hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

夏眠日記その21

何だか今日はぼんやりしている時間が多かったので、大学時代にやったアルバイトを思い出してみよう。(←全然脈絡がない)

 

塾の講師、家庭教師、会場設営のお手伝い、空港のうどん屋、ディスコのウエイター、サパークラブの皿洗い、うどん屋リポビタンDのCMのエキストラ・・・。今思い浮かべるとこんなものかなあ。

 

みなさんの興味はきっとサパークラブの皿洗いではないでしょうか。「サパークラブ」って何だ?僕も最初求人情報を見た時にそう思った。そして何だかいかがわしい匂いも感じたから興味もあったのは事実だ。場所は歓楽街から少し外れたところ。ますますいかがわしい。

 

多分、3回生の時だと思う。思い切って店に行ってみた。そうしたらスーツを着たおじさん達(今思い出しても「おじさん」と言うのに相応しい)が5人くらいいた。こ~れはマズいかな、堅気ではないよな、と思いながらも、思い切って「皿洗いの求人を見て来たんですけど」と誰に言えばいいのか分からないまま言った。

 

すると、一番若そうな人が「自分が?皿洗い?自分ジルバ踊れる?」と聞かれた。ジルバ。聞いたことあるけど、何だ?踊り?俺は皿洗いのバイトに来たんだけどなと思いながらも素直に「踊れません」と答えた。若そうな人はグレーのダブルのスーツを着ていた。そして僕の方に近づき、「スロー、スロー、クイック、クイックだよ」と体を揺らしながら言った。さっぱり分からない。困っていると、一番風格のある人が来た。

 

「お兄さん、ここ、どういうところか知ってて来たの?」と尋ねるので「サパークラブって書いてありました。皿洗いなので食堂か何かと思ってました」と答えると、周りの人たちが笑った。「確かに。食堂かもしれないな」と言った人は、随分小柄で痩せていて貧相な顔つきをしていた。でもいい服(だと僕は思った)を着ている。その人は「食堂は食堂でもお姉さんたちがお酒を飲んだり、おいしいものを食べたりする食堂」と教えてくれた。

 

ここにいたってやっと僕はここはホストクラブというところなんだ、と理解した。当時ホストクラブと言えば、おばさん達が来て飲み食いするところだという認識だった(と思う)。そうか。だからジルバなのか。

 

ここまでで2,3分くらい経ったろうか。風格のある人が僕のところに来て「ほい」と手を僕の方に挙げた。「手、持って」と言われ、素直に手を持った僕に「スロー、スローはこう」と体を横に動かした。僕は真似をして横に動いた。「クイック、クイックはこう」と言って前後に動いた。僕も真似をして動いた。「そう、それができるようにしておいて」と言われた。そして「明日から来れる?」と聞かれたのでこれも訳が分からなかったが「はい」と返事をしてしまった。

 

次の日から僕はサパークラブ(もう少しで店名を思い出せるんだけど、今は思い出せない)に通う日々が始まった。皿洗いとして。夜の7時から午前3時くらいまでだったかな。つまり、昼夜逆転生活が始まったわけだ。

 

皿洗いのみをしていたのは1週間くらいだろうか。やがて、カラオケのセットをするようにもなった。そうこうするうちに「お兄ちゃん、1曲歌って。ジルバ踊れるやつ」と指示されるようになった。とか言いながら歌わされるのは決まってチェッカーズの「ギザギザハートの子守歌」だった。まあ、みんな楽しそうに歌っているからいいか、と思いながらも「俺は皿洗いなんだけど・・・」という気持ちは抜けなかった。

 

そんなある日、また僕を呼ぶ声がする。「ギザギザハートね。はいはい」と言いながらカラオケの方へ向かうと、「お兄ちゃん、こっちこっち」とソファーをポンポンと叩いている。隣に座れっていうことか。素直に座ると、お客さんに僕を紹介した。「皿洗いのhanamiちゃん(下の名前で呼ばれた)。〇大生。賢いよー」と言った。お客さんは初め「あらーそうー」などと言っていたが、初心な僕が話を転がせるわけもない。多分呼んだ人(一番若い人。NO2だったと思う)も困ったんだろう。「hanamiちゃん、歌ってよ」と言い、お客さんに踊ろうと声をかけた。

 

僕は苦行から解放された気持ちになり、一生懸命「ギザギザハートの子守歌」を歌った。

 

店が閉店すると、NO2が声をかけてきた。「hanamiちゃん、もっと、喋らないと」と言いながら「今度、これあげる」と言って自分のスーツを指さした。初めて会った時に着ていたスーツだった(大学生が着るようなものではないと思われた)。「hanamiちゃんなら似合うよ。ここで働くんならこれくらいのもん着なきゃいけないよ」と説教じみたことを言われた。しかし、僕は皿洗いなんだ。僕にどうしろと言うんだろう、とまだ思っていた。

 

 

今日はこれくらいにして明日も書いてみるか。それにしてもなぜこんなことを書いているのだろう。この暑い夏に。

 

 

店名を思い出した。「サファイア」だ。いかがわしいでしょ?一応断っておくけどノンフィクションだよ。

 

 

ここまで熱心に書いていたら病院から電話がかかっていた。留守番電話を聞くと、今日が診察日だという。明日だとばかり思い込んでいた僕は焦って病院に行った。勘違いしていた自分にかなりショックを受けた。