hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

「ビートルズは眠らない」by 松村雄策

先日ふと、松村雄策の「ビートルズは眠らない」を読みたいと思い、本棚を見たところ、ない。どこをどう探してもない。となると僕は松村雄策の本まで売ってしまったことになる。「アビイロードからの裏通り」と「岩石生活入門」、そして小説「苺畑の午前五時」はちゃんとあるのに。そういえば「リザードキングの墓」「悲しい生活」「それがどうした風が吹く」もないぞ。このことに結構衝撃を受けながらも、アマゾンで素早く注文した。しかし、しつこいようだが、売っちゃったんだ・・・

 

翌日本は届けられた。早速読んでみる。売ったということはもう何年も読んでいないということであって、読んでみると新鮮だった。まず、1本1本のタイトルがいい。僕も結構気を張ってタイトルをつけているつもりだが(といっても今日も昨日も一昨日もそのまんまヒネリもないタイトルだけど)、松村雄策の考えるタイトルには遠く及ばない。

 

「髪を長くしたってよかったんだ」最初っからこんな感じである。気に入ったタイトルをざっと書いていくと、「僕は泣かなかった、涙ぐんだだけだった」「暖炉に火をともす一本のマッチ」「ポールといっしょにおじいさんになろう」「ジョンは歌詞を間違える」「何をやったってよかったんだ」「世界をあっと言わせろ」等々である。話題は全部ビートルズ、あるいはメンバーのことである。

 

この本は1991年から2003年までに書いたビートルズネタのエッセイを厳選して1冊にまとめたものである。数えてみると全部で44本ある。ということはこの12年間で少なくとも100本以上はビートルズに関する文章を書いているはずである。その前から現在までを数えると、膨大な数のビートルズに関する文章を書いていることになる。正直言ってよく書けるな、と思う。とはいえ、この時期「アンソロジー」やら「イエローサブマリン」のリミックス盤やらポール、リンゴ、ジョージのライブやらでいろいろ書くことがあったことは確かだ。今までに読んだことがあるような文章もあるにはあるが、それにしても、である。僕にはこんなことはできない。いや、誰にもこんなことはできないだろう。

 

それほどビートルズは巨大だということも言える。それは確かだ。しかし松村雄策にとってビートルズは思い出なんかじゃない。本にもそう書いてある。本書の219ページにちゃんと書いてあるぞ。

 

「ところで、それでは僕にとってのビートルズは青春の思い出なのかといったら、そうではない。60年代から今日まで、ずっと聴き続けているのだから、思い出になるはずはないでしょ」

 

どうですか。ビートルズに関してはもう誰も松村雄策にはかなわないのだ。だから下手に論争などしてはいけないのである。(←昔あった。この時の松村雄策は執拗だった)

 

僕の元に届いた本には、2003年11月29日初版発行、2004年4月12日二刷発行と書いてある。この本は結構評判がよかったように記憶しているが、あまり売れなかったのだろうか。

 

そう思いながらもヤフーで松村雄策の検索をしていたら、「松村雄策の文章は好きだ」という生意気なタイトルが出てきた。誰が書いてんだ?と思ったら僕だった。いやあ、つい読んでしまったよ。スマホで自分の文章を読むのって新鮮だなあ。それはそうと松村雄策も70歳か。そりゃあ自分も歳をとるはずだ。でも70歳は今やロック界では普通な感じになっているし、まだまだ頑張ってもらいたいものだ。脳梗塞の影響がなければだが。

 

それと「ビートルズは眠らない」を読んだら新鮮だったと書いたが、同時に(いい意味で)サラッと読むことができたのも意外だった。彼の最初の本「アビイロードからの裏通り」はそんなわけにはいかなくて、サラっと読むんじゃないよ、という気迫が感じられた。本書でも勿論いつものように「あの時僕達ビートルズファンは孤独だった。寄ってたかってビートルズを悪者にしたあなた。何が『昔はビートルズファンでした』なんて言ってるんだよ。あの時のことは忘れてねえんだよ。あなた方は今でも敵なんだよ」ということはちゃんと書かれている。書かれているし、気迫もこもっているんだけど、「アビイロードからの裏通り」の方がなんかドロドロしたものを感じるんだよな。「アビイロードからの裏通り」はドアーズ等ビートルズ以外のミュージシャンもとりあげているが、初めて読んだのが高校生の時だったからかな、どうもサラっと読むことのできない怖さが未だにある。それに比べると「ビートルズは眠らない」は随分と穏やかになったものだ、と思うわけだ。

 

というわけで、実は購入したがちゃんと読んでいない「ウィズ・ザ・ビートルズ」に手を伸ばしてみることにしよう。どんなこと書いてあるんだろう、とは思わない。分かっちゃいるけど読みたい気持ちにさせる魔力が松村節と言われる(こんなこと言うの俺だけかな)所以だろう。この本は2012年10月に刊行されているのか。大分前だな。そういえば「僕を作った66枚のレコード」が2017年に刊行されている。この本が松村雄策の最新の本になるのかな。これも本人は楽しんで書いただろうな、と思わされる本である。

 

ビートルズは眠らない」を書いた時の松村雄策は40歳から52歳ということになる。僕が文章を書き始めたのはつい2年ほど前だ。さっきは楽しんで書いてるなんて言ったが、間違っていた。やはり身を削って文を書いている人には凄味がある。もっと言えばこういう文章を20歳そこそこからずっと休まず書き続けているって一体全体どんだけの熱量を持っているんだろうと思わずにはいられない。

 

 

それにつけても映画「スターダスト」である。10月8日から公開されているそうである。観たいな。でもこんな地方都市で上映はされないだろうなあ。金曜日のベストヒットUSAデヴィッド・ボウイ特集だから、きっと「スターダスト」にも触れることだろう。