お別れのアルバム「★」

今月のロッキング・オンのメイン記事は「5YEARS」と題したデビッド・ボウイの特集だった。ボウイが亡くなって5年経ったことと、彼の名曲「Five Years」をかけたものだろう。

 

しかし何だな。ロッキング・オンは相変わらずビートルズレッド・ツェッペリン、ジョンやポール、ボブ・ディランデビッド・ボウイなどで商売しているな。

 

彼の28作目(スタジオ盤)にしてラストアルバムの「★ブラックスター」は誰からもどのメディアからも高い評価を受けている作品である。僕も大好きだが特別な思い入れもあって、ボウイを聴くときはこのアルバムを聴くことが多い。

 

このアルバムは彼の69回目の誕生日である2016年1月8日に発売された。そして彼はその2日後に亡くなった。前作「THE NEXT DAY」(2013)の出来が良かったので(「THE NEXT DAY」は何と10年振りに発表されたアルバムだった)、「ブラックスター」も購入したが、前作と作風が違っていて何となく聴きそびれていた。

 

しかし、このアルバムがリリースされてすぐに父親が入院した。多臓器不全と言われた。救急車から病院に搬送されたことは叔母から聞いた。最初は「(病院に行くのは)そんなに慌てなくてもいいから」と言われたがここは行くべきだろうと思い、病院に向かう途中に再び連絡があり、「『延命治療をしますか』と聞かれたけどどうする?」と言われた。僕と姉は(そんなに悪いのか?と)ビビりながら「お願いします」と言った。それからは毎日病院の集中治療室に通う日々が続いた。その時聴いていたのがこのアルバムだ。病院に向かう時、待合室で面会時間を待つ時、家に帰る時や帰ってからもこのアルバムを聴き続けていた。特に1曲目のタイトル曲はいつも、実際に聴いていない時も僕の頭の中で鳴り続けていた。

 

病院に通う生活が続いて約3週間後、父は亡くなった。

 

それからはピタッと聴かなくなった。もう父の死とこのアルバムが強力に結びついていたからだ。

 

しかしボウイの死後、たくさんの未発表音源が着実なペースで発表された。そこから再びボウイを聴くようになった。ブログにも書いたことがあるので最近までこの未発表音源を発表することは続いていたことになる。これからも続くだろう。

 

そうこうするうちに僕はまた「ブラックスター」を聴くようになった。

 

前から何度か書いているが、「死を覚悟(あるいは目前に)した人は素晴らしい仕事をする」。ボウイもこれに当てはまるな、と思った。前作と作風は違っていると書いたが、ボウイはいつだってそうだったじゃないか。今回は、そして最後はこのサウンドに夢中だったし(特にドラム)、最後を飾るのに相応しいと思ったのだろう。

 

ロッキング・オンのアルバムレビューで大鷹俊一は、「のちにがんとの闘いは18か月にも及び、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティの話だと、レコーディングの頃には髪や眉の毛は落ち、参加ミュージシャンたちに報せないわけにはいかなかったそうだし、ボウイが別れのアルバムとして作っているのがわかったという」と書いている。

 

 

「多臓器不全」。恥ずかしながら僕は父が倒れてから初めてこの言葉を知った。そしてこの言葉の意味するところは「おそらくもう長くは生きられない」(よく分からないまま書いています)ということも。延命治療は、もしかしたら家族が死を受け入れるために必要な期間だったのかな、と今では思っている。

 

 

それにしても「お別れのアルバム」をこんな風に見事にやってのけたボウイは最後まで「旅する人」だったんだなあ。最後の曲は「アイ・キャント・ギヴ・エブリシング・アウェイ」「私は全てを与えることはできない」である。出来過ぎだよなあ。でもボウイらしい。