アンチのアンチのアンチ

アントニオ猪木前田日明について書いたら、船木誠勝に触れねばなるまい。なぜなら、ついに「全試合リアルファイト」を実現したプロレス団体「パンクラス」を立ち上げたからだ。旗揚げ戦は、全5試合で試合時間は合わせると13分5秒という今までからは考えられないものだった。これによって、「秒殺」という言葉が生まれ、パンクラスは一大センセーショナルを巻き起こした。

 

その頃はリングス、UWFインターといったU系団体との差別化を図るためにリアルファイトを行うしかなかった、と船木は語っている。しかしもともとプロレスラーだった船木は「プロレスなんて八百長だろ?」という声に強い反発を感じていた。他団体との差別化、プロレスに対する偏見からこうするしかなかったとも言っている。

 

とにもかくにも、「リアルファイト」をする団体ができたのだ。プロレス界で。このプロレス界でというのが重要になってくる。プロレスは興行なのである。ビジネスだから当然儲けなければいけない。これが1点。もう1点は、今までのUWF関係の興行は月に1度だった。だからパンクラスも同じように月1で試合をしていた。「リアルファイト」を月1で行う困難さは今だからよく分かる。この2点がジレンマを生み、船木は苦しみ続けることになる。

 

最後に船木は、ヒクソン・グレイシーと対戦し、チョークスリーパーで落とされて負けた。目を剥いて落とされる船木の顔が船木の決意を表していた。試合後、船木は引退した。

 

僕は、アントニオ猪木前田日明船木誠勝も好きだ。観客を夢中にさせるプロレスラーだからだ。