている。もうすぐ止まっちゃうんじゃないかってくらい遅い。そこがまたかっこいい。ホーン・セクションも格別だ。僕は清志郎の楽曲から1曲選べと言われたら「雪どけ」を選ぶ。

 

「さんざんなめにあっても」・・・最初のギターから、ビリリってきたよ。そして♪さんざんなめにあっても さんざんなめにあっても 平気 生きてるから♪ だよ。全く勇気づけられるぜ。この曲はアルバム「abcd」に収録されているので軽視されがちなのではないだろうか。他の歌が「鉄人パパ」「パパの歌」「犬の子」「パパの手の歌」「カラスカラス」だからな。「カラスカラス」はロックな感じでいいが、他の歌は所謂「パパ路線」だ。2.3’Sのコンサートには一度行ったが、とても好感が持てたぞ。

 

「人間のクズ」・・・もうタイトルだけでダメ。もうズブズブである。当時(35歳)まさに(プライベートで)こんな状況下(人間のクズ状態)にあった僕は、ギター教室の先生にこの曲を持っていったっけ。一生懸命イントロを練習した覚えがある。「クズクズクズクズ人間のクズ」と子ども達と一緒に歌う清志郎。「川のほとりで自殺を考えたけれど怖いからやめた」と歌う清志郎。サビの最後は「人間のクズ 俺のことさ~」、そして最後の最後に「今日も元気だー」と歌う。替え歌を作って歌っていた路上ミュージシャンもきっといたはずだ。僕は毎日「俺は悪いけど悪くない」と声に出して自らを奮い立たせていた。

 

「口癖」・・・僕はどうもこういう曲に弱い傾向にある。ヘヴィなイントロから世界中を案じる暗い内容の話が歌われる。そしてサビで「バカなんじゃない人類って 誰も仲良くできない 変なんじゃない 人類っていつも傷つけ合ってる 愛が欲しいなんてただの口癖」と歌う。ところが2番のサビでは「でもいいんじゃない人類って それしかできないんだもん しょうがないんじゃない人類って すごく弱い動物だもん 愛が欲しいなんてただの口癖」と何となく肯定的だ。「バカなんじゃない人類って」「でもいいんじゃない人類って」という響きがとても心地よい。こういう曲って結局どういう曲なんだろう。「イマジン」みたいな曲っていえばいいのかな。

 

「JUMP」・・・遂に忌野清志郎は「雨上がりの夜空に」に続く、いやそれをも凌ぐかもしれない曲をモノにした。ここまで来るのに長かった。いや、その前に〇〇も□□もあるじゃないか、と言われそうだが、僕は断固として言い張る。「JUMP」はあくまでも「雨上がりの夜空に」に続く大名曲だと。イントロからギター、ホーン、ともに祝祭感溢れる響きだ。とはいえ前段で歌われる内容は重い。しかし「Jump 夜が落ちてくる、その前に Jump もう一度高くジャンプするよ」というサビで一気に霧が晴れる。それにしても歌い出しがいいよな。♪夜から朝に変わる、いつもの時間に 世界はふと考え込んで朝日が出遅れた♪ こんな詩、誰が書ける?えっ?ってなもんだ。2題目の、♪眠れない夜ならば 1つだけ多すぎる朝、後ろをついてくる♪っていうのははディランっぽい。

 

 

「激しい雨」は番外編だ。♪何度でも夢を見せてやる 世界が平和だったころの夢 RCサクセションが聴こえる RCサクセションが流れてる♪ この曲を最後に聴くことができた。もちろん清志郎はまだまだ生きてたくさん曲を創ろうと思っていたのだろうし、この曲も人生の中で1つピリオドを打った歌だったのだろう。しかし残念ながら清志郎は逝ってしまった。それはとても悲しいことだけど、清志郎には感謝しかないじゃないか。このプライベート・セッションヴァージョンは、その声と演奏の生々しさに胸が張り裂けそうになる。「何度でも夢を見せてやる」と歌っているように今もなお僕は清志郎に助けられている。

 

 

 

どうも今回選んだ曲は、音に言葉が見事にのっかっているというか、言葉に音楽的な響きを持たせることに成功した曲を選んでいるような気がする。プラス言葉自体にインパクトがある曲だ。

 

だからこそ、選んだ11曲のどれもの歌詞に触れざるを得ない。

「ほ~らも~ういっちょう これはロックンロール・ショウ」

「Oh! Baby僕をダメにしたいなら ある朝君がいなくなればいい それだけでいい」

「電車は動き出した 豚どもを乗せて 僕を乗せて」

「(俺は河を)渡った」

「かくまってくれるかい」

「雪どけの道では何度も何度も足をとられ」

「さんざんなめにあっても さんざんなめにあっても 平気 生きてるから」

「クズクズクズクズ人間のクズ」

「バカなんじゃない人類って」

「Jump 夜が落ちてくる、その前に Jump もう一度高くジャンプするよ」

RCサクセションが聴こえる RCサクセションが流れてる」

と必ず心に刺さる言葉を印象に残るメロディで歌っている。

 

11曲でこれなんだから、やはりすごい詩人であり、ロックシンガーなんだな、と再認識した次第である。