30年以上の付き合い

僕が「尾道ラーメン」(←店名である)を知ったのは、大学4回生の時であった。卒業していく先輩同士で喋っている会話の中に出てきたので聞いてみると「行ったことがないならぜひ一度行った方がいいよ」と言われたのが最初である。「大将(←確かこういう言い方をした)はちょっと怖いから気をつけてね」とも言われた。

 

3月なのにまだ寒いある日の昼に思い切って行ってみた。なかなかドアが開かない。すると「そっちじゃない!」と怒鳴られた。開けるドアを間違えていたのだ。これでビビった僕はメニューもろくに見ずにもやしラーメンを注文した。返事もせずに黙ってラーメンを作る大将(店はカウンター席のみ)。どきどきしながら待っていると大将がラーメンを持ってきた。受け取ろうとすると「熱いから触るな!」とまた怒鳴られた。

 

黙ってスープを飲んだ。もちろんレンゲなんてものはついていない。スープを飲んだ瞬間衝撃が走った。「こ、こ、こ、れは・・・美味い!」。麵をすするとこれも美味い。がつがつ食べ始めて最後の方までとっておいた(分厚くて見るからに美味しそうだった)チャーシューを口に入れた。「何だこれは!」とまた衝撃を受けた。

 

こんなの食べたことないぞ。でもこういうのが食べたかったんだ、という味だった。濃い醬油味で少し硬めの麺、分厚くてとろっとろのチャーシュー、これにやられた僕は、頑張って通うことにした。そしてチャーシュー麺を貪るように食べ続けていた。

 

そんな僕も大学を卒業し、地元に戻ることになった。当然尾道ラーメンからも足が遠のいた。しかし、毎週教員の初任者研修があったので、帰りに寄ることはあった。大将は相変わらず何も喋ってくれない。そんなある夜に店に行くと、僕一人だった。すると途中からインド人らしき人が2人入ってきて、何やら大将に言っている。どうもテイクアウトできないかと言っているようだった。大将は「何も分からん」と言ってそのまま2人を放置していたら2人はその場でラーメンを注文して食べ始めた。

 

この時だ。大将が僕に初めて目を合わせて笑いかけてくれたのだ。「何言っているのかさっぱり分からんわ」と話しかけてくるではないか!僕は「インド人だと思います。インド人の英語ってわかりづらいです」と敬語で答えた。これをきっかけに僕と大将は少しずつ話をするようになった。

 

しかし、ある日の夜、久しぶりに店に行くと張り紙がしてある。「ここに引っ越しました。よろしく」みたいなことを書いてあるではないか。これはもう行くしかないと決心し、地図をひたすら見て暗記し(グーグル・マップとかないからね、もちろん)、無事見つけた時は声を上げたよ。

 

そしておそるおそる店に入ると大将が店で新聞を読んでいた。「びっくりしましたよ」と言うと、「よく分かったな」と言い、黙ってチャーシューメンを作り始めた。帰り際、「来てくれてありがとう」と言われ、チャーシューを2本くれた。「えっ!」と思った僕は「ありがとうございます」としか言えなかった。このチャーシュープレゼントはその後も時々行われ、その時は周りの客に自慢!だった。

 

それ以来、僕が行くと「先生」と言っていろいろなことを話しかけてくれるようになった。食べてお金を払ってもまだ話してくれる。ほんとに嬉しいことだ。僕もシャイだけど大将もシャイだ。10年以上経ってやっと普通に話すことができるようになった(僕にはこういうことが多い)。

 

初めて店に行ってから30年以上経っている。しかし僕は昨年の夏に行ったっきり今年は一度も行っていない。こんなことは初めてだ。きっと感染対策はそんなにしてないだろうなー。

でも今年中には行きたいな。

 

まだまだ書き足りないが、ここで一旦終わろう。じゃないと今週末行ってしまう。