エンケンは本気で紅白に出演するつもりだった(と思う)

エンケンこと遠藤賢司が亡くなってもう3年が経つ(2017年10月25日没)。70歳だった。僕はエンケンのいいリスナーではなかった。聴く曲は限られていた。しかしそれらの曲があまりにも素晴らしいので、他の曲は聴く必要はなかったのだ。その曲は「カレーライス」(1971)「俺は勝つ」(1996)「夢よ叫べ」(1996)「ラーメンライスで乾杯」(1998)の4曲である。これだけをひたすら聴いている。特に「夢よ叫べ」は何回聴いたか分からない。

 

その4曲が全て収録されているDVDが「ROOTS MUSIC 遠藤賢司スタジオライブ&インタビュー」だ。時は2000年、エンケン53歳のライブだ。

 

まずは「ラーメンライスで乾杯」。イントロから激しくギターをカッティングするエンケン。首からは上は激しく歌っているが、右手には冷静さが宿っているように思う。激しいストロークでも弦とピックとの触れ具合が一定だ。久し振りに訪れた古い友人をビールとラーメンライスで歓待する曲。昔のことを謝ることができてよかったね、エンケンエンケンのハーモニカも独特だ。フリーキーかと思えば、メロディアスなフレーズに戻ったりする。ミチロウはひたすらフリーキーだったけど。多分年々フリーキーさが増してきたのだろう。

 

次は「カレーライス」。もうエンケンの左指だけでも見る価値がある。この左指と右指が連動してあんな凄い演奏になるんだなあ。全国10万人の「『俺はカレーライスを弾けるぜ』ファン」が自分に酔いしれながらこの曲を弾いている様が目に浮かぶ。羨ましいな。途中今度はギターの間奏がフリーキーになる。これは最近(当時の)の事なのだろうか。いやきっとエンケンの癖(へき)なのだろう。曲の原型がなくなる寸前まで壊すというのは。それでも歌は壊れない。彼のスリーフィンガー奏法はニール・ヤング等から影響を受けたのだろうか。当時耳コピでマスターするというのはすごい情熱だと思う。

 

3曲目は「夢よ叫べ」。歌う前に訳知り顔をした人に対する自分の考えを述べるエンケン。そして、「この曲で紅白に出ます。そして親孝行をします。今回ダメだったら次挑戦します。まあ見てて下さい」と言って歌に入る。かっこいいよ、全く。

 

「まるでこの世の何もかも 嫌になっちまったのかい」「そんな眼をして又ひとつ 溜め息ばっかり」「どうしたんだよあの夢は 欠片も瞬かぬ」「そんな夜に負けるな友よ 夢よ叫べ」「言い訳なんかじゃあの夢は 騙せやしない」「お前がやらなきゃあの夢は二度とは瞬かぬ」等直球ど真ん中のフレーズに心を撃ち抜かれる。この歌も歌えば歌うほど曲を壊すエンケンである。

 

4曲目は「俺は勝つ」この曲は何十年ぶりに復活した早川義夫に向けて歌われた歌だと思われる。「夢よ叫べ」からメドレーで歌われるがここがかっこいい。冷静で情熱的なギターカッティングと、メロディアスでフリーキーなハーモニカ。「俺は負けない 君だけには負けたくない」「そんな君の素晴らしい 復活のあの歌が」「オレの負けじ魂に火をつけた だから君にありがとう」首から上は湯気が出るほど熱い。

 

最初に書いたがエンケンのいいリスナーではないが、この4曲は不滅の名曲です。きっと他にもあるんだろうけど。