萩原健太が言ってたよ

9月28日木曜日にNHK-BSで放送された「世紀を刻んだ歌2 イマジン」を観た。この番組は2002年に放送されたものを再放送し、その後ゲストを呼んで語り合うという構成になっていた。2002年当時の放送では、最初からいつものようにこの曲を礼賛することばかり言っていたが、我慢して観続けた。しかしそれが終わり、ゲストの音楽評論家である萩原健太が登場すると、様相が変わった。

 

 

渡邊あゆみアナウンサーが萩原を紹介し、「世代的にビートルズ世代ですか?」と尋ねる。萩原は「ビートルズが来日した時は小学生だった。ソロの時にはリアルタイムでずっと聴いていた」と答える。萩原は続ける。

 

 

「『イマジン』という曲が出た時はびっくりした。ジョン・レノンっていうのはもうちょっとワイルドなロックンローラーとしての側面も持った人ですから。『ツイスト&シャウト』なんていうのは(彼の)最高の魅力を表している(曲である)。そういう人がこれだけ穏やかにある種のメッセージを放っている。それだけでもショッキングなところはありました」

 

 

渡邊「それまでの曲は、『イマジン』が出ることを予想させるような曲だったんですか?」

 

萩原「ヨーコさんと出会ってからのジョンは、(今まではちょっとシニカルな視線で描くようなところがあったが)ある種のムーヴメントの只中に身を投じて、その中から表現するようになった。『ベッドイン』とかね」

 

 

「実は『イマジン』が入っているアルバムの前のアルバムで『ジョンの魂』っていう作品があって、その中に『ゴッド』という曲が入っていたんですよ」

 

 

「それは、あのー、神というものは自分たち人間が、自分たちの心の痛みみたいなものを計るためのコンセプトに過ぎない、概念に過ぎない(って言ってるんですよね)」

 

 

「だからこそ自分は魔法も信じないし、占いも信じないし、イエス・キリストも信じないし、ブッダも信じないし、エルヴィス・プレスリーも信じないし、ボブ・ディランも信じないし、そしてビートルズすら信じない、ってシャウトするんですよね」

 

 

「最終的に信じるのは自分だけだ、自分とヨーコだけだと。そしてドリームイズオーヴァーだと。夢は終わったという一節でこの曲は幕を閉じるんですけども」

 

 

「実は『イマジン』っていうのは、僕の解釈ではそれの続編ですね」

 

 

「それと同じようなメッセージをまた違う形で・・・。あれ(『ゴッド』)は自分は何を信じないかってことを赤裸々に放っていた曲だったんですけども、他の人たちにその考え方みたいなものを『どう?』っていう風に投げかけているものが『イマジン』っていう曲だった感じがします」

 

 

「その中で歌われているのは、『天国もない 地獄もない』『国境もない 宗教もない』『財産なんてものには意味がない』、まあそんなようなことをずぅっと歌っていくわけですけども、それはある意味では『アイ・ドント・ビリーヴ・・・』と一緒ですよ」

 

 

「つまり、どういうことかというと、天国とか地獄とか、実際にあるもんじゃなくて、人間が考え出したそれもコンセプトじゃないかと」

 

 

「つまり『ゴッド』で歌われている神と同じで、概念でしかない。人間が考え出した概念を捨てれば、人間はひとつになって平和に生きていけるんだという歌なんですよね」

 

 

「それは、かなり激しいメッセージなんですよ」

 

 

渡邊「太古から人間がいろいろ創り上げてきた民族として、あるいは宗教として、平穏でいるためのあるいは確立するための、その全部をなくして・・・」

 

 

萩原「うん、とっぱらってしまえと。そのせいで争いも起こってるんだし、っていうことですよね。だから結局この曲が9.11の後に放送禁止になったっていうのは、アメリカというキリスト教社会の中で(『イマジン』という曲は)『宗教なんかないって信じろ』って言ってるわけじゃないですか。そういう風にイメージしてみろと。天国なんてないってイメージしろ、地獄なんかないってイメージしろって、これはもう全否定ですから、これはもうキリスト教勢力からの反発もあって、この曲は不適切であるという風にあの時決められてしまったわけですよね」

 

 

「それほど実はこれはね、背景にあるメッセージはかなり激しいんですよ。ついつい自分たちが受け入れられる詞のフレーズだけを自分の中に入れて『いい曲だな、みんなで平和に暮らしたいな』くらいなところで終わってしまうんですけども、それ以外の詞の全てを全ての人が受け入れられるかって言ったら、これはなかなか難しいメッセージなんですよね」

 

 

「そういう曲を放ってくるっていうのがジョン・レノンの何とも言えず、腕白なところだなって思ったりするんですけどねー」

 

 

渡邊「穏やかな境地に達してそして、というよりはこれは挑戦的なところだと」

 

 

萩原「はい。僕の解釈としてそういう風に思いますね。突っ込みどころは満載じゃないですか。そういうことできないだろっていうのも含めて、受け入れられないことをイメージしろとも言われているわけだし、それに加えてこの中で『財産なんて そんなものは意味はないんだ』ってことも歌ってますよね」

 

 

「だけど、その歌をね、あの邸宅でですよ、豪勢な白いピアノで。広~いところで(歌っているわけですよ)。『金持ちじゃん!』みたいな、そういうところも含めてね『何言ってんの?』ってとこあるじゃないですか」

 

 

ジョン・レノンはそういう矛盾だらけの存在なんだと。その内のひとつを表す名曲としてこの曲を受け入れて、この曲をきっかけにして自分の中にもたくさん渦巻いている矛盾、みたいなものにもう一度みんなでそれぞれ目を向けてみるといいんじゃないの?くらいな受け入れ方をした方がこの曲の底力は発揮できるんじゃないかなって気がするんですよね」

 

 

 

 

これは常々JUNさんが言っていることとほぼ同じじゃないか。ですよね?JUNさん。萩原健太スゲーと思ったので頑張って文字起こしをしてみた。萩原健太のことはほぼ無視していたが、これからは気にかけてみよう。

 

 

(  )は僕が勝手に補足した言葉です。悪しからず。

 

 

 

それでは、これで失礼させてもらうよ。