ニューエスト・モデル(1985年結成)のこの曲を初めて聴いたのは、小学校の講師をしていた頃だった。これは彼らのサードアルバム「SOUL SURVIVOR」(1989)(ジャケ買いだった)の2曲目に収録されている。ロック・ミュージックでは確実に使われないであろう「こたつ」と思い切り政治的な「紛争」がくっついたタイトルを見て「変なタイトルだな」と思った僕は、一聴してびっくりした。「今の俺じゃん!」と。もう歌詞を引用しちゃうね
♪君にしがらみ こびりついてる 上下左右 振り回されて
♪居場所を誰が決めるのか
♪君のくすぶり発火しないよ 遠い国へ夢はデカイよ
♪始まることがない不思議 (なにもしないね)
♪OH! こたつ内紛争 出られないまま 時が過ぎてゆくよ
♪あきらめゆく箱の中で
♪今が春でも すぐに夏だよ 今が秋でも すぐに冬だよ
♪おもちゃは ちらかり放題さ
♪OH! こたつ内紛争 出られないまま 時が過ぎてゆくよ
♪あきらめゆく箱の中で
♪君はいつも教え説いてる 太っ腹なありがたい人 まちがい 認めない不思議
♪君のくすぶり発火しないよ 遠い国へ夢はデカイよ
♪始まることがない不思議 (なにもしないね)
♪OH! こたつ内紛争 出られないまま 時が過ぎてゆくよ (わかってるって)
♪わかってないよ‼ 箱の中で
仕事も恋も自分の思い通りにならないかすかなイライラ。そしてその大半は自分が原因であること。だからといって何かするわけでも始めるわけでもない。その当時の僕の気持ちがそのまんま軽やかなサウンドにのって歌われる(そう、曲も秀逸なんだよね)。
中川敬はそれを「こたつ内紛争」と名付けた。すごい。冴えてるよ。まさしく「こたつ内紛争」(♪君のくすぶり発火しないよ 遠い国へ夢はデカイよ 始まることがない不思議 なにもしないね)だった僕は、だからといって「こたつ」から出ることなくこの曲を聴き続けてきた。
だから最後の「♪OH! こたつ内紛争 出られないまま 時が過ぎてゆくよ (わかってるって)♪わかってないよ‼ 箱の中で」の部分は、後ろめたさでドキドキしながら聴いていた。
あれから22年経った今、思い返してみると、何かをしようとする時にはこの曲が頭の中で鳴っていた(そう、一応何がしかのことはやったぞ、という気持ちは持てているよ。おかげさまで)。今も鳴り続けている。
余談だが、このアルバムは「こたつ内紛争の」もそうだが、ピアノの旋律に印象的なものが多い。それを中川は全て自分で考え、キーボードの奥野真哉に伝えその通りに弾かせていたらしい。アコーディオンはKYONだ。彼の演奏も勿論素晴らしい。
その後彼らは「クロスブリード・パーク」「ユニバーサル・インベーダー」という名盤を発表し、ついにはメスカリン・ドライブと合体して「ソウルフラワー・ユニオン」となる。
「こたつ内紛争」は、ソウルフラワー・ユニオンになってからも演奏され続けている。今も中川にとって、そしてこの国の人達にとって有効な曲だと判断しているからなのだろう。
「こたつ内紛争」と「クロスブリード・パーク」収録の「杓子定規」を続けてくると結構グッとくるよ。サビだけ紹介しておこう。
♪今日も一日杓子定規で 単純な大声を張り上げていた
♪今日も一日杓子定規で 簡単な反抗を繰り返した