「We are the World」。僕の中では「ケッ」と思ってしまう最大の曲である。この曲が流れたらテレビのチャンネルを変える曲だ。
「We are the World」は1985年にアメリカで発売された歌で、著名なアーティストがアフリカの飢餓と貧困層を解消する目的で作られた歌である。作詞作曲はマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーでクインシー・ジョーンズがプロデュースした。
参加アーティストを思いつくままに挙げると、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、スティービー・ワンダー、ティナ・ターナー、シンディ・ローパーなど錚々たるメンバーである。
この曲の何が気に食わないかというと、まず楽曲がダサい。こんなかっこいいメンバーが歌うなんて信じられないよ、というくらいジメジメメソメソとシュガーコーティングされている。それに金持ちのシンガーがアフリカを救うために歌うだと?何それ?エラソーに、と当時は思ったものだ。
心に闇を抱えたロクデナシがロック・ミュージックと出会い、食っていけるようになった。そのことを忘れてかどうか知らないが、上から目線で歌う様がどうしても受け入れられなかった。
対してリンゴ・スターはどうだろう。彼は長らく「リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド」を1989年以降結成して不定期にツアーを行っている。古くはビリー・プレストン、レヴォン・ヘルム、ニルス・ロフグレン、トッド・ラングレン、最近ではスティーヴ・ルカサーもツアーに参加している。
その彼がコロナ禍の中、曲を発表した。ヒットメイカーのダイアン・ウォーレンが曲をリンゴ・スターに持ってきたことから始まったらしい。みんなを元気づけた方がいいと判断したリンゴがレコーディングを決意した。それが「Here’s to the Nights」という曲だ。いわゆる「頑張ろうぜ、頑張ってるぜ、それを祝おうぜ」ソングなのだが、リンゴが歌うとしみじみとしていい。
参加メンバーはリモートの画像で登場する。ポール・マッカートニー、シェリル・クロウ、ジョー・ウォルシュ、スティーヴ・ルカサー、ベン・ハーパー、レニー・クラヴィッツ、デイブ・グロール、エリック・バートン(!)などなどだ。
「派手に転んでも祝おう/立ち上がり勝ちにいく/極端だけど/途方もない夢でも揺るがない」「恐れない心に乾杯/今ここに祝おう」「忘れたい夜に乾杯/忘れ得ない友と一緒に/永遠に思えるように/この日々が最高だったと」「共に音を出し/素晴らしく盛り上がろう/やり遂げたと声をあげよう」
そして「思い出を作り/間違えることも乾杯」「規則を守り/破ること/愚か者に乾杯」と続く。
こういうバランスのとれたところにも好感が持てる曲だ。