hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

ジョン・ライドンである。PILである。

僕にとってのPILは、「フラワーズ・オブ・ロマンス」(1981)である。人それぞれ違うだろうとは思いますが。どうも、「フラワーズ・オブ・ロマンス」とプリンスの「パレード」が重なっちゃうんだよ。聴いたことのない音が鳴っている、という一点で。イノベイター、という言葉が浮かぶ。

 

でも、ジョン・ライドン?やはり、ジョニー・ロットン時代のピストルズが一番だろう、という人も多いはずである。

 

僕の場合、最初は中学1年の時だったと思う。毎日子ども新聞、みたいなので「セックス・ピストルズ」というバンドが今イギリスを席巻しているという記事を読んだ。「セ、セ、セックス・ピストルズ~!?」という強烈な違和感?興奮?を覚えたことだけ記憶している。

 

そして「アナーキー・ザ・UK.」を聴くときがきた。多分ラジオでだろう。その時の彼の声の気持ち悪さったら、・・・。ミック・ジャガー以来だったな。それ故、デビュー・アルバムを聴いたのはかなり後のことになってしまった(かっこよかった)。

 

結果的に初めに買ったのは、PILの「メタルボックス」(1979)だった。僕にとっては大冒険だ。こんなことができたのはお正月のお年玉があったからだと思う。以前僕はジョンの声は「呪いの声」だと書いたことがあるが、まさしく1曲目の「アルバトロス」は呪いの声だった。当時まだ呪いの声に慣れていなかった僕は、「まいったな。この声、怖い」と思った。しかも、楽器もまた呪いの響き満載だった。1曲目「アルバトロス」はベース(ジャー・ウォブル)の音から始まるがそこから「なんだなんだ。怖いぞ」と思った。そこにジョンの声である。かなり我慢してこのアルバムを聴いていた僕は、そっとアルバム棚の隅っこに眠らせた。

 

それからしばらくして、ラジオの「サウンドストリート」でPILの「フラワーズ・オブ・ロマンス」が紹介された。最初に紹介されたアルバム1曲目を飾る「Four Enclosed Walls」で僕はぶっ飛んだ。何か民族音楽チックになっているぞ。しかもドラムが前面にでていてそれが気持ちいい。どうもベースレスになった(ジャー・ウォブル脱退)ことでこんなサウンドになったらしい。ギターのキース・レヴィンもカタルシスを与えてくれる音を弾いていない。(気持ち悪い音だ「Go Back」では切れ味鋭いギターを聴かせてくれる)。そんなドラム中心の音にのったジョンは相変わらずの呪い声だがこのサウンドに合っていた。僕は、「Four Enclosed Walls」「Phenagen」「Flowers of Romance」「Under The House」を気に入っていて今でもジョンの声が聴きたくなった時はよく聴く。

 

ジャー・ウォブルはPILサウンドの大きな要となっていたはずだ。その音がなくなってジョンは精神的に追い込まれたのではないだろうか。表面上はどうってない顔をしていても内心「やべー」って焦ったのではないだろうか。

 

精神的に追い込まれてアルバムを作った、というエピソードでまず思い出すのはポール・マッカートニーである。「バンド・オン・ザ・ラン」「タッグ・オブ・ウォ―」という2大名盤はそのようにして生まれたと聞く。天才は追い込まれないとほんとの力を出さないと松村雄策も言っていたしな。

 

ジョンももしかしたら追い込まれた状態で「フラワーズ・オブ・ロマンス」を作ったのかもしれない。その結果このような大傑作アルバムができた、のかもしれない。

 

とにかく1,2,3枚とそれぞれ傾向の違う音になり、それぞれが功を奏したアルバムになっていることは素晴らしい。おそらくPILの構想はそういうものだったのだろう。

 

それ以降は、何だか普通になってしまって(普通なことがPILにとっては異常なんだけど)僕は熱心には追いかけなくなった。

 

今ジョンは、認知症の妻を介護しているらしい。そのためアルバムを作るのを断念したらしいが、ジョンの創作意欲はまだ衰えていないようだ。