hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

ルノアールと似ているかも

中山康樹の「ジャズの名盤入門」は僕にとって非常に困る本だ。「これは一家に一枚必要でしょ?」と彼が考える50枚のジャズアルバムを紹介しているのだが、僕はジャズ超初心者なので、どの紹介文を読んでも「一体どんな音だろう?」と全然イメージできないのにワクワクしてしまう。まともに読んでいたら、50枚のジャズアルバムを買うことになってしまう。だから読むときは慎重に読まなければいけない。

 

 

それにしても僕はオーネット・コールマンセロニアス・モンクジョン・コルトレーンが一体どんな楽器をプレイしているのかさえ知らないのだ。チック・コリアキース・ジャレットなら分かる、という程度だ。

 

 

そんな僕がこの本に踊らされて購入し、一昨日(たまたま)妻が家に居るときに届き、バレて嫌味を言われたのがビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」(1961)である。因みに妻は毎日さり気なく僕のレコード棚をチェックしている。その様子を僕はさり気なくチェックしている。

 

 

中山曰く、一度日本でどんなジャズアルバムが人気があるのか調べたところ、マイルス等のジャズ界の巨匠のアルバムは意見が分かれるが、ビル・エヴァンスはほぼ「ワルツ・フォー・デビー」で一致したようなのだ。それで「これは買いでしょ」ということらしい。他のブログとか見てもこの作品は高く評価されていた。

 

 

1曲目の「マイ・フーリッシュ・ハート」の1音目から美しい。ピアノが喋っている。そのままうっとりしているとタイトル曲が始まる。ああ、これは日本人が好みそうだな、とすぐに思った。僕も日本人なのですぐに気持ちを持っていかれた。これも1音目から素晴らしい。このピアノもお喋りに聴こえる。

 

 

 

この感覚は昔味わったことがある。初めて触れた時の感動とでも言えばいいのか。そして次々と味わいたくなると言えばいいのか。そんな感覚を覚えたのは絵画を見た時だ。

 

 

初めて本格的に絵画を見たのはフェルメールだった。よく分からないが、カッコいいと思った。そのままフェルメールを追い求めているうちに、ゴッホやモネ、セザンヌ印象派の画家が描く絵に魅了されたんだった。今までよく分からかったジャンルに初めて触れた時の感動、そしてどんどんその世界に夢中になっていく感覚。今僕がジャズに感じているのは絵画に触れた時と似ている。

 

 

絵画の話に戻すと、ご多分に漏れず僕もルノアールの絵にも夢中になった。彼が書く少女や市井の人々の絵は見る人に安心感を与える。人間の暗部を抉り出すというよりも人間の素敵なところを抽出して描いているような気がする。そういうところが日本人にウケたのだろう。

 

 

「ワルツ・フォー・デビー」もルノアールの絵に似ているかもしれない。今のところ(B面の1曲目を聴いている)人間の暗部を抉り出すようなことをしていないし、ハートフルな演奏だ。しかしベースソロなんかを聴くと適度な緊張感ある。ある意味で「ジャズ聴いてる~」っていう気持ちになる。「リリカル」という言葉がよく使われるのが分かる。でも薬物中毒者だったんだよな~。

 

 

そんなビル・エヴァンスだが、後年(彼にとっては)過激な作品も聴かせてくれるようである(「モントルー・ジャズ・フェスティバルでのビル・エヴァンス」という作品)。僕はいつかこの作品も聴くことになるだろう。しかし、今は「ワルツ・フォー・デビー」の音に浸りたいと思っている。

 

 

絵画と音楽が違うのは、音楽の方は自分の部屋で思う存分楽しむことができる所だ。

 

 

日本のいたるところの(と言ってもいいだろう)美術館でルノアールが展示されているのと同じように、日本中のジャズ喫茶には「ワルツ・フォー・デビー」が置いてあるに違いない。

 

 

 

ルノアールは78歳まで生き、リウマチと闘いながら最後まで絵を描き続けた。ビル・エヴァンスは51歳まで生き、死の直前まで進化し続けてきた(らしい)。

 

 

さて、もう一度「ワルツ・フォー・デビー」を聴いてみるか。