「ねぇ、音楽仲間ってどのくらいの範囲だと仲間になれるの?」
「うん?どういう意味?」
「例えばミスチルを聴く人と仲間になれる?」
「なれない」
「あとは?」
「髭男とかKing Gnuとか」
「BOOWYは?」
「布袋ならいける(仲間になれる)」
「えっ、氷室京介がだめなの?」
「うん。あと矢沢永吉ならいけるよ。興味あるもん。何がそんなにいいのか聞きたい」
「ふうん。じゃあ曲は?例えば佐野元春の・・・」
「『サムデイ』から話を持ちだす人とは仲間になれない」
「へぇ~。曲単位でもあるんだ」
「うん。サザンの桑田は好きだけど、『TSUNAMI』の話をするのは嫌いだ」。
「でもビートルズならどこからでもOKだと思う。ビートルズって広い範囲じゃない?ジョンかポールかでもいいんだけど、初期と後期とか映画とか。それはどこからでも大丈夫。仲間になれる」
そう言いながら心の中ではJUNさんのことを考えていた。得難い音楽仲間だ。ぼくにとってはたった一人の音楽仲間だ。2つ先輩というところがまた絶妙にいい。
前にも書いたが、1984年の夏の夜のことだった。彼のバンドに入らせてくださいと軽音楽部の部室に頼みに行った。そこからJUNさん、そしてバンドのメンバーとの付き合いが始まったんだ。それは3年間続いた。そして20年以上の時を経て再び音楽の話をする仲間としてお付き合いさせてもらうようになった。全く凄い世の中になってるな。こんなこと、想像もしなかった。
さて、スミザリーンズだ。
「Especially for you」(1986)からの「Behind the Wall of Sleep」、スザンヌ・ヴェガと歌った「In a Lonely Place」が僕の心を躍らせたのだが、ここはひとつ、「Meet the Smithereens」を取り上げたい。これはタイトルから推察されるようにビートルズのカバー集だ。曲は初期のものから選ばれている。ビートルズが一番瑞々しかった頃の作品をカバーしている。
しかしながらこのアルバムを一言で表せと言われたら僕は「安定」と答えるだろう。あるいは「綺麗」と。もしもこのアルバムの曲がスミザリーンズのオリジナルだとしたら、世界中で大絶賛されるだろう。いい曲だし演奏も上手い。ただ悲しいかな元歌がある。
このアルバムを聴くとビートルズの曲がいかに不安定だったかがよく分かる。「不安定」というのは貶しているわけではない。「スリルがある」に近いかもしれない。ビートルズは初期の頃はスタジオでリハーサルを繰り返し、試行錯誤し、そして一発録りを行った。その時出たアイディアをその日のうちに生かし曲に取り込んでいったと思われる。そこに「スリル」あるいは「スピード感」が生まれた。まとめていうと「不安定」な感じがする。それが世界中をざわつかせたのだ。
松村雄策は著書の中で、「ビートルズはわざとスキを作っている」「ビートルズの楽曲はいつも『未完成』な気がする」というようなことを書いている。つまりはそういうことなのかもしれない。
というわけでスミザリーンズの「安定」も聞く分には面白いが、ここはビートルズの「不安定」に軍配を上げたい。そりゃそうか。スミザリーンズよ、貶めるような形になってごめん。君達はとても素敵なバンドだよ。僕は好きだ。
と書いていたらトッド・ラングレンのアルバムも聴きたくなってきた。調べてみよう。
あった。「Deface the Music」。1980年の作品だ。そんなに昔だったのか。
これは、ビートルズの楽曲の何だろう?パロディ?オマージュ?とにかく、そんな感じで聴くとすぐ分かるよ。
上手く言えるかどうか分からないけれど、試してみよう。ビートルズの楽曲Aには1,2,3のアイディアが詰まっている。Bには①、②、③が、Cにはア、イ、ウがそれぞれ詰まっている。トッドのこのアルバムの楽曲は、Aから2のアイディアを、Bから①の、Cからウのアイディアを拝借して上手くくっ付けて曲を作っているように感じるのだ。しかも曲としてちゃんと成立しているからすごい。聴いていてもどかしくなる(これ何の曲に使われていたかなあ、と痒いところに手が届かない感じを抱く)ことはあるけど。
こうなると、もうラトルズを聴くしかないか。ラトルズはもっとオリジナルに寄って作っているから分かりやすい。しかし、凄いよ。ラトルズは。最初にこれだけのスケールのことをやったんだから。
いろんな方面からのビートルズ話はいつ読んでも聴いても面白い。