20年ほど前、委員会活動がそれなりに盛んだった頃、放送委員会では異動してきた先生へのインタビューがよく行われていた。僕がある小学校に異動した時にもあった。その時、インタビューの最後に「hanami先生に関する3択クイズを出してください」という項目があった。その頃の僕はそんなにグイグイアピールするタイプではなかったが、ここはひとつ頑張らねば、と思い頭を絞った。こんなのだ。「次の中で正しいのはどれでしょう？」「①先生は新聞に載ったことがある ②先生はテレビに出たことがある ③先生は本に載ったことがある」「答えは全問〇です」。今思えば嫌味ったらしいというか自慢っぽく聞こえる。
③については以前記事に書いた。
今日は①について書いてみよう。
「新聞に載ったことがある」の「新聞」は地方紙だ。その頃から学校に不審者が侵入したらどのように児童を避難させるかの研修が始まった（大阪府で起きた痛ましい事件の後から）。それで、不審者と対峙するのを誰にするかで教職員であーだこーだ話し合っているうちに僕に白羽の矢が立った。「hanamiさん、やって」というお局の鶴の一声であっけなく決まった。研修は月曜日だった。新聞社も取材にやって来るという。金曜日にそれを聞いた僕だったが土日に遊んでいたらそのことをすっかり忘れていた。
再び時を戻すが、金曜日に僕が指名された後、実際に警察官にどういう風に児童を避難させるかを指導された。指導の内容は、不審者が教室に侵入した際には児童を教室の後ろ（または前）に誘導し、且つ机やいすを移動させ不審者と僕の間に置き、距離を取りながら救援を待つ、というものだった。今思えば随分乱暴な指導だ。そんなひまはないって。それでも一応先生達と一緒に練習をして研修を終えた。
それで、土日に散々遊んでいた僕は、月曜日に不審者対応の避難訓練があることをすっかり忘れていた。勿論新聞社が取材に来ることも。その日に僕が選んだ服装は山吹色と紫色の横じまのラガーシャツと黒のスリムのジーンズだった。そして僕は学校ではサンダルを履いていた。職員室に入って予定黒板を見た僕は「あちゃー」と思った。いくらなんでもこれはまずい。しかしスーツを更衣室に用意しておくなんて習慣はない。仕方がないので（みんなの目が気になったが）そのままの服装で避難訓練に臨んだ。
訓練自体は恙なく終わり、（児童と僕に対しての）簡単な取材も終わった。それっきりその日は別にくよくよすることなく一日を終えた。しかし次の日学校に行くと先生達が輪を作っていた。何々と思ってその輪に入ると真ん中には新聞があった。みんな僕が来たのを知り、にやにやしている。そして「hanami先生、かっこよく写ってるよ」と言われた。記事を見た僕はさすがに絶句した。僕の全身が写っている。不審者は右側の端っこに写っていて、僕は写真の真ん中に雄々しく写っている。派手っちいラガーシャツも色鮮やかだ。足元のサンダルもばっちり写っていた。児童は左の端っこにちょこっと写っているだけだった。これにはさすがに赤面した。この日以来、出張があって知り合いに会うたびに「hanami先生、新聞見たよ」とにやにや笑いながら言われることが続いた。今だったらあの服装はあり得ないな。もしあの格好で新聞に載ったら即刻教委から厳重注意だ。思えばのどかな時代だった。お局先生からはさすがにチクリと痛いことを言われたなあ。
今はちゃんとしている、と言いたいところだが、肝心なところでは必ずと言っていい程はずしているのは相変わらずだ。よく管理職は僕を注意しないものだ。
