hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

夏眠日記その22

昼夜逆転生活というのはまさしく字の通りである。朝に寝て、夕方に近い昼に起きる。朝になると陽が明るくなり、鳥のさえずりが聞こえ始め、人々が少しずつ活動を始め、そして子ども達は学校へ急ぐ。そういう音を聞きながら眠りに就くのだ。そして昼過ぎにあまり寝た気がしないまま起きる。そして束の間の自分の時間を過ごす。勿論大学へは行かない。

 

サパークラブサファイア」で働いていた期間、僕はずっとこんな生活をしていた。1年は持たなかった。というか、こんな生活は人間にとってはとても不自然だということを痛感したのだ。人間は夜に寝て、朝起きて仕事に行くなり学校へ行くなりする、そういうリズムで動くようにできている動物なんだということを思い知らされた。まあ、(髪をオレンジ色に染めたのと同様)こういうことを体験出来て良かったと思う。

 

僕はつぶれてしまうまでの間は、真面目にバイトをしていた。相変わらず皿を洗い、カラオケをセットし、「ギザギザハートの子守歌」を歌い、ぎこちなく接待もしていた。ある時、ほぼ毎日来るおばさん(コモリさん、という名だった。つまりコモリさんは大金をこの店に落としてくれていたわけだ)の誕生パーティーがあるからお前も来い、と言われて当時できたばかりのホテル東急の大きなパーティー会場まで行ったことがあった。

 

普段着(一応ジャケットは着ていった)で現れた僕を見てNO1ホスト(つまり店長)は「あちゃー」という顔をしていたが、コモリさんは「あらーhanamiちゃんも来てくれたの?嬉しい」と言ってくれた。その後僕がしたことは、コース料理を黙々と食べ、「ギザギザハートの子守歌」を歌うことだった。ああ、記念写真も撮ったな、確か。こんな昼間に何させられてんだろ?俺は。という思いも少しあった。

 

あと昼間といえば、珍しく用事があって原チャリで駅近くの裏道を通っていた時に店長を見かけてしまったことも印象に残っている。だってラブホテルから出てきたんだよ。お客さんと。その時ほど「店長って大変なんだなあ」と思ったことはない。男女問わず夜の仕事をしていくためには昼の営業活動が充実していないとダメだということか。

 

そんな僕に何か色っぽいことはなかったのだろうか。正直者の僕はここで考え込んでしまう。何処まで書けばいいんだ、と。いやいや旅行記なんかは起きたこと全部書いてるんだから別にいいじゃん、という声も聞こえる。まあいいか、そんな大したことじゃないよな。

 

「hanamiちゃんに誰かつけてやろう」とNO2のホストが思ったのだろう。どことなく翳のあるというか暗い感じの女性(サトコさんと名付けよう)の横に座らされたことがある。最初はNO2と2人で接待していたが、やがて彼はその場を離れて別の客のところに行った。サトコさんと2人になって焦った僕は何とかしようと必死で話題を絞り出した。でも結局は自分のことを話すしか方法はなかった。大学に行っていること、でも授業をサボっていること、友だちとのやり取り、バンドに参加していることなどをとにかく喋った。サトコさんはクスクスと笑いながら僕の話を聞いてくれて、何故か「今度おいしいもの食べに行こう」と言ってくれた。

 

後でNO2に「どうだった?」と聞かれたのでそのまま話すと、「やったじゃん」と言われた。そして遂に誘われる時が来た。サトコさんは「少し外で飲んできてもいい?この子と」とマスターに言った。マスターは快諾し、僕に「今日は戻らなくてもいいから。頑張れよ」と言われた。何をどう頑張れなのだろうか。マスターみたいに頑張るのか、とか思いながらサトコさんに連れられて入った店はこぢんまりとした小料理屋さんだった。僕は飲むしかないと思い、飲んで、そして酔っぱらってサトコさんに思い切り甘えた(やけくそになっていたんだな、きっと)。

 

「お勘定」と言うサトコさんの声を聞いて僕の酔いはかなり醒めた。サトコさんがお勘定を済ませ、僕は「ごちそうさまでした」と言った。どうなるんだ。どうすればいい。頭がグルグル回った。でもサトコさんは手を振って「じゃあね、仕事頑張ってね」と言って帰った。僕は安心?後悔?何とも言えない気持ちになりながら、店に戻ることもできず、家に帰るしかなかった。

 

サトコさんと外で会ったのはこれを含めて2回だけだった。あとは店に来た時に接客するだけだった。サトコさんとは連絡先を交換していた。

 

そんなある日、僕の家に大阪の友だち(昔の話を読んでくれている人なら分かると思うが、高校時代仲良しだった「秀才」君だ)から電話があった。「イギー・ポップが大阪に来るんだけど、一緒に行かないか」と誘われたのだ。彼とはデヴィッド・ボウイのコンサートに一緒に行った。なんやかやでまだ繋がりがあったのだ。しかしその時の僕にはお金が無かった。どうしたと思います?

 

サトコさんにお金の無心をする。これしかないでしょ!と思ったあなた、正解です。僕もそう思った。何のためにホストの真似事をやってるんだ、こんないい機会ないじゃないか、と。ざっと有り金と必要な金の計算をしていくら借りるかまで計算した。そして勇気を出して電話した。すごいでしょ?ヒモみたいでしょ?「今度また飲みに連れて行ってくれませんか?」サトコさんは快諾してくれた。

 

僕とサトコさんは前に連れて行ってもらった小料理屋にいた。結論を言うと、僕はお金を貸してほしいとは言えなかった。そして食べて飲んで喋って、家に帰った。今ならサラっと言えそうな気もするが、やはり当時の僕は初心だったのだろう。余計なことをいろいろ考えたんだろうな。

 

書いてみるとそう大した話ではないな。じゃあ「お持ち帰り事件」のことでも書くか。これなら読者の期待通りのことが書けそうだ。

 

いや、これでもう2000字も書いている。ホントのホントに困った時に書くことにしよう。ホストの話はこれで終わり、にしよう。今日は書いている間中、甘酸っぱくて仕方なかったな。

 

 そういえば、最初の日に店長に言われた「ジルバ、踊れるようにしておけよ」は色々な人に教わったが、上手には踊れないままだった。